古くから農作業の目安とされ、その時季に合わせた風習などもある二十四節気(にじゅうしせっき)。今回はそのなかから「霜降」について解説します。「もうすぐしもふりだね」なんて会話はNG! 読み方は「しもふり」ではありませんよ。ビジネス会話のネタにもどうぞ。

【目次】

一年のうちでなんとなく余裕があるのは「霜降」のころでは?
一年のうちでなんとなく余裕があるのは「霜降」のころでは?

【「霜降」とは?「読み方」「意味」「由来」など基礎知識】

■読み方

「霜降」の読み方は「しもふり」ではありません、「そうこう」と読みます。

■由来

新暦の10月23日ごろ、字のごとく霜が降り始めるころにめぐってくるのが二十四節気の「霜降」。このころになると木々の紅葉も見ごろを迎える地域が多くなります。2024年はありがたくない記録をいくつも更新した猛暑でしたが、「霜降」になればようやく屋外活動が楽しめる気候になる、というわけです。

■2024年の神嘗祭はいつ?

2024年の「霜降」は10月23日、期間でいうと10月23日から11月6日までになります。ちなみに次の節気は「立冬」です。暦の上のこととはいえ、「秋が短いっ!」と感じますね。

■意味

二十四節気は、古代中国でつくられた季節の区分法。黄道を基準に1年を24等分して気候の推移を示したもので、12の正節(せいせつ)と12の中気(ちゅうき)からなります。黄河流域の気候に基づいた区分なので、日本の気候とはズレもありますが、日本でも農作業の目安として用いられてきました。

二十四節気は、1年を24等分するのですから、約15日ごとに新たな節気が巡ってきます。四季がはっきりしなくなった今、「いつからいつまでが秋」とは感じにくく、「10月の前半より後半のほうが秋の深まりを感じる」といったように、短い期間で捉えたほうが季節の移ろいを楽しめそう。二十四節気が、生活に小さなうるおいをもたらしてくれるかもしれませんね。


【ビジネス雑談に!季節を感じる「霜降」の過ごし方】

■酉の市で商売繁盛(=良い仕事に恵まれる)を願って…

「霜降」のころの行事といえば、鷲神社(おおとりじんじゃ/大鳥神社)の酉の市でしょう。鷲神社は日本武尊 (やまとたけるのみこと) を祀る神社で、開運や商売繁盛にご利益があるとされているため、酉の日には露店が立ち並び、恵比寿さまやおかめのお面、黄金色の俵や小判、鯛など縁起もので飾った熊手を目当てに大勢が訪れます。「幸運をかき集める」として熊手が用いられており、購入する熊手は「毎年商売が上向くように」と徐々に大きくしていくものなのだとか。「霜降」の期間中に一の酉がやってきます。2024年は一の酉が11月5日(火)、二の酉が17日(日)、29日(金)です。

■旬を味わい愛でる

「霜降」のころは、秋鮭や秋刀魚がおいしい時季です。野菜類ではさつまいもやれんこん、ごぼう、かぶなどの根菜類が、果物はりんごや柿のほか柑橘類も出始めます。また、各地で菊まつりが行われるのもこの時季ですね。「霜降」のころに明るい紫色の小さな果実をたわわに実らせる低木樹のムラサキシキブも、小さな鉢植えや庭植えとして人気があります。

■ハロウィンも!

「霜降」期間中の楽しいイベントといえば、10月31日のハロウィン! さまざまな仮装は子供にとってのコスプレ。今ではクリスマスより子供に人気があるイベントといわれているようです。本来は、11月1日の「諸聖人の日(万聖節)」というキリスト教の祝日の前夜祭にあたります。

■体調不良に効く秋の七草

「秋の七草」をご存じですか? 無病息災を願って1月7日にお粥にして食べるのは「春の七草」ですが、「秋の七草」は『万葉集』に収録されている山上憶良(やまのうえのおくら)の2種の歌に由来するもの。

「秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七種の花」
「萩の花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝貌の花」

ふたつ目の歌にある、萩、尾花(すすき)、葛、撫子、女郎花(おみなえし)、藤袴、朝貌(あさがお/桔梗のこととされています)は、「春の七草」のように食用するのではなく鑑賞用。萩はめまいやのぼせ、桔梗の根は咳止め、撫子や女郎花は炎症をやわらげ、藤袴はかゆみ止めなど、漢方薬や民間薬として使われる植物ばかり。特に葛からつくる葛根は、風邪薬などでよく知られています。


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11月も半ばを過ぎると街はすっかりクリスマスムード、職場でも年末の慌ただしい雰囲気になってきます。その前のこの「霜降」のころは、嵐の前の静けさ…かもしれません。「霜が降りる季節」ですから、急激に冷え込むことも。「秋の七草」を利用するなどして、体調管理にはいっそう気を付けましょう。

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参考資料:『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『世界大百科事典』(平凡社)/『12か月のきまりごと歳時記(現代用語の基礎知識2008年版付録)』(自由国民社) :