砂糖よりも甘みは強いのに、低カロリーな「はちみつ」。しかも、300種類もの栄養分が含まれるスーパーフードということで、近年ブームになっていますよね。今はちょうどはちみつの季節ということもあり、何となくスーパーで買って、何となくトーストに塗ったり紅茶に入れたりしていませんか?
それでは、はちみつの味や風味が台無しになっている可能性大! はちみつは選び方、食べ方ひとつで大きく変わる食材だったのです。ちょっとしたことですが、知らずにいると、大きな損をしてしまっているかもしれません。
そこで今回、はちみつ料理・お菓子研究家で、木村幸子さんから、最高においしいはちみつを食べる条件と、はちみつをより楽しめる食べ方について、詳しく教えていただきました。これでもう、はちみつのもったいない選び方、食べ方は卒業しましょう。
■「最高においしい」はちみつを食べるための5つの条件
一体どうすれば、はちみつの魅力を堪能できるのでしょうか? まずは、最高においしいはちみつを食べるための5つの条件を見ていきましょう。はちみつを購入する際の条件を(1)~(3)、実際に食べる際の条件を(4)と(5)でお伝えします。
(1)国産のものは、ラベルに養蜂場が明記された「純粋はちみつ」を選ぶ
現在、日本ではちみつの表記で流通しているものは、大きく分けると純粋はちみつ、精製はちみつ、加糖はちみつの3種類です。
一言で言うと、純粋はちみつは、一切加工されていない天然のはちみつ。精製はちみつは、はちみつから色や匂いを取り除いたもの。加糖はちみつは、純粋はちみつに水飴などを加えたものです。
はちみつ本来の味わいや香りを楽しむならぜひ、純粋はちみつを。まずは、ラベルに「純粋はちみつ」と書かれたものを選びましょう。ラベルに養蜂場や養蜂家が明記されているものであれば、つくり手の自信がうかがわれ、より安心感が高いです。
(2)ネットでイメージだけで選んで買わない
一口に「純粋はちみつ」といっても、どんな花の蜜からつくられたものかによって、香り、風味、色、食感はさまざま。さらに、同じ花からつくられたものでも、産地や採蜜する時期によって、味わいが異なります。それほど個性豊かなはちみつですから、どれが最高においしいか?はお好みしだい。
オンラインショップで名前のイメージだけで選んだ場合、いざ届いたものを食べてみると「何か思っていたのと違う……」となることも、往々にしてあるようです。はちみつ専門店やデパートのはちみつコーナーでいろいろ試食して購入するようにしましょう。
はちみつは、鼻に抜けるような後味を楽しむのもひとつの醍醐味。香りのテイスティングも重要です。フタを開けた瞬間、「この香り、好き!」と嗅覚に合うものであれば、味覚にも合う可能性は高いといえます。香りをじっくり吟味するためにも、お店を訪れるのはぜひ体調のいいときに!
(3)最初は「アカシア」か「れんげ」のはちみつにする
お好みで選ぶのがよい、といっても、初めて専門店を訪れると、あまりに種類が多すぎて「どれから試せばいいの!?」と戸惑ってしまうかもしれません。そこで、はちみつ選びの基本のキを、木村さんから教えていただきました。
「基本的に、色の薄いものは風味がまろやかで、色の濃いものは風味が濃厚でミネラルが豊富。また、ブドウ糖や花粉が多く含まれているものは、結晶化しやすくてとろみが強く、逆にブドウ糖・花粉が少ないものはサラサラのリキッド状です。
どれにするか、迷った場合は、まずアカシアやれんげをおすすめします。このふたつのはちみつはクセが少なく、万人ウケするタイプのはちみつで、お菓子や料理、ドリンクとの相性もよいです。あるいは、オレンジやみかん、リンゴ、レモンなどフルーツ系は、その果実のイメージに通じるものが多いので、味も香りも親しみやすいと思います」(木村さん)
アカシアやれんげとは対照的に、たとえば蕎麦のはちみつなどは独特の風味があり、初めて口にしたときには「これもはちみつなの!?」と驚いてしまうほどなのだとか。でも、そのクセがやみつきになる人もいるようです。はじめは、スタンダードなものから入って、それに飽き足らなくなってきたら、徐々に個性的なものを試していくといいかもしれませんね。
(4)はちみつに不必要に「熱」を加えない
同じ甘みでも、砂糖は高温のほうが甘さを感じやすく、冷たいと感じにくいのに対し、はちみつは温度が低いほうが甘みをしっかり感じられるという性質があります。また、はちみつを60度以上に加熱すると、豊富な栄養成分が損なわれるほか、香りが飛んだり、風味が落ちたりするおそれも。
はちみつの栄養も風味も存分に堪能するなら、不必要に熱を加えないようにしましょう。たとえば、ホットコーヒーや紅茶にはちみつを加える場合は、少し冷ましてからにすること。熱々の状態では、甘みを感じにくいので、ついつい入れすぎてしまうこともあるようです。
(5)はちみつを食べるときのスプーンにもこだわる
金属がはちみつに触れると性質が変わるといわれているので、アルミニウムや銀などのスプーンは避けたほうがいいかもしれません。金属のなかでも、影響が少ないとされるステンレス製、または木製や陶製のスプーンを使いましょう。
「スプーンそのものの舌触りも、はちみつを味わう重要なファクターです。個人的にはステンレスが好みなのですが、木製や陶製をすすめている人もいます。また、素材だけでなく、大きさや使いやすさ(はちみつのすくいやすさ)もポイントでしょう。
“はちみつ用”と銘打っているのに、意外と使いにくいものもあります。“これ”と1本に決めてしまうのではなく、スプーンも自分に合うものも、いろいろと試してみるのがいいと思います。普段は意識していないと思いますが、意識すると、はちみつをよりおいしく感じられるスプーンのタイプが見つかるかもしれませんよ」(木村さん)
最高においしいはちみつを味わいたいなら、まずはステンレス製のスプーンでぜひ。慣れてきたら、木製や陶製を試してみてもよさそうです。
■はちみつをより楽しめるようになる5つの「意外な食べ方」
スプーンですくってはちみつ自体を味わう以外に、はちみつにはさまざまな活用方法がありますよね。定番でいえば、紅茶やコーヒーに加える、ホットケーキやパンケーキ、ヨーグルトにかける、といったところでしょうか。
しかし、はちみつの使い道はほかにもあります。実は、おかずや副菜もおいしく使えるのです! 木村さんから、はちみつの意外なアレンジ方法についても教えていただきました。はちみつを買っても、いつも残してしまう…という方は、ぜひ試してみてくださいね。
(1)はちみつ味噌
好みのお味噌150gにはちみつ小さじ1を加えて混ぜ、1週間以上寝かせたものが「はちみつみそ」。はちみつは発酵食品との相性がよく、味噌に加えるとまろやかでコクのある味わいになるのです。はちみつ味噌は、お味噌汁はもちろんこと、野菜炒めや田楽などにも活用することができます。
(2)ミニトマトのハニー漬け
湯むきしたミニトマト10個を、はちみつ大さじ1、白ワイン小さじ1、レモン果汁小さじ1に漬け込みます。冷やして食べると、トマトがまるでデザートのように!
(3)アボカドトマトのはちみつがけ
アボカドとトマト各1個を食べやすい大きさに角切りして、はちみつ大さじ2を全体にからめます。その上からオリーブオイル大さじ2をかけるだけで、栄養豊富な即席朝食のできあがりです。
(4)とうふ抹茶はちみつ
お好みのとうふにはちみつと抹茶を適量かけるだけ。はちみつは砂糖より甘みが強いのに低カロリーなので、ダイエット中のおやつにぴったり。
(5)ハニーチキン
鶏の胸肉の表面にはちみつをぬると、はちみつの成分が肉の収縮を抑えて、肉がかたくなりにくいという効果があります。さらに、焼いたときにカラメル化して肉をコーティングし、肉汁をしっかり抱え込むから、パサつきがちな鶏の胸肉でもやわらかくジューシーになるのです。
上記(1)~(5)は、はちみつのアレンジ方法のほんの一例。ほかにも、魚や肉の臭みを抑えたり、砂糖やみりん代わりに、煮物や照り焼きといったあらゆる料理に使えたりするので、はちみつは余らせるどころか、キッチンにぜひ常備しておきたい万能調味料のひとつなのです。
最後に、木村さんからはちみつの楽しみ方について、ワンポイントアドバイスをいただきました。
「はちみつは、1日に100g(約294kcal)食べても大丈夫ですが、ただ、一度に大量摂取すると糖分が蓄積されて、肥満のおそれがないわけではありません。美容や健康目的で食べる場合は、毎食後大さじ1程度が目安です。
また、私の場合、毎朝はちみつの香りを確かめるのが習慣になっています。不思議なことに、その日の体調や気分によって、ピンとくる香りが違うのです。あまり好きじゃなかったはずの香りが、ある朝、急にお気に入りになることも。どの香りがその日の自分に合うかは、私にとって体調管理のバロメーターにもなっています」(木村さん)
その日の気分や体調によっても感じ方が変わるとは、はちみつは実に奥が深いですね。そして、たまにはちみつの香りを楽しむのではなく、毎日香りを楽しむのもよさそうです。また、これまでにはちみつの健康効果を知っていたものの、余らせがちだった方はぜひ上記の食べ方もヒントにしてみてください。そうすれば、毎日のようにはちみつを楽しめるようになるはずですよ!
『毎日がしあわせになるはちみつ生活』木村幸子・著 主婦の友社刊
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 中田綾美