雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。
今回は、医師・オストメイトモデル、エマ・大辻・ピックルスさんの活動をご紹介します。
医師として、同時に患者のひとりとして、「オストメイト」の尊厳を守るために
内科医のエマさんは、長年消化管がうまく機能せず、16歳から25年もの間入退院を繰り返してきた。やっと難病であることがわかり、手術をしたのが41歳のとき。腸管をおなかの表面に出し、便や尿を排出するストーマ(人工肛門)をつくった。エマさんは、ストーマをもつオストメイト(※)となり、医師の立場からは見えなかったさまざまな思いを体験した。
「術後、これからの人生について、患者は不安でいっぱいです。夜間起きて便を捨てなければならず不眠症に陥る方も多いのですが、残念ながらドクターが関わるのは手術までがほとんど。その後の精神的・肉体的ケアはWOC看護師(排泄ケア認定看護師)に委ねられているのが現状です。もっとケア面にもドクターが介入し、心理面まで理解してくれたら患者は心強いのにと思いました」
エマさんは、その思いを学会で発表。患者と医師の両方の立場からの発言は、大きな反響を得た。ほかにも排泄物をためるパウチではグレーやブラックなど中身が透けない色味のものを日本でも流通させたいと、あえてパウチを見せる水着での撮影にも挑んだ。また、SNSではときに辛い気持ちを吐き出し、同じ状況下に苦しむ患者から共感を得ている。
「オストメイトがポジティブに生きるために活動していますが、私もときにネガティブな思いに襲われることもあります。今でもストーマの交換時に自分の便を見なくてはならないとき、とても辛くて苦しい。でもそんな辛さも発信すれば、自分だけじゃないと心が楽になる人がいるかもしれない。これからもオストメイトの尊厳が守られるためのあらゆる活動をしていきたい」
【SDGsの現場から】
●日本で8割シェアの透明パウチに新たな選択肢を
●オストメイトの生活や検診の重要性を発信
※オストメイトとは…排泄するための人工肛門をおなかに装着した人。男女共に日本で2番目に多いがん(大腸がん)によってオストメイトになる人が多い。
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- PHOTO :
- 望月みちか
- EDIT :
- 正木 爽(HATSU)、喜多容子(Precious)
- 取材・文 :
- 大庭典子