日々の疲れを洗い流し、心身共にリフレッシュできる温泉旅。天然資源である温泉はその土地ごとの個性があり、ただ体が温まるだけでなく、全身の凝りがほぐれるのを感じられたり美肌に近づけたりなど、普段の入浴では得られないさまざまな恩恵をもたらしてくれます。

そうした温泉のポテンシャルをしっかりと実感できる中部・北陸の名宿を、温泉ジャーナリストの植竹深雪さんがピックアップ。今回ご紹介するのは、岐阜県奥飛騨温泉郷・福地温泉にある「元湯 孫九郎」です。

植竹深雪さん
温泉ジャーナリスト
(うえたけ みゆき)全国各地の3000スポット以上を巡っている温泉愛好家。フリーアナウンサー、温泉ジャーナリストとして、テレビ番組をはじめ、さまざまなメディアで活躍中。著書に『からだがよろこぶ! ぬる湯温泉ナビ』(辰巳出版)がある。
公式サイト

森の中で美人の湯三昧!内湯と外湯で異なる泉質を満喫する

岐阜県北部の福地温泉は、山間にひっそりと佇む静かな温泉地。その歴史は古く、開湯1300年とも伝えられます。その福地温泉にある「元湯 孫九郎」は、奥飛騨でも有数の湯量を誇る自家源泉の宿。最大の魅力は、4本もの自家専用泉を所有し、内湯と露天風呂で異なる泉質を楽しめるという贅沢な環境です。源泉の温度は非常に高温ですが加水は極力行わず、さまざまな工夫で適温に調整していると植竹さんは話します。

外観
外観。
ロビー
ロビー。

「内風呂の泉質はナトリウム-炭酸水素塩泉。宿の主力源泉である『帝の湯4号泉』を源泉かけ流しで浴槽に供給しています。源泉は80度を超える高温ですが、独自の熱交換システムで適温にするこだわりの湯づかいが素晴らしく、源泉100%ならではの酸化還元力の高さで、疲労回復・老化抑制効果が期待できます。また、県の厳しい検査をクリアして飲泉の許可を得ており、飲用して温泉の恵みを享受できるのも醍醐味です。

さらに、こちらの内風呂では、温泉のpHが弱酸性で肌や髪を整えるのに理想的な水素イオン濃度であることを生かし、温泉水で髪を洗える“髪洗いの湯”というブースがあるのもユニーク。弱酸性の温泉で髪を洗うことで頭皮のケアができ、髪の指どおりがよくなったように感じられました」(植竹さん)

内風呂
内風呂。
髪洗いの湯
髪洗いの湯。

「一方、露天風呂では高温の『帝の湯6号泉』と低温の『帝の湯5号泉』の2本の源泉をブレンド。湧きたては無色透明ですが、湯の成分が反応し、日によってにごり湯に変化することもあるのが特徴です。色の変化は季節や天候などさまざまな自然条件に左右されるため、その日にどんな色の湯に出合えるのかはまさに一期一会。森に囲まれたような雰囲気も非日常感たっぷりで、成分が複雑にミックスされた美肌の湯に癒されました」(植竹さん)

なお、露天風呂は本来は源泉かけ流しですが、令和7年6月以降、低温の「帝の湯5号泉」の湯量の減少により、井戸水による加水調整を行っているそう。また、通常よりもにごりにくく無色透明に見える日が多くなっているとのことです。

蒼湯
露天風呂。
中風呂
露天風呂に併設された中風呂。

大浴場のほか、内湯と露天風呂を備えた貸切風呂も。内鍵式・予約不要で、空いていればいつでも気軽に入浴できるスタイルがゲストに好評です。大谷石貼りの内湯も、木々に囲まれた空間に岩を配した露天風呂もそれぞれ個性があり、まるで小さな温泉宿を独占しているかのよう。川のせせらぎや風にそよぐ木々の音に耳を澄ませながら湯に浸かれば、都会の喧騒を忘れ、心までほぐれていくのを実感できるでしょう。

貸切の内湯
貸切の内湯。
貸切露天風呂。
貸切の露天風呂。
音泉リビングパラゴン
湯上りに寛げる音泉リビングパラゴン。“温泉浴”の後に“音泉浴”に浸ってほしい…との思いが込められているとのこと。

地の食材が紡ぐ会席料理で奥飛騨の文化を味わう

食事処
食事処。

地域の食材を生かした料理を味わうのも湯旅の魅力のひとつ。地物の山菜や川魚などご当地の旬を取り入れた会席料理は、素材の旨味を引き出す繊細な味付けで、見た目にも美しい仕上がりです。四季折々の食材を使うため献立はその時々で変わりますが、なかでも人気なのは飛騨牛のしゃぶしゃぶや五平餅、朴葉味噌など飛騨の食文化を感じられるメニューです。

夕食一例
夕食一例。

また、朝食では源泉で炊いたおかゆが登場。胃薬に似た成分を含む源泉仕込みのおかゆをゆっくりいただくことで、体の内側からヘルシーになれるような感覚で旅の締めくくりを迎えられます。

温泉粥
温泉粥。

以上、福地温泉「元湯 孫九郎」をご紹介しました。内湯と露天風呂で異なる泉質の自家源泉の湯を堪能する贅沢な湯旅時間を過ごしたい人は、次の旅先候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか?

問い合わせ先

  • 元湯 孫九郎
  • 住所/岐阜県高山市奥飛騨温泉郷福地1005
    客室数/全21室
    料金/朝夕2食付き 2名1室¥24,750~(税込)
  • TEL:0578-89-2231

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この記事の執筆者
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WRITING :
中田綾美
EDIT :
谷 花生(Precious.jp)