【ART】日本の美を変えた稀代の総合芸術家!【本阿弥光悦】のすごさを数々の名作とともに堪能
江戸時代初期の京都で諸芸に関わり、名作・名品を生み出した本阿弥光悦。その存在は同時代の芸術家だけでなく、後の日本文化にも大きな影響を与えました。美のイノベーター・光悦をさまざまな角度から紹介する、必見の展覧会です!
今回は、【本阿弥光悦】のすばらしき名作と共に展覧会について、美術ライターの浦島茂世さんにご紹介いただきました。
【今月のオススメ】本阿弥光悦筆/俵屋宗達下絵 『鶴下絵三十六歌仙和歌巻』(部分)
光悦充実期の代表作と評される書の名品。「俵屋宗達による金銀泥の絵の上から、墨で字を書いちゃうなんて…よほどの自信がないとできません(笑)。文字そのものもうまいのでしょうが、鶴の配置に合わせて字の形や字配りも絶妙に変化させていて、すごくおしゃれ。天才がコラボレーションするとこういうことになるんだなあ、と、素直に感動してしまいます」(浦島さん)
【上の作品をClose up!】天才ふたりの贅沢コラボ!
例えば俵屋宗達なら『風神雷神図屏風』(京都・建仁寺)。尾形光琳なら『燕子花図屏風』(東京・根津美術館)と、日本美術にそれほど詳しくなくてもなんとなく思い浮かぶ代表作がありますよね?
では本阿弥光悦は? と聞かれると…すぐには思いつかないのではないでしょうか。そして、このことこそが、本阿弥光悦という人物の傑出した才能の証。蒔絵や螺鈿の漆工品も(国宝『舟橋蒔絵硯箱』、重要文化財『花唐草文螺鈿経箱』ほか)、書も(重要文化財『鶴下絵三十六歌仙和歌巻』ほか)、茶碗も(重要文化財『黒楽茶碗 銘 時雨』ほか)、何をやってもすごい。しかもそのどれもが革新的で、後に「光悦芸術」と呼ばれる新たな美を、日本の美術史上に生み出しました。
光悦は、自身の手で作品を生み出すだけではなく、今でいうディレクター、プロデューサー的な仕事をしたという意味でも特別な存在です。刀剣鑑定の名門・本阿弥家に生まれ、優れた目利きとして徳川将軍家や大名たちにも一目おかれると共に、家康から拝領した土地・鷹峯に文化人や芸術家を集めて「光悦村」をつくり、多くの才能を育て、世に送り出しました。日本における「総合芸術家」第一号ですね。
そんな光悦のすごさを堪能できる展覧会。その名も『本阿弥光悦の大宇宙』です。今回、特に興味深いのは、光悦とその一族の日蓮法華宗への篤い信仰にも注目していること。当時の社会のありようがよくわかります。「江戸時代にこんなすごい人がいたんだ!」「こんな芸術があったんだ!」と、新鮮な驚きと感動があるはず。(談)
Information 特別展『本阿弥光悦の大宇宙』
本文内で挙げられた光悦が手掛けた諸芸の優品をはじめ、光悦蒔絵、ゆかりの名刀、重要文化財『紫紙金字法華経幷開結』ほかを展示。『鶴下絵三十六歌仙和歌巻』は全巻一挙公開。
場所:東京国立博物館 平成館
期日:〜3月10日まで
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- 構成 :
- 剣持亜弥、喜多容子(Precious)