連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People

明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する『Precious』連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、京都を舞台に水引作家として活動する、「和工房包結(ほうゆう)」代表理事の森田江里子さんにインタビュー!

ネット検索でふと出合った水引の世界に魅せられて、導かれるように作家の道へと進んだという森田さんに、将来への展望を含めて詳しくお話しをうかがいました。

森田 江里子さん
「和工房包結(ほうゆう)」代表理事 水引作家
(もりた えりこ)東京都生まれ。女子美術短期大学服飾科卒。日本書道専門学校卒。'07年「和工房包結」を設立し、京都に移住。古都で触れる四季折々の風物詩や文化遺産にインスピレーションを受けながら、創作活動から後進育成、古い折形水引の探究や伝承まで幅広く活動している。著書に『季節をむすぶかわいい水引』(ブティック社)。

【Kyoto】1本の線から紡がれる“水引” の世界。縦横無尽に文化を結ぶ心地よさの源は

「和工房包結(ほうゆう)」代表理事、水引作家の森田江里子
「和工房包結(ほうゆう)」代表理事、水引作家の森田江里子さん。

祇園祭りの山鉾、お月見団子、ラクダ、プリン・ア・ラ・モード…。森田さんのつくる作品は、私たちが日本の古典技法・水引に抱くイメージを鮮やかに裏切ってくれるものばかり。愛らしさと品格と、その両方がどの作品からもじんわりとにじみ出ている。

「基本の“あわび(あわじ)結び”は、祝儀袋でよく見るもので、私の作品もほとんどがこの結びでできています。それを連続して立体にし、デッサンはせずに形をつくりながら、組み立てていきます。始まりは1本の線だけど、それを結ぶことで無限に形が広がっていく、この作業がとても心地いいのです」

森田さんはもともと書道の道に進んでいて、そこでも線のような、かな文字を好んでいたそう。それがネット検索でふと出合った水引に心惹かれて、導かれるようにこの道へ。

「始めたときから『一生の仕事にする』と決めていました。手先は器用なほうだし、神道にも深い関わりがあることを知って、その意義深さに興味が増していったのです。1年後には作家活動をスタートし、『和工房包結』を設立しました。せわしない東京の空気感に居心地の悪さを感じていたこともあり、仕事もないのにひょいっと京都へ移住。ふだん、腰の重い私の大冒険でしたが(笑)、和の文化を掘り下げるのには最適の地で、あの決断があってこそ今の自分があるのだなと思っています」

現在は、作家としての創作に加えて、教室や講演会、後進育成にも励んでいる。さらに以前から関心を寄せていた世界の文様のなかで、ケルト文様を水引で再現するという規模の大きな作品制作にも取り組んでいる。

「今後は、水引の文化を海外にも広げていきたいですね。香港やサウジアラビアからワークショップの問い合わせが来ていて、これからどう展開するのが本質的に伝わるのかをじっくり考えているところ。1本の線がつくる結びや文様で世界をつなぐ。それができれば、これぞ本望だなと感じているのです」

◇森田さんに質問

Q. 朝起きていちばんにやることは?
3分間の筋トレ。コロナ禍で太ってしまったので、YouTubeで見つけた簡単なものです。 
Q. 人から言われてうれしいほめ言葉は?
作品を見て「かわいい」と言われること。 
Q. 急にお休みがとれたらどう過ごす?
きれいに並んでいるようで実はほこりなどがたまっている作品棚の整理。それと並行して断捨離を進めたい。
Q. 仕事以外で新しく始めたいことは?
ミニマリスト生活を始めたい。定期的に整理整頓したいという欲望の波がくるんです。 
Q. 10年後の自分は何をやっている?
水引を世界に広めている。
Q. 自分を動物に例えると?
ナマズ。本当は水槽の隅でジッとしていたいタイプです。でも好奇心は人一倍あるので、頑張って冒険していきたいです。

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PHOTO :
香西ジュン
取材 :
木佐貫久代
文 :
本庄真穂