沖縄の“ものづくり”を牽引する、人気作家の工房へ—— 心に響く「つくり手」を訪ねて

地元の自然に根ざした “ものづくり” を追求する職人をクローズアップ。伝統をモダンにアップデートして今に伝える、独自のクラフツマンシップに注目を。

ガラス作家・「ENTRO glass studio」主宰 比嘉奈津子さん——自然への深い敬意と愛情、尽きることのない探究心をもって真摯に向き合い続ける、誠実なガラス作家の思い

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〈 Profile 〉比嘉奈津子さん
(ひが なつこ) 1982年、沖縄県名護市生まれ。2004年倉敷芸術科学大学工芸学科ガラスコース卒業。10年ほど日本を放浪しながら各地の工房で制作し、2010年伊藤賢治氏に師事。2013年名護にて「ENTRO glass studio」設立。

ガラス工芸を未来へ紡ぐため新たな挑戦を続けていく

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レストランに併設されたギャラリースペース。現在ギャラリーでの作品販売は行っておらず、展示会やポップアップでのみ購入可能。開催情報はインスタグラム(@entro_glassstudio)で告知。

「ガラスの魅力をひと言で表すと “中毒性”。奥が深くて、今でもわからないことだらけなんです。ガラスへの気持ちは、永遠に片思いですね」。

無邪気にそう語るのは、ガラス作家の比嘉奈津子さん。名護市の豊かな自然のなかに佇む「ENTRO glass studio(エントロ グラス スタジオ)」で、“ガラス素材” の美しさを探求。長年研究を重ねた巧みな技を駆使し、日常使いできる器から、独創的なアート作品まで、多岐にわたる作品を生み出している。 

比嘉さんがガラス作家の道を志したのは、18歳のとき。「初めてガラス窯の前に立って扉を開けた瞬間、窯から放出された熱波に圧倒され、体全身に鳥肌が立ち、感電したような感覚になったんです。命(ぬち)かけられるものを、やっと見つけたと思いました」。世界に通用するガラスの技術を学ぶため、県外の大学に進み、またたくまにのめり込んだ。 

ベネチアンガラスをはじめ、さまざまな技法を用いて制作に励む比嘉さんだが、自身の作品には一貫して、メッセージ性はもたせないという。「感じるままに、それぞれの解釈で自由に楽しんでほしいと思っています」。彼女の目下の目標は、ガラスに夢中になる大人を増やしていくこと。 

ガラスを学ぶ人口の減少や、ガラス素材の欠乏など、あらゆる課題を抱えているガラス工芸の世界。近年比嘉さんは、ガラスの廃材を生かした新たなガラスづくりに挑戦したり、人材育成に携わったり、作品づくり以外の活動にも精力的だ。取り組みを通じて、ガラスづくりにおける持続可能な未来を見据え、新たな仕組みを築くことを目指している。

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比嘉さんの夫・大陸さんの飲食店「エントロ スープ&タパス」。地元野菜や薬膳を使った料理やドリンクが、主に比嘉さんのガラスで提供される。

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これまでに制作したガラスのパーツなどを、技法の種類ごとに分けて保管。 

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ガラス作家の財産ともいえる、色ガラスの色見本。自身のガラスと色ガラスの収縮率が異なる場合、割れて組み合わせることができないため、事前に色見本を作成して確認する。比嘉さんが扱う色ガラスは、現在100色ほど。

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成形作業がしやすいガラスの硬さになるよう、グローリーホールに入れて温度調整を行う。
※工房の一般公開はしていません。お問い合わせはご遠慮ください。


〈 Data 〉比嘉さんの夫・大陸さんの飲食店「エントロ スープ&タパス」

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  • 住所:沖縄県名護市為又1220-21 龍ハイツ1F
    TEL:0980-59-6778
  • 営業時間:12:00~15:00(L.O.14:15)、18:00〜23:00(L.O.22:00)
    定休日:日・月曜
    席:カウンターとテーブル、計15席。
  • @entro_cafe 

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PHOTO :
大城 亘(camenokostudio)
EDIT&WRITING :
池田旭香、奥山碧子・安村 徹(Precious)
コーディネーター :
松浦 明
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