「星野リゾート 軽井沢ホテルブレストンコート」のメインダイニングであり、軽井沢の森に佇む一軒家レストラン「ブレストンコート ユカワタン」(以下、ユカワタン)。ホテルの宿泊客だけでなく、記念日のディナーなど外来でも楽しむことができるフレンチレストランです。
フランス料理の歴史と伝統を尊重しながら、確かな技術に裏打ちされた現代的な“フランス料理らしい軽さ”をまとった料理を提供しています。

そんなユカワタンでは、2024年8月31日(土)までの期間、夏限定のフルコースを提供。クラシックな調理方法や季節感のある鮮やかな色彩の料理を多く取り入れ、ユカワタンならではの現代的な軽やかさで仕上げた全11品のコースとなっています。
一体どのような内容なのか、Precious.jpライターの体験レポートと共にご紹介します。
「ブレストンコート ユカワタン」ランチ・ディナーの夏限定フルコース

本コースを手掛けるのは、ユカワタン料理長の松本博史氏。
「今回は、古典的なフランスの家庭料理や、昔からフランスのレストランに存在するような料理をアレンジして現代の形に作り直し、さらに軽井沢という土地を感じてもらえるような内容にしています。
今ではあまり見られないような料理、他ではやらないような調理法をあえて選びました。フランス料理にはこういうものもあって、こんなにおいしいんだよ、というのをみなさんに知ってもらいたいです」と松本氏。
本場フランスで古典料理を学び、古典料理をアレンジした料理を多く作ってきた松本氏ならではのコースに仕上げられています。
緑に囲まれて外でいただくアミューズ ブーシュからスタート

天気のよい日は、緑に囲まれた軽井沢の風を感じる外の席で、アミューズ ブーシュの一部がスパークリングワインとともに提供されます。

木のスプーンの上にのっているのが、トマトを使ったお料理。一見トマトの要素は見当たりませんが、白いマシュマロのような部分が、トマトの色素を飛ばして果汁を取り出し、攪拌してゼラチンを加えたもの。そのしゅわっとした口当たりと、重ねられた生ハムの塩味が心地よい一品です。
串にささっているのは、稚鮎のフリット。甘酢で調理したニンジンがくるくると巻き付けられています。サクッとした食感で丸ごといただけますよ。
花が敷き詰められたガラスケースの上に置かれているのは、シナノユキマスという川魚を使った一品。玉ねぎをキャラメリゼした揚げパンの上に、マリネしたシナノユキマス、ミョウガのピクルスが重ねられています。
どれもお酒が進む味わいで、森の清涼な空気の中でいただくとさらにおいしく感じられました。

続いては、店内に入ってアミューズ ブーシュの続きからいただきます。

店内にて提供されたのは、5品のアミューズ ブーシュ。外でいただいた分を含めると8品ものアミューズ ブーシュがあります。あわせるお酒は、シャープな酸味が特徴のシャンパン「シャンパーニュ・マーク イニシャル ノワール・エ・ブラン」。モクテルもありますが、今回はワインのペアリングでいただきました。
ガラスの器にのっているのが、根セロリを使ったピュレの上に生の白エビをのせたタルト。
木箱の上にあるのが、フランスの伝統的な技法を使ったソーセージの中身だけを絞り、その下にシナモンなどの香りをうつしたパイをしいています。
フタつきの黒い器に入っているのが、ミニおやき。信州ならではの一品です。中には羊肉をスパイシーに味付けしたものが詰められています。
グラスに入っているのは、ヤギのミルクを使った一品。上質なヤギのミルクをババロアにしています。その上には、ブラックオリーブを使ったムースグラッセがのせられ、バジルオイルをたらしてアクセントに。

最後に木箱の中をあけると、もう1品あるというサプライズが!
小さな花畑のような仕立てで登場したのは、ブロッコリーのピュレの上にキャビアがのった、塩味のきいた一品。小さくともウニの濃厚な風味が楽しめます。
サプライズはもちろん、8品というかなり多めの品数も、これから始まるコース料理の期待感を高めるための仕掛け。時季によって変わるアミューズ ブーシュは、ときに10品を越えることもあるそう。
仕立ても味わいもまったく違う小さな8品を食べ進めながら、ワクワクする気持ちが高まっていきます。
■1:前菜の一皿「鯉のコントラスト」


最初の一皿から、その鮮烈なビジュアルに目を奪われます。
ルビーのように艶やかで鮮やかな赤の、一見デザートのような一品は、なんと鯉を使った前菜です。熟成した鯉と血抜きしたばかりの鯉、ひと皿で2種類のテクスチャーを楽しめる仕立てになっています。
1週間以上熟成した鯉はビーツのアスピック(コンソメゼリーで固めた冷前菜)の中に。もうひとつは、レストランの裏手で泳いでいたという鯉を白ワインスープとからめて。上にスライスしたビーツを重ね、仕上げに赤紫蘇のアイスパウダーをふりかけることで、より一層キラキラと宝石のようなビジュアルに仕上がっています。しめたての鯉のコリコリした食感の淡泊な味わいは、水のきれいな軽井沢ならではの逸品です。
ペアリングのワインはドメーヌ コーセイの「メルロ ロゼ 2023」。メルローで作られたロゼワインで、香り高くフルーティーな味わいです。
■2:前菜の二皿「アカヤマドリと毛蟹のタルト」


続いては、夏が旬のキノコ・アカヤマドリを使った、花のようなビジュアルのお料理が登場。アカヤマドリのピュレに毛蟹の身をあわせてタルト生地に詰め、スライスしたトリュフや、アカヤマドリの出汁をかためたものを飾っています。アカヤマドリの旨みが詰まった一品です。
ペアリングは、南フランスのローヌ地方で作られた白ワインで、ル・ヴュー・ドンジョンの「シャトーヌフ・デュ・パプ・ブラン」。料理と合わせやすく、プロに愛されてきたワインだそうで、まさに素材の持つおいしさ、旨みを引き立てていました。
■3:前菜の三皿「乳飲み仔山羊のブランケット クレソンの香り」


前菜の三皿目は、ほのかにミルクの風味を感じる仔山羊を使った一品。
やわらかで繊細な舌触りの仔山羊をブランケット(クリーム煮)で味わうお料理。軽井沢の新緑のような鮮やかな緑のソースはクレソンです。ソースの中には煮込んだ別の部位のお肉も入っているので、たっぷりと仔山羊が楽しめます。上にのっているのは、レモン風味の泡。クリーミーさにさわやかさも加わり、食べやすい味わい。
こちらの料理と、次の野菜料理にあわせるワインは、黄桃や完熟した柑橘を思わせる風味にほどよく酸味が調和した白ワイン、べリヴィエールの「2021 ジャニエール カリグラム」です。です。
■4:前菜の四皿「野菜のレゾナンス」


前菜の四皿目は、「野菜のレゾナンス」。ナッツのたっぷり入った竹炭入りの黒いパンと共に登場しました。
パンをその場で削って、削りたてのパン粉を振りかけたお野菜をいただきます。野菜は水分が多いため、パン粉が水分を吸って食感を失わないようその場で振りかけるのだそう。削りたての香りも楽しめます。
野菜は20種類ほどあり、ボイルしたてのものやピクルスにしたものなど、すべて調理法も味付けも変えているのだとか。そのため、ドレッシングはなくてもお互いがお互いを引き立て合い、滋味深い味わいに。食べ進めていくと、野菜の組み合わせによって味が変化していく新しい体験でした。
■5:前菜の五皿「鳩のヴェッシー包み」


最後の前菜は、なんと風船のような状態で登場する「鳩のヴェッシー包み」です。
ヴェッシーとは、豚の膀胱のこと。風船状にしたヴェッシーにお肉を包んで火入れするヴェッシー包みはフランスの伝統的な調理技法ですが、近年では本場フランスでもヴェッシーの入手が困難で、ヴェッシー包みそのものが希少な料理となっているそう。


フランスでの修行中にヴェッシー包みを知って印象に残っていたという松本料理長。独自で作り方を研究して日本の豚を使って作り上げたヴェッシーに、鳩肉やトリュフなどを入れて鍋でゆっくりと火入れして作り上げたのが、こちらのお料理です。
膨れ上がったヴェッシー包みはそのビジュアルだけで驚きがあります。さらに目の前で開封するとトリュフの芳醇な香りが広がって中からゴロリと鳩肉が登場。五感を刺激するようなお料理です。

ヴェッシーの中で軽く蒸されたような状態になった鳩肉は、骨を外してお皿に美しく盛りつけられて提供されます。付け合わせはローストした玉ねぎやポワレしたフォアグラ、黒トリュフのスライス。
肉の部位はむね肉とささみ。ヴェッシーから独特のフレーバーが添加されてより複雑な旨みを楽しめます。しっかりと歯ごたえもあって、とても美味! ソースも鳩から出たコンソメを使用していて、凝縮された鳩の旨みを堪能できます。
あわせるワインは南フランス・コルシカ島のドメーヌ クロ マルフィジによる「ラヴァニョーラ ルージュ パトリモニオ 2016」。ミネラル感とタンニンの余韻が感じられる赤ワインです。
■5:魚料理「岩魚のムニエル ハーブ香るナージュ」


魚料理は、イワナのムニエル。イワナは1年ほどの生育期間で市場に流通する15~20cmのものが主流ですが、こちらでは3年ほどかけて育てたものを嬬恋から仕入れているのだそう。通常の4倍ほどの重量があるのだとか!

まるまる一尾焼き上げたものを拝見したのち、切り分けた状態で提供されました。イワナのあらなどを使った魚の出汁をベースにコンソメをとり、バターを落としてハーブの香りをうつしたソースをかけていただきます。
バターとハーブの香りで食欲が増進する一皿。イワナのふっくらとした白身にソースが絡み、絶品です。
あわせたのは、ミッシェル・ゴネのノンヴィンテージのシャンパーニュ「ブラン・ド・ノワール」。豊かな果実味と芳醇な香りが楽しめます。
■6:肉料理「鹿肉のロティ 鹿のジュ」


続く肉料理は、鹿肉のローストです。じっくりとローストした鹿肉に、鹿の骨からとった出汁をぐっと煮詰めたソースをかけていただきます。付け合わせとして、にんじんのピュレ、鹿肉のパテを焼き上げたものがエディブルフラワーと共に美しく添えられています。
お肉に合わせるのはブルゴーニュの赤ワイン「オーセイ・デュレス プルミエ・クリュ バ デ デュレス」の2003ヴィンテージ。軽い口当たりながら熟成感があり、お肉との相性がばっちりです。
■7:チーズ料理「フロマージュ・ア・ラ・メゾン」


魚、肉とメイン料理を堪能したあとは、チーズを使った一皿。前菜の三皿として登場した「乳飲み仔山羊のブランケット」で使ったヤギを育てているところで作っている、ヤギのミルクからできたチーズだそう。
ソフトな食感のヤギのチーズをふわふわのムースにして、その上からスパイスの香りをうつしたハチミツをかけ、一番上にハードタイプのヤギのチーズを削りかけています。さまざまな食感の濃厚なチーズ感が楽しめます。
■8:プレデザート「杏とローズマリーのコンビネゾン」

プレデザートは、食後のお口直しにぴったりな杏のシャーベット。ローズマリー風味のクラッシュアイスと水切りヨーグルトを組み合わせた、お口の中をさっぱりとさせてくれる一品です。
■9:デザート「フルール・ショコラ」


運ばれてきた瞬間、歓声をあげてしまうような華やかなデザートは、なんとショコラで作った薔薇。
一枚一枚チョコレートの花びらを重ねた薔薇の下には、こちらも薔薇の風味がつけられた泡がたっぷりと。中には、チョコレートのムースとアイスクリーム、フランボワーズの冷たいソースとピュレが詰まっています。チョコレートの甘みとフランボワーズの酸味、薔薇の優雅な香りが三位一体となって繊細なおいしさです。
チョコレートも、花びら、ムース、アイスとすべてフレーバーが違うというのだから驚き! コース全体を通してだけでなく、一皿の中にも変化をつけていきたいという、松本料理長のこだわりを感じました。
あわせたのは、黒ブドウから作られる甘口のワイン「ジャン マルク ラファージュ モーリー グルナ」。上品な甘さとほどよい酸味が楽しめ、チョコレートとの相性が抜群でした。
■10:食後のハーブティーと小菓子


食後のハーブティーは、近隣で採れるハーブの中から、ゲストの好みや気分にあわせてセレクトしてもらえます。甘やかなお花系、さわやかなミント系、ピリッとしたスパイシー系など、種類はさまざま。今回は、個人的に好きなディルを中心に、相性がいいというフェンネルの花やミントを組み合わせて清涼感のあるハーブティーを作っていただくことに。
小菓子とともに、コースの余韻にひたりながらゆっくりといただきました。

今年春より始まったランチ営業で、より気軽に利用しやすくなったユカワタン。記念日はもちろん、軽井沢旅行の思い出にも、ぜひ立ち寄って華やかなコース料理を堪能してみてはいかがでしょうか。
問い合わせ先
- ブレストンコート ユカワタン
- 営業時間/ランチ(土日のみ営業)11:30~、12:00~、12:30~、ディナー(通年)17:30~
料金/(ランチ、ディナーともに)コース ¥27,500、ワインペアリング ¥13,200~、モクテルペアリング ¥5,800~(すべて税込み・サービス料別) - TEL:050-5282-2267
- 住所/長野県軽井沢町星野
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 小林麻美