老舗和菓子店「とらや」の東京ミッドタウン店。和菓子だけではなく、和のさまざまな魅力や価値を広く伝えるため、ギャラリーを併設しているお店です。

とらや 東京ミッドタウン店では、想いを同じにする方とパートナーを組み、ふろしきや漆、磁器などをテーマに、これまでさまざまな企画展が開催されてきました。

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とらや 東京ミッドタウン店

現在、2023年6月28日(水)までの期間限定で、食品サンプルなどの製作・販売を行う株式会社EBISUの取材・展示協力のもと、第47回企画展、見て味わう「和菓子の食品サンプル」が行われています。

レストランや喫茶店のショーケースなどで目にする食品サンプル。料理の形状から色合い、トッピングや付け合わせまで本物そっくりに作られており、日本発のユニークな文化としても、国内外から注目されています。

本記事では、Precious.jpライターが企画展を実際に訪れ、その体験レポートをお届けします。

第47回企画展 見て味わう「和菓子の食品サンプル」体験レポート

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回転させてじっくり楽しむことができる「とらやの食品サンプルができるまで」

ギャラリーに足を踏み入れて、まず目にするのが大きな展示です。

とらやのショーケースでも、羊羹や焼き菓子、最中など、包装されているお菓子は食品サンプルを用いて形や断面などをわかりやすく伝えています。

こちらの展示では「とらやの食品サンプルができるまで」と題し、4つの食品サンプルの制作工程を展示。実際にとらやがサンプル制作現場を取材し、工程や視覚を通して「おいしさ」を感じさせる工夫を探っています。

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とらやの人気商品「あんやき」の作り方

例えばこちらは、とらやの季節限定商品のひとつ「あんやき」サンプルの作り方の工程の展示物です。

ギャラリーでは、回転台を回しながら食品サンプルをじっくり鑑賞できるため、よりその技術の精密さや奥深さを堪能することができます。

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できあがった「あんやき」の食品サンプル

こちらができあがった「あんやき」の食品サンプルです。色合いや質感、やわらかく“見える”ところまで、とても精巧に作られていることが実感できます。

「あんやき」の食品サンプルを作る工程では、あんやきそのものからシリコンで型を取っているため、細かな質感などが再現できているそうです。

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水羊羹のサンプル

つるりと光沢のある水羊羹のサンプル。あんやきは表面がざらっとしていたのに対し、水羊羹の表面はつるつると艶やかに仕上げられています。

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水羊羹の中に埋め込まれた小豆がうっすらと透け涼やかさを表現

実はこの水羊羹、ただの黒い塊ではないんです。

実際のとらやの水羊羹(小倉)を表現するにあたり、水羊羹の中には小豆のサンプルが埋め込まれ、うっすらと表面に小豆の粒が見えるような工夫がされています。また、表面にウレタン塗装がほどこされ、ツヤのある見た目になっています。これにより、水羊羹らしい涼やかさが表現されています。

小豆の色は水羊羹の中に入れると色が濃く見えてしまうため、あえて少し薄めの着色がされているのだそう。それぞれのサンプルへのこだわりが素晴らしいですね。

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赤飯の食品サンプル

細かな食品サンプルといえば、こちらにも注目。

こちらはとらやで期間限定・予約販売のみの「赤飯」の食品サンプルです。それぞれ彩色されたお米の粒と小豆の粒を組み合わせることで、ひとつの食品サンプルとして仕上げられています。

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米粒と小豆粒の食品サンプル

小豆はひと粒ひと粒彩色されるのだとか。とらやの赤飯は、小豆を煮る際に出る渋を使って炊くため、落ち着いた独特の赤い色合いが特徴ですが、そのような色彩も本物そっくりに表現されており、工程はもちろんのこと、その細かさにも注目です。

動画での展示でわかりやすい食品サンプルの制作工程

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冬季限定で販売される「髙根羹」のサンプル

とらやの冬季限定商品「髙根羹」。神々しい富士山をかたどった羊羹の食品サンプルは、複数の金型を組み合わせて作られています。

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左:「髙根羹」の食品サンプル製造の様子、右:食品サンプルの着色風景 撮影/大畑 陽子

こちらは実際の制作の様子が、動画で展示されています。固められる前の液体の色の違いの面白さや、ひとつの食品サンプルができるまでの工程、そして「髙根羹」を作る上でのこだわりまで感じられます。

ぜひ実際に見て、その細かさや、技術の素晴らしさをご実感ください。

パネル展示では食品サンプルの歴史などをわかりやすく

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ギャラリーのパネル展示

ギャラリーのパネル展示では、食品サンプルの歴史や、食品サンプルが使われている利点、なぜ日本でここまでサンプル文化が発展したのか? など、詳しく知ることができます。

といっても難しい内容ではなく、誰にでもわかりやすく、「ああ~なるほど」と思わず口にしてしまうような興味深い内容でした。

とらやの食品サンプルを制作している株式会社EBISUの担当者インタビューや、コラムニストの野瀬泰申氏が執筆された「食品サンプルの誕生」(ちくま文庫)の書籍の展示などにも注目です。展示を通し、より食品サンプルを身近に感じることができますよ。

リアルな食品サンプルの展示も多数!

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羊羹の食品サンプル

ギャラリーではとらやの店頭で使用されているものや、さまざまな食品サンプルの展示も行われています。

まずはやはり羊羹に注目。それぞれのつるんとした食感が伝わってきますよね。

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季節の羊羹、湿粉製棹物の食品サンプル

季節ごとに変わる季節の羊羹や、湿粉製棹物の食品サンプルも。

それぞれ左上から「指出の磯」「新茶の雫」、下段「雲井の桜」「藤の棚」「雪紅梅」です。「雪紅梅」以外は、春から初夏にかけて販売される季節限定商品。ぜひこれからの季節に、食品サンプルと本物の商品を比べて、その美しさを堪能してみてはいかがでしょうか。

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かき氷(宇治金時)の食品サンプル

羊羹以外でも、とらやで販売されるかき氷の食品サンプルや、あんみつの食品サンプルなど、実際に店舗で使用されているサンプルが並びます。

そのほか、果物や野菜など、どれも本物と見違えるほど精巧に作られたサンプルが展示されています。「とらやのギャラリーなのに、まさかこんなものが置いてあるなんて!?」というユニークなサンプルも置いてあります。どんなものが置いてあるのかは、実際にみなさんの目でお確かめくださいね。


今や日常の風景に溶け込んでいる食品サンプル。だけどその歴史や作られる工程は案外知らないもの。

ギャラリー入場は無料で、どなたでも自由に展示を見ることができます。眺めているだけで心躍り、詳しく知ればさらに面白い、奥深い食品サンプルの世界をぜひお楽しみください。

※「季節の羊羹」など季節限定商品の販売期間は、販売員にお尋ねください。
※外出時には新型コロナウィルスの感染対策を十分に講じ、最新情報は公式HPなどでご確認ください。

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この記事の執筆者
フリーランスの編集者・ライター。グルメやスイーツ、ライフスタイル系の記事執筆・編集を中心として活動中。元システムエンジニア、プログラマの経験を持つ。二児の母。趣味は料理、SNS、写真を撮ること、美味しいものを食べること。麺類と辛いもの、自分のために買うご褒美スイーツが特に好き。
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EDIT :
小林麻美