手のひらの上で愛でたい、それはもうアート【和菓子の小宇宙】
その歴史は、縄文時代までさかのぼるとされる和菓子。脈々と受け継がれた伝統や技術、日本の四季や風土を映す心を継承しながら、多様な素材やデザインを取り入れ、和菓子は今も、日々進化し続けています。
このうえない口福と美しい佇まいで、至福の時をもたらしてくれる麗しき和菓子たちを、その世界観と共にお楽しみください。
東京「秋色庵大坂家(しゅうしきあんおおさかや)」の『織部饅頭(おりべまんじゅう)』
織部特有の釉薬を垂れ具合まで忠実に再現
茶人・古田織部(ふるた おりべ)の指導で生まれた美濃焼のひとつ、織部焼(おりべやき)。歪(いびつ)な形や派手な文様、深い暗緑色などが特徴で、その姿を薯蕷(じょうよ)饅頭に映したのが『織部饅頭』。創業300年以上、18代当主が店を守る、「秋色庵大坂家」の看板菓子だ。
きっかけは、常連だった作家・山口瞳(やまぐち ひとみ)氏の母上から先代への「釉薬(ゆうやく)の垂れを美しく表現してほしい」という依頼。
刷毛(はけ)や焼印(やきいん)を用いずに緑に着色した饅頭の生地と職人の手技によって織部焼特有の躍動感ある釉薬の筆使いを再現した。真っ白な生地に映えるのは、緑の釉薬のみという潔さ。ひとつひとつ異なる釉薬の具合も風情あり。見るほどに強さと奥行きを感じるシンプルな意匠は、まさに “侘び” の世界。たっぷりなめらかなこし餡もうれしい。
※掲載商品の価格は、税込みです。
◇お店DATA
住所/東京都港区三田3-1-9
営業時間/9:00〜18:00
休み/第1月曜、日曜・祝日
問い合わせ先
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- PHOTO :
- 川上輝明(bean)
- STYLIST :
- Chizu
- EDIT&WRITING :
- 田中美保、古里典子(Precious)