「ひな祭り」のお祝いで食べるちらし寿司は、見た目が華やかでおもてなし料理にもぴったりですよね。外で食べるのもいいですが、自宅で寿司飯と具材を混ぜ合わせ、薄焼き卵やれんこんの飾りを乗せるのは楽しいもの。

ただ、レシピ通りに作ったのにご飯の食感が悪かったり、市販の寿司酢ではお店のような味にならなかったり、なかなか納得のいく仕上がりにならないこともしばしば。イマイチな出来栄えだと、せっかくの食材ももったいないですよね。どうすれば、お店のような味になるのでしょうか?

ちらし寿司
ちらし寿司

そこで、『おいしすぎてほめられる!料理のきほんlesson』の著者で料理研究家の阪下千恵さんに、自宅で最高においしいちらし寿司を作る方法についてうかがいました。寿司飯、錦糸卵、具材の3つの観点から、合計10の条件をご紹介します。

■最高においしい「寿司飯」を作る5つの条件

寿司飯
寿司飯

ちらし寿司のおいしさは、ベースの寿司飯の出来が左右するといっても過言ではありません。そこで、まずは最高においしい寿司飯の条件から!

(1)寿司飯に適した米の品種は粘りの少ない「ななつぼし」など

白米やおにぎりでいただくには、こしひかり等のもっちりした食感がお好みという人も多いことでしょう。ただ、寿司飯にするには、ササニシキ等、粘りの少ないさっぱりした品種のほうが合います。

「ササニシキは今は市場にあまり出回っていないので、手に入りやすい品種としては、北海道のななつぼしなどがおすすめです」(阪下さん)

(2)ご飯を炊くときの水加減は「普段よりも少なめ」に

寿司飯にするご飯を炊く際は、水加減は少なめで。炊飯器の釜に寿司飯用の目盛りがあれば、それに合わせましょう。もしその目盛りがなければ、普段お米を炊くときよりも2~3mm水面が下になるようにします。

「炊き上がった米に寿司酢の水分を加えるので、普段通りの水量では、寿司飯がベタついた食感になるおそれがあります。少なめの水で固めに炊きましょう」(阪下さん)

(3)寿司酢に適した酢は「純米酢」

ちらし寿司のレシピでは、材料にただ“酢”とだけ書かれていることがほとんどですが、一口に酢といっても、大きく分ける以下の3種類があります。

[穀物酢]米・小麦・酒粕・コーンなどをブレンドしている。あっさりとしてくせがない
[米酢]米とアルコールを原材料とする。風味が高い
[純米酢]純粋に米のみで作る。よりまろやかでこくがある

このうち、安価で手に入りやすいのは穀物酢。さっぱりとしたドレッシングには穀物酢が適しているようです。ただ、ちらし寿司で酢本来のまろやかな風味を楽しみたい場合は、お値段は少々かかっても、純米酢がおすすめ。最高においしいちらし寿司を作るためには、酢の種類にこだわってみましょう。

(4)黄金比の寿司酢に「昆布」を加える

市販の寿司酢で手軽に済ますのもありですが、家庭で最高においしい寿司酢を作るにはどうすればいいのでしょうか?

「寿司酢の基本は、米2合に対して、酢を大さじ3、砂糖を大さじ2、塩小さじ1です。ただ、ちらし寿司では入れる具材によって、砂糖や塩の量を控えめに調整しましょう。

たとえば、干し椎茸や高野豆腐を甘辛く煮たものを加える場合は、砂糖を大匙1と2分の1に減らす。また、イクラや椎茸の甘煮など、ちらし寿司の具材には塩分が入っているものが多いので、塩は小さじ2分の1程度にするといいでしょう。

また、寿司酢のなかに昆布(5cm×5cmくらいの大きさのもの)を入れると、より風味がアップしますよ。昆布は給水中の米に混ぜて炊く直前に取り出しても良いです」(阪下さん)

(5)ご飯と寿司酢は「切るように」混ぜる

ここまで寿司飯の材料メインで解説してきましたが、こだわって選んだ食材をどう扱うかももちろん大切です。炊き上がったご飯は蒸らさずに、すぐに木桶などに移して寿司酢と合わせましょう。

ご飯は混ぜすぎると粘りが出てしまうので、混ぜるというより切るイメージで。うちわであおぎながら、ご飯の上下を返し、ご飯にツヤが出てきたら、もう一度上下を返す程度の混ぜ方でOKです。

「ご飯を蒸らさないのは、炊きたて直後のほうが寿司酢をよく吸収するからです。また、木桶を使うと、余分な水分を吸ってくれて、パラリとした食感の寿司飯に仕上がります。もしご家庭に木桶がなければ、炒め料理に使う深めのフライパンで代用しましょう。ボウルよりもご飯がくっつきにくいので、手早く混ぜ合わせるのに適しています」(阪下さん)

ここまでの条件を満たせば、最高においしい寿司飯ができそうですね。ちらし寿司だけでなく、自宅で手巻き寿司パーティーをするときにもぜひこの方法で!

■最高においしい「錦糸卵」を作る3つの条件

薄焼き卵
薄焼き卵

ちらし寿司といえば、錦糸卵の存在感も大きいですよね。その元となる、おいしくきれいな薄焼き卵はどうやって作ればいいのでしょうか?

(1)水溶き片栗粉を加えると破れにくい

「卵2個に対して、日本酒を小さじ1、砂糖を小さじ1、塩を少々加えましょう。また、片栗粉を小さじ4分の1加えると、卵が破れにくくなります。片栗粉をそのまま入れるとうまく混ざらないので、必ず小さじ2分の1の水に溶いたものを加えてください」(阪下さん)

(2)泡立て器はNG!卵液は箸で「切るように」混ぜる

錦糸卵の材料を混ぜ合わせる際、泡立て器を用いるのはNG。卵液が泡立つときれいに焼けなくなります。ボウルの底に箸の先を当てた状態で、泡立てずに切るように全体の色が均一になるまで混ぜ合わせましょう。

(3)油はごく少量をフライパンに塗るだけ

錦糸卵をきれいに焼くには、油の量がポイント。油の量が多すぎて、フライパンの表面に油が浮いている状態では、焼きムラができてしまいます。卵焼き用のフライパンに、ペーパータオルで油を薄く塗るようにしましょう。

■最高においしいちらし寿司「具材」2つの条件

具材
具材

ちらし寿司といえば、さまざまな具材を組み合わせる楽しみも。そこで、最高においしい具材の条件についても阪下さんにうかがいました。

(1)味の変化を楽しめるものを組み合わせる

「具材は対照的な味わいのものを組み合わせるといいでしょう。たとえば、干し椎茸や高野豆腐を甘辛く煮たものを入れる場合は、塩辛いイクラをトッピングする。また、椎茸や高野豆腐はやわらかいので、歯ごたえのあるれんこんを加えるなどです」(阪下さん)

(2)煮た具材はしっかり水分を飛ばす

せっかく寿司飯がパラリとした食感に仕上がっても、具材に水気が多く含まれると台なしになりかねません。煮た具材は、しっかり水分を飛ばしてから混ぜ合わせるようにしましょう。

ちらし寿司の作り方についてここまで押さえれば、自宅で最高においしいものが作れます。今年のひな祭りには、いつもよりグレードアップしたちらし寿司を堪能しましょう。

阪下千恵さん
料理研究家・栄養士
(さかした ちえ)外食大手企業、無農薬・有機野菜・無添加食品の宅配会社などを経て独立。現在は企業販促用のレシピ開発、食育関連講習会をはじめ、書籍、雑誌、テレビなどの多方面で活躍。大田区久が原の自宅にて、1回から参加できる少人数料理教室主催。著書は『おいしすぎてほめられる!料理のきほんlesson』(新星出版社)、『決定版 朝つめるだけ!作りおきのやせるお弁当389』(新星出版社)ほか多数。
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この記事の執筆者
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WRITING :
中田綾美