雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は、ノンフィクション作家 川内有緒さんの活動をご紹介します。

川内 有緒さん
ノンフィクション作家
(かわうち ありお)米国企業、日本のシンクタンク、フランスのユネスコ本部などに勤務。’10年以降は東京を拠点に執筆活動を行う。『目の見えない白鳥さんと〜』は「’22年 Yahoo!ニュース|本屋大賞 ノンフィクション本大賞」を受賞。

見えていなかったものが見えてくる。全盲の人との美術鑑賞を映像に

ノンフィクション作家の川内さんは、全盲の美術鑑賞者・白鳥建二さんと出会い、共に全国の美術館を巡って、『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』という本を書いた。そして同時に、映像にもしたいと、三好大輔さんと共同監督で映画『目の見えない白鳥さん、アートを見にいく』を制作。現在、全国で上映が始まっている。

「白鳥さんは全盲なので、美術館では、一緒に鑑賞する人が、隣で絵の説明をします。大きさとか、どんな色で、何が描かれているとか、自分が見たものを言葉で伝えるわけですが、そうすることで思わぬ発見があるんですよね。本では、白鳥さんとの美術鑑賞体験をきっかけに障がいのこと、アートのこと、社会のことなど、さまざまなことを考えました。映画では、白鳥さんの表情や、日常の様子も伝えています。たくさんの人に観てもらえたらうれしいですね」

映画の中で「目の見えない白鳥さん」は、なんでも自分でやるし、知らない町でも白杖を駆使して、ひとりでどんどん歩いていく。軽やかで、自由で、とらわれがない。

「白鳥さんは『目が見えなくても別に困っていない』というスタンスなんです。障がい者とか健常者とか、助ける側助けられる側とかではなく、人とフラットな関係を自然に築いている。話していると、気付かされることがすごく多い」

この作品は、スマートフォンなどの端末でバリアフリー音声ガイドや字幕表示ができるアプリ「UDCast」に対応している。2月には日本で唯一のユニバーサルシアター(※)である「シネマ・チュプキ・タバタ」で上映を行った。見える人も見えない人も映画を共に楽しめる未来へ。まずは「知ろうとする」ことが第一歩になる。

【SDGsの現場から】

●全盲の白鳥さんとアートを巡ったドキュメンタリー

インタビュー_1,サステナブル_1
映画内で、川内さんたちは水戸、東京、新潟、福島と旅し、アートを鑑賞。映画の詳細はこちら

●全国で唯一のユニバーサルシアターでも上映

サステナブル_2,インタビュー_2
撮影を行った東京都北区の「シネマ・チュプキ・タバタ」は日本初のユニバーサルシアター。

※ユニバーサルシアターとは…バリアフリーはもとより、視覚、聴覚などの障がいにも、赤ちゃん連れの母親にも、すべての人に対応する「ユニバーサル」な映画館。

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PHOTO :
望月みちか
EDIT :
正木 爽(HATSU)、喜多容子(Precious)
取材・文 :
剣持亜弥(HATSU)