黒の木炭画からカラフルな油彩、パステル画まで、振り幅の広すぎるルドンの魅力をたっぷりと!

19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したオディロン・ルドンの回顧展。奇怪なモチーフを描いた世紀末デカダンを象徴するような作品も、心に温かな火を灯してくれるようなパステル画も、一堂に紹介します。

展覧会の見どころについて、美術ライターの浦島茂世さんにご紹介いただきました。

Navigator:浦島茂世さん
美術ライター
All About「美術館」ガイド。古今東西のアートに幅広い見識をもつ。最新刊は街角アートの歴史と魅力を紹介した『パブリックアート入門 タダで観られるけど、タダならぬアートの世界』(イースト・プレス)。

【今月のオススメ】『PARALLEL MODE :オディロン・ルドン── 光の夢、影の輝き』

展覧会_1
オディロン・ルドン《絶対の探求…哲学者》 1880年 木炭/紙 43.2×35.2cm 岐阜県美術館蔵

ルドン、と聞いて思い浮かべるのはどんな色でしょうか。私は「真っ黒」でした。だから10代の終わりに初めてパリのオルセー美術館を訪れたとき、「すごくきれいな絵がある!」と感激して作者を見たらルドンで、とても驚いたことを覚えています。ここまで振れ幅が大きいと、「いったい何があったんだろう」と思いますよね。

ルドンは、19世紀後半から20世紀の初めにかけてフランスで活躍した画家です。木炭画と石版画の深い黒による奇怪なモチーフの作品で注目を集めました。それが、色彩溢れるパステルや油彩に変わっていくのは50代に入ってからのこと。幻想的な世界観こそ共通していますが、それでもこの変化は強烈です。

展覧会_2
オディロン・ルドン《神秘的な対話》 1896年 油彩/画布 65.0×46.0cm 岐阜県美術館蔵

日本では存命中から人気があったようで、洋画家の児島虎次郎や日本画家の竹内栖鳳らがルドン作品を所有していました。一方、漫画家の水木しげるがルドン作品から「目玉おやじ」を着想したというエピソードも有名で、『ゲゲゲの鬼太郎』からルドンを知った、というサブカル層も多い。ジョリス=カルル・ユイスマンスの著作から知った文学系もいるでしょう。そんなふうに入口がたくさんあることもルドンの特徴です。そしてどこから入っても必ず「最初の印象と違う!」となるわけですね(笑)。

実はこの作品の変化は、家族との別れと出会いが影響しているようなのですが、それを知らずとも今回の展覧会は、ひとりの人間の人生というものの豊かさを作品から感じとることのできる、稀有な個展だといえます。独自の表現世界を堪能してください。(浦島さん)

◇Information『PARALLEL MODE :オディロン・ルドン── 光の夢、影の輝き』

世界屈指の質の高さと量を誇る岐阜県美術館のルドン・コレクションから約80点と、国内の優品、オルセー美術館所蔵の油彩画と木炭画を合わせ約110点を紹介。最初期から「黒の時代」、1890年代以降の「色彩の時代」、最晩年までを網羅する。晩年の主要な画題のひとつ、「ステンドグラス」を描いた《窓》が東京では初公開されるのも見どころ。

開催期間:開催中〜6月22日(日)
会場:パナソニック汐留美術館(東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階)

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問い合わせ先

パナソニック汐留美術館

TEL:050-5541-8600

EDIT&WRITING :
剣持亜弥、喜多容子(Precious)
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