雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は、「LILI TIME」代表、ジャン・リーリーさんの活動をご紹介します。

ジャン・リーリーさん
「LILI TIME」代表
上海市出身。地元での幼稚園教諭の仕事を経て、夫、息子とドイツへ移住。帰国後、'14年にカフェをオープン。現在は市内に2店舗を展開。他店でバリスタとして自立できるよう若い障がい者への無料の職業訓練も行う。

接客も、焙煎も、店内での音楽会も。障がいをもつ人が活躍するカフェ

上海の人気モールにあるカフェ「リーリー・タイム」。オーナーのリーリーさんを除くスタッフは、全員が聾唖や自閉症といった障がいをもつ。そして、接客、焙煎、インテリアデザイン、フラワーアレンジメントなど、店の仕事のすべては、それぞれの個性を生かしつつ、スタッフ自身が行っている。

「特に、母親世代を積極的に採用しています。自ら障がいを抱えながら、育児や家族の介護もしている女性は多いのに、社会から見落とされているからです。週に数回、数時間でも働くことができれば」

障がい者の雇用に関心をもったきっかけは、1枚のメモだった。

「カフェを始めたのは’14年で、最初は一般的なカフェ。私も障がいをもつ人との接点はほとんどありませんでした。それがある日、お客様から『カフェの仕事に興味があり、勉強したい』と書かれた紙を渡されて。聾唖の方でした」

しかし、上海はカフェの軒数が世界一の街。競争も激しく、結局、このときのお店は閉店してしまう。けれどリーリーさんは諦めなかった。自ら手話(※)を学び、研修の方法や店のコンセプトを練り直して、’19年に新たなコンセプトで現在の店舗をオープン。今年中に3店舗目も開店する予定だ。スタッフによるアートや音楽のイベントも定期的に開催している。

「ふだんはバックヤードにいる自閉症の子が楽器を弾きます。もちろんギャランティありです。これは、彼らのお母さんたちのためでもあって。自分の子が、人から拍手を浴びている。ずっと孤独に子育てをしてきた母親たちは、そんな経験をしたことがないから」

カフェって、いろんな人を助けられる場なんですよ。リーリーさんはそう言って、優しく微笑んだ。

【SDGsの現場から】

●テーブルでドリップする独自のスタイル

サステナブル_1,インタビュー_1
雲南省産の豆を自家焙煎した自慢のコーヒーを、オリジナルの器にテーブルでドリップする。

●アースカラーを基調にした心地よい店

インタビュー_2,サステナブル_2
フラワーアレンジメントやインテリアデザインなども障がいのあるデザイナーが担当。

※手話とは…中国では地方によって手話が異なり、聾学校の教科書も統一されていない。読唇のみで会話する人もおり、意思疎通のハードルは高い。

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PHOTO :
阿部ちづる
WRITING :
剣持亜弥(HATSU)
EDIT :
正木 爽(HATSU)、喜多容子(Precious)
取材 :
萩原晶子