食べ方には、その人の知性や品格が現れる……と、よくいわれますよね。そのため、日本人女性として正しい箸の使い方は、絶対にマスターしておきたいもの。

仕事の接待やお祝いの席など、改まった場でテーブルマナーを守るべきなのはもちろんのこと、職場のランチタイムや友人との会食といった機会にも、意外と箸使いはしっかり見られています。

「あの人って、実は育ちが悪そう……」なんて、周りの人から白い目で見られたくないですよね。そのために、箸のNGマナーについて、改めてこの機会にチェックしておきませんか? 今回はマナー講師の瀬尾姫民さんに、やってはいけない箸の使い方について、解説いただきました。

■食事中に絶対やってはいけない代表的な「嫌い箸」10選

日本では昔から“●●箸”といって、箸のマナー違反がいくつも定められています。そのなかから、日頃よく目にする代表的なものを、瀬尾さんに挙げていただきました。

(1)とき箸

箸先をこすり合わせる“とき箸”は、割り箸を使用する際に要注意な「嫌い箸」です。

「箸がきれいに割れず、箸先に木屑がついている場合に、そぎ落とそうとしてとぎ箸をやってしまう方を見かけます。木屑などが気になる場合は、手で取り除くようにしましょう」(瀬尾さん)

(2)握り箸

握り箸

お箸の使い方に自信がない人でも、「さすがにこんな持ち方はしないわ」と思える“握り箸”ですが、実は無意識にこれをやってしまうシチュエーションがあるのです!

「たとえば、お椀のフタを開けるなど、食べる以外の動作をするときですね。箸を置かないと、箸を握りこんだ状態でフタを開ける動作をやってしまいます。どんなに慌しい食事でも、食べる以外の動作をするときは、一旦、箸を置く心の余裕を忘れないようにしましょう」(瀬尾さん)

(3)指し箸

「人を箸で指す“指し箸”がよくないことは、みなさんよくご存知だと思うのですが、これも”握り箸”と同様、こまめに食卓に箸を置く習慣がないと、やってしまいがちです。箸を持ったまま会話をすると、身振り手振りのふとした瞬間に、箸先が会食者に向くおそれがあります。会話するときも、なるべく箸を置くようにしましょう」(瀬尾さん)

(4)迷い箸

どれから食べようか迷ってしまう?

何を食べようか迷って、料理の上であちこち箸を動かす“迷い箸”。みんなで食べる鍋料理や焼肉、あるいはフォーマルな会席料理でやってはいけないのはもちろんですが、意外とやってしまいがちなのは、お弁当を食べるとき。

「松花堂弁当や幕の内弁当など、おいしそうなおかずがたくさん入っている場合、つい“どれにしようかな……”と無意識に迷い箸をやってしまいがちですが、気持ちと一緒に箸をさ迷わせないようにしましょう。目的の食材にすっと真っ直ぐ箸を伸ばすほうが、所作が美しく見えます」(瀬尾さん)

(5)空箸

一旦、箸をつけたものの「やっぱりやーめた」と放してしまう“空箸”も、お箸のタブーのひとつ。

「お弁当など一人前の料理を食べる際にも、空箸はやってはいけません。また、鍋や大皿などシェアする料理で取り箸がなく自分のお箸で取る場合、衛生的にも空箸をするのは、マナー違反。箸をつけたものは責任をもって食べきるのが、和食でのルールです」(瀬尾さん)

(6)移り箸

ご飯とおかずは交互に食べるのが正解

和食でご飯に複数のおかずが付いている場合に、おかずを連続して食べる“移り箸”も、マナー違反とされています。

「和食では、ご飯とおかずを交互に食べましょう。まずはご飯を一口食べた後におかずを食べ、再びご飯を食べると、別のおかずの味を移さず、おいしくいただけるからです。つまり、移り箸がNGな理由には、一皿一皿を大事に味わう、という気持ちが込められていると言えます」(瀬尾さん)

(7)探り箸

中身を探っちゃダメ

好みのものを取ろうとして、料理を箸でかき分ける“探り箸”は、せっかくの盛り付けを台無しにしてしまう、残念な行為。料理人は見た目の美しさだけでなく、おいしく食べられる順番も考えて盛り付けを行っているので、その気持ちに応えるためにも、手前・上から食べるようにしましょう。

(8)涙箸

手皿はNG

箸先から汁をポタポタ垂らしてしまう“涙箸”。見た目的によいものではありませんが、”涙箸”と重ねてやりがちなマナー違反として、“手皿”が挙げられます。汁を受け止めようとして、料理の下に手を添える行為はNGです。

「手を添えたほうがお上品だ、と勘違いしている人が多いのですが、手皿はマナー違反にあたります。汁が垂れるのが気になる場合は、手で直接受け止めるのではなく、小さな取り皿を左手で持って受け止めるようにしましょう。お弁当の場合、仕切りになっている小さい器を、手に持ってもいいですよ。あるいは、懐紙を左手に持って受け止めるようにすれば、よりエレガントです」(瀬尾さん)

(9)もぎ箸、ねぶり箸

箸の先に米粒などがくっついてしまった場合、あなたはどのように対処していますか? 口でもぎ取る“もぎ箸”や、口の中で箸を舐めて取る“ねぶり箸”はやってはいけません。箸先の汚れが気になる場合は、懐紙で清めるようにしましょう。

(10)渡し箸

渡し箸

「定食屋さんなどカジュアルなお店の場合、箸置きがないために、箸を器の上に置く“渡し箸”をしてしまうかたがいるようです。ただ、カジュアルなお店であっても、できれば箸袋や懐紙を折って、即席の箸置きをつくり、”渡し箸”を避けるほうがよいかと思います」

■「嫌い箸」以外でやってはいけない箸のNGマナー5選

これまでにご紹介してきた”嫌い箸”以外にも、まだお箸にまつわるマナー違反があります。瀬尾さんに、以下の5シーンのようなお箸の使い方はNGと教えていただきました。

(1)割り箸を「縦」にしてテーブル上で割る

割り箸の正しい割り方は?

割り箸を縦にしてテーブル上で割ると、勢い余って手や箸を器や左右の人にぶつけるおそれがありますし、見た目的にもエレガントではありません。割り箸は横に寝かせて、自分の膝の上くらいの位置で割るようにしましょう。

(2)「片手で」箸を取り上げて、すぐに食べ始める

お腹が空いているからといって、箸を片手で取り上げてすぐに食べ始めると、粗雑に見えてしまいます。箸を取り上げる際は、“三手”を意識しましょう。右利きの人の場合、まずは右手で箸を上から持つ。次に、左手を添える。そして、右手を滑らせながら正しい持ち方をして左手を離す。この流れを身につければ、所作がよりスマートに見えるでしょう。

(3)大きいサイズのものを「切り分けずに」食べる

箸で持った食べ物を、一口で食べ切らずにかじるのは、マナー違反です。洋食でナイフとフォークを使う場合も同様ですが、和食で箸を使う場合も、大きいサイズのものは、一口サイズに切り分けてから口に運びましょう。

(4)食べかけを皿に戻す

タケノコやシイタケなど、箸で切り分けるのが難しい食材を一口で食べきれない場合は、箸で持ったままかじるのもやむをえません。ただし、食べかけを器に戻すのはNG! 箸で持ったまま二、三口目で食べきるようにしましょう。

(5)箸を右手だけで箸置きに置く

箸の上げ下げも美しく

箸は取り上げる際だけでなく、置く動作でも、片手だけで行うのは望ましくありません。持つときと逆の流れの“三手”を意識しましょう。右利きの人の場合、まずは、左手を添える。次に、右手を滑らせて箸を上から持つ。そして、左手を離して、右手でそっと箸置きに置く、という流れです。箸の上げ下げも美しく行いましょう。

長年使い慣れているはずの箸ですが、今回ご紹介したNGマナーをすべてクリアできている人は、意外と少ないのではないでしょうか?

「和食は“箸に始まり箸に終わる”といわれるくらい、箸のマナーが重要です。箸は日本だけでなく、アジアのさまざまな国々で使われていますが、これほど細かく多くのルールが定められているのは、日本独自の食文化だといえます。日本を訪れた外国人の方が箸の使い方に戸惑うこともありますが、せっかく日本に興味をもってくださった方のお手本になれるように、まずは私たちが正しい使い方を身につけたいものですね」(瀬尾さん)

品格ある大人の女性を目指して、ぜひ「お箸」を完璧に使いこなせるように心がけていきましょう!

※本記事での右、左は、右利きでお箸を使う人を想定した向きです

カトラリーのNGマナー

瀬尾姫民さん
マナー講師
(せお ひさみ)Seocolor Academy代表。一般社団法人日本プロトコール&マナーズ協会認定サロン。1993年イメージコンサルタント資格を取得。2005年Seocolor Academyを設立。カラー、ファッション、ブライダル、プロトコール&マナーの分野において個人及び企業向けコンサルティング、セミナー、研修、育成を行う。ホテルナゴヤキャッスル主催キャッスルアカデミー「トータルビューティーレッスン」や主催するエレガントマナー講座、和の作法&テーブルマナーレッスンも毎回キャンセル待ちと好評。ブライダルやデパートイベントのプロデュース、TV出演、人気女性誌での掲載など多分野で活躍する美のスペシャリスト。『なごやの冠婚葬祭』監修。著書に『お食事から身につける美しい日常』がある。
Seocolor Academy
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
中田綾美