みなさんはお正月に「すごろく」を楽しんだ経験はありますか? 幼いころは親戚が集まって盛り上がった、なんて思い出深い方もいらっしゃるのではないでしょうか。
老舗和菓子店「とらや」では、そんな昔遊びのひとつ「すごろく」のコマになった気分を体験できる展示会を「虎屋 赤坂ギャラリー」にて開催中です。
羊羹とすごろくの意外な関係とは?
「とらや」といえば羊羹ですが、そもそも羊羹とすごろくには意外な関係があります。
江戸時代後期に浅草雷門で繁盛した菓子店、船橋屋織江が「船橋名品羊羹双録」と題し、写真のようなすごろくを作りました。
右側には戯作者の仮名垣魯文による口上が書かれており、その最終行に「毎年正月御歳玉として右双六奉差上候」とあることから、お正月の景品として配られたことがわかります。
老若男女多くの人々が、船橋屋の店頭に集まる様子が描かれたふりだしのコマからスタートし、七福神がにこやかな表情を浮かべながらお茶を楽しむあがりのコマまで、全14コマに羊羹の名前やそれぞれの羊羹にちなんだ俳句、絵が添えられています。
「とらや」では、そんな「船橋名品羊羹双録」に想を得て、アナログゲームの専門家であるあだちちひろさん監修のもと、とらやオリジナルの巨大な「羊羹すごろく」を制作しました。
虎屋 赤坂ギャラリー「令和の羊羹すごろく」展
虎屋 赤坂ギャラリーに入ってすぐに目に入る、大きなすごろく。これが今回制作されたオリジナルの「羊羹すごろく」です。じゅうたんにプリントされており、ギャラリーの床一面に広げられています。ポップで華やかなすごろくが目を惹きます。
展示には「コマになった気分ですごろくにのってご覧ください」の文字が。サイコロは用意されていないので、実際にすごろく遊びをここで行うことはできませんが、ふりだしからあがりのマスまで思わず辿りたくなってしまいます。
「船橋名品羊羹双録」のふりだしが船橋屋の店頭であったように、「とらやの羊羹すごろく」のふりだしは虎屋 赤坂ギャラリーを併設する「とらや 赤坂店」と、江戸時代のすごろくをオマージュしています。
ポジティブなことしか起こらない「とらやの羊羹すごろく」!
この「とらやの羊羹すごろく」では本格的なルールも考案されており、ゲーム性が追求されています。ルールは、公式ホームページ(最下部にリンクあり)や会場パネルのQRコードから見ることができます。
特徴は何といっても、早くゴールしたほうが勝ちなのではなく、行ったり来たりしながら、たくさんの羊羹を集めるすごろくであること。
止まったマスの指示に従うのですが、羊羹が書かれているマスに止まれば、その本数だけ羊羹がもらえます。最終的に羊羹を多く持っていた人が勝ちとなります。
監修したあだちちひろさん曰く、「江戸時代の羊羹すごろくで見られる円形の雰囲気を踏襲しつつ、現代にアップデートされたこのすごろくでは、どのコマに止まってもネガティブな出来事が起こらないものであることを心がけました」とのこと。
一見残念な出来事にも見える「ふりだしに戻る」「○○マス戻る」というマスは、より羊羹をもらえるチャンスにつながるので、出遅れてしまってもポジティブな気分で遊べるようにできているそうです。
さらに「確率的に止まりやすいマスに、羊羹がたくさんもらえるイベントを仕込んでいる」など、その内容は実は本格的で計算され尽くされています。最終的に、羊羹の本数に大幅な違いが出ないように、調整されて作られています。
子ども向けという印象があるすごろくですが、大人も楽しめるんです。実際テストプレイした際には、30代~50代の社員が大盛り上がりですごろくに興じたのだそうですよ。
虎屋社員の「羊羹人気ランキング」をお買い物の参考に
さまざまな羊羹が描かれた「羊羹すごろく」ですが、虎屋社員に対して行われた「羊羹人気投票」のランキングも知ることができます。
実際店舗で「お店の人のおすすめが知りたい」というお客さんの声も多いそう。多くの社員が「おいしい!」と太鼓判を押す羊羹が「社員人気第○位」というデザインでマスに書いてあります。
第3位は定番の「夜の梅」! シンプルながら根強い人気を誇ります。
社員人気第2位は「嘉祥蒸羊羹」。江戸時代、菓子を食べて厄除招福を願った嘉祥という行事にちなんだ蒸羊羹で、6月の短い期間にしか販売されません。短い期間だけ販売される、シンプルな見た目の羊羹にも関わらず、上位の人気を誇る逸品。ぜひ6月にチェックして、そのおいしさを確かめてみてください。
そして社員人気第1位は「栗蒸羊羹」。栗のおいしい時期に販売される羊羹で、圧倒的に人気だったそうです。
色の組み合わせが楽しい羊羹や、美しい意匠の羊羹が数多くあるとらやですが、上位に挙がったのは比較的シンプルな羊羹ばかり。これには企画を行った社員の方も「もう少し華やかなものが上位に挙がるかと思っていた」と、驚いていらっしゃいました。
とらやの社員にも人気の高い羊羹を知ることができるので、今後の羊羹選びの参考にもなるかもしれません。
そして「あがり」のマスはとっても華やか! 縁起のよい一富士二鷹三茄子や、辰年ならではの龍のデザイン、そして神々しい富士山が描かれた季節の羊羹「高根羹(たかねかん)」まで。
ぜひお正月らしい遊びとデザインで、束の間のひとときを楽しんでくださいね。
持ち帰り用「羊羹すごろく」でおうち遊び!
「羊羹すごろく」はご自宅で遊べるよう、持ち帰りできるすごろくが用意されています(※無料配布)。また、先ほどのルール紹介のページからもダウンロードできるようになっています。
「準備するものはサイコロとようかん」というユニークな説明書きからはじまる「羊羹すごろく」のルール。実際は羊羹の代わりにおはじきやマッチ棒を羊羹に見立てて遊んでください、と書かれています。
持ち帰り用のすごろくとダウンロード版には社員の人気投票の結果などは書かれていませんが、すごろくのマスの指示自体は展示のものと同じです。巨大すごろくをギャラリーで鑑賞したあとは、ご自宅でとらやの羊羹と一緒に、ご家族や親戚、ご友人とお楽しみください。
虎屋文庫50周年記念を記念して行われている「令和の羊羹すごろく」展は、2024年1月31日(水)までの開催で、入場は無料です。「とらや 赤坂店」にお買い物でお立ち寄りの際や、お店が混雑している場合の待ち時間などに楽しんでほしい、とのこと。
大人になってからはなかなか遊ぶことがなくなった「すごろく」。晴れやかな気持ちで楽しく遊べる令和版の「羊羹すごろく」を、虎屋 赤坂ギャラリーで楽しんでみてはいかがでしょうか。
※すごろくの無断転載はご遠慮ください。
イラスト:森田ミホ
デザイン:株式会社東京スタデオ
問い合わせ先
- 虎屋 赤坂ギャラリー「令和の羊羹すごろく」展
- 開催期間/2024年1月31日(水)まで
- 開館時間/9:30~18:00(年末年始は赤坂店に準ずる)
- 休館日/2024年1月6日(土)・21日(日)
- TEL:03-3408-2402(担当部署 虎屋文庫)
- 住所/東京都港区赤坂4-9-22 とらや 赤坂店B1F
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- 伊東ししゃも 編集者・ライター
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- EDIT :
- 小林麻美