連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People

明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する『Precious』連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、文化的遺産を次世代に伝えることをミッションとするチャリティ団体「ヘリテージ・オブ・ロンドン・トラスト」ディレクターを務めるニコラ・ステーシーさんにインタビュー! 

「文化遺産を “生きたもの” として伝えることが重要」と語るニコラさんに、取り組んでいるプロジェクトや今後の展望についてお話しをうかがいました。

ニコラ・ステーシーさん
「ヘリテージ・オブ・ロンドン・トラスト」ディレクター
(Nicola Stacey)ロンドン生まれ。オックスフォード大学で古代・現代史を専攻、その後、同大学院にて考古学で博士号を取得する。’01年からロンドン博物館のディベロップメント・マネージャーに。後に「イングリッシュ・ヘリテージ」にシニア・ヒストリアンとして10年在籍、’15年より現職。大手地方紙で「ロンドンを輝かせている100人」にも選出された。2児の母。

【London】若者たちに街のストーリーを伝え、誇りを共有することが未来を変える

「ヘリテージ・オブ・ロンドン・トラスト」ディレクターのニコラ・ステーシーさん
「ヘリテージ・オブ・ロンドン・トラスト」ディレクターのニコラ・ステーシーさん

ロンドンのさまざまな地域に点在する歴史的建造物やパブリックアート、記念碑などを保存・修復し、その豊かな文化的遺産を次世代に伝えることをミッションとするチャリティ団体「ヘリテージ・オブ・ロンドン・トラスト」。設立は1980年で、'70年代のロンドン大不況により、修復やメンテナンスの予算が大幅に削られたことがきっかけだった。

「リサーチして場所を選定し、寄付金や基金を集め、修復計画を実行する。そのすべてのプロセスを行い管理することが私たちの仕事です。場所を選ぶ際は、一般の人が気軽にアクセスでき、修復することによってそのコミュニティを活性化するポテンシャルがあるかを考慮します。教会など、ほかから支援が得られそうなものは、候補から外しています」

その修復プロジェクトに教育的要素を組み込んだのが、ステーシーさんが考案した「プラウド・プレイシス」というプロジェクト。’20年にローンチし、中高生を対象に現在まで8000人の生徒が参加している。

「初めは、一般の学校を退学した生徒を受け入れ更生を促す特別学校の生徒を優先してスタートしました。現在では一般にも対象を広げています。具体的には、生徒たちと修復作業前の歴史的遺物が置かれている場所に赴き、作品やコミュニティの歴史、背景などをレクチャー。修復に関わる職人の話も聞き、彼らの道具を手に取ってみるワークショプも行います。修復が終わったら除幕式などのセレブレーションにも参加。知り、関わることで、自分が属するコミュニティに誇りがもてるようになることが、私たちの願いです」

15歳のとき遺跡の発掘に参加し、過去の人々と直接つながった感覚に衝撃を受けた。

「文化遺産を “生きたもの” として伝えることが重要。背後にあるストーリーを多くの人に届けることが使命だと感じています。きっと、若者たちの生き方にもポジティブな影響を与えるはず。未来につながっていくんです」

◇ニコラさんに質問

Q. 朝起きていちばんにやることは?
窓から庭を眺め、朝のニュースをチェックしてから、仕事に行く準備をする。
Q. 人から言われてうれしいほめ言葉は?
「あなたは本当に、私のいい友達だ」。
Q. 急にお休みがとれたらどう過ごす?
西ロンドンの、大好きなテムズ川の美しい風景を眺めながら、散歩したりリバーボートに乗ったりしたい。
Q. 仕事以外で新しく始めたいことは?
趣味で絵を描いているが、まったくの独学なので、正式に絵画を習いたい。
Q. 10年後の自分は何をやっている?
もう少し大きな組織で、教育プログラムや人とコミュニケーションをする、今と同じようなことをやっていると思う。
Q. 自分を動物にたとえると?
鷲。世界のどこに行こうとも高い空が好き。空から世界を鳥瞰したい。

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PHOTO :
Miki Yamanouchi
取材 :
Yuka Hasegawa