日々の疲れを洗い流し、心身共にリフレッシュできる温泉旅。天然資源である温泉はその土地ごとの個性があり、ただ体が温まるだけでなく、全身の凝りがほぐれるのを感じられたり美肌に近づけたりなど、普段の入浴では得られないさまざまな恩恵をもたらしてくれます。
そうした温泉のポテンシャルをしっかりと実感できる中部・北陸の名宿を、温泉ジャーナリストの植竹深雪さんがピックアップ。今回ご紹介するのは、新潟県・岩室温泉にある「割烹旅館 松屋」です。

公式サイト
エリア屈指の濃厚さ!「黒湯」を二種の貸切風呂で堪能する
新潟市の奥座敷として知られる岩室温泉は、開湯から300年以上の歴史を誇る名湯。2024年の温泉総選挙では“おもてなし部門1位”に輝き、極上の湯と心温まるサービスが全国の温泉ファンから高く評価されています。
その岩室温泉で最古の伝統を守り続けるのが「割烹旅館 松屋」です。総部屋数4室の小さな家族経営の旅館で、「ゲストに静かに寛いでほしい」との思いから、予約は1日3組限定。きめ細やかなおもてなしにも癒される隠れ家の魅力について、植竹さんはこう話します。


「岩室温泉といえば、全国的にも珍しい黒湯が秀逸。湧きたては無色透明ですが、硫黄と鉄分が結合した硫化鉄の黒い湯の花が浴槽に沈み、湯が黒く染まっているかのように見えます。
その岩室温泉界隈でも、『割烹旅館 松屋』は、黒湯の濃厚さが格別。源泉かけ流しの貸切風呂が2か所あり、浴室に入った瞬間、まるで墨汁のようなビジュアルに目を奪われます」(植竹さん)

「泉質は、含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物泉。見た目のインパクトが大きいだけでなく、湯力の強さも感じられ、浴槽に浸かるとツルツルスベスベとした心地よい浴感の湯が肌にしっとりとよくなじみます。ほどなく額に汗がにじんでくるので浴槽を出たり入ったり、プライベートな空間でしみじみと湯の良さを味わえるのが至福です。湯上りには体が芯から温まり、肌も潤いで満たすことができたのを実感できました」(植竹さん)

大小2つの貸切風呂のうち、広いほうの「霊雁湯(れいがんのゆ)」は、大きな窓越しに庭の木々を眺め、季節の移ろいを感じられる環境。朝は柔らかな光に包まれ、夜は静寂のなかで虫の声に耳を傾けながら心安らぐひとときを過ごすことができます。一方、小さいほうの「冬妻湯(ひよつまのゆ)」は、こぢんまりとした浴槽で、フレッシュな黒湯とじっくり向き合うのに好適です。
2つの貸切風呂は予約不要で空いていればいつでも利用可能。開放的な「霊雁湯」とほっこり寛げる「冬妻湯」で黒湯の入り比べができるのは「割烹旅館 松屋」ならではの贅沢だといえるでしょう。

割烹旅館の心意気!会席コース料理で旬と地酒を味わい尽くす
夕食は、割烹旅館の名にふさわしい繊細な会席料理。京都で修業を積んだ料理長が、日本海で水揚げされる旬魚や越後の里山で育まれる山の幸など、素材の持ち味を引き出しつつ一皿一皿を丹精込めて仕上げます。食事は部屋食で、女将さんが丁寧に配膳してくれるのも小規模旅館ならでは。レアな地酒や限定酒など日本酒のラインナップも豊富で、女将さんに相談しながら料理との相性や自分の好みに合う一杯を選ぶことも可能です。

「新鮮なお造りや揚げたての天ぷら、シメの炊き込みご飯に至るまで、料理が逸品ぞろいなのはもちろんのこと、黒湯にちなんだスイーツも印象的です。おつきのお菓子は黒ゴマを練り込んだ“ゆべし(柚子を使った餅菓子の一種)”、夕食のデザートは黒ゴマプリンと、温泉に浸かるだけでなく、視覚や味覚でも黒湯の世界観を楽しめました」(植竹さん)

以上、新潟・岩室温泉「割烹旅館 松屋」をご紹介しました。見た目的にインパクトがありつつ、肌にしっとりとなじみポカポカと温まる黒湯は、温泉好きなら是が非でも入浴しておきたい名湯。これから秋・冬に向けて、温泉がますます恋しく季節に向けて、旅先候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか?
問い合わせ先
- 割烹旅館 松屋
- 住所/新潟県新潟市西蒲区岩室温泉605
客室数/全4室 ※宿泊は1日3組限定
料金/朝夕2食付き 2名1室¥19,580~(税込) - TEL:0256-82-5120
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 中田綾美
- EDIT :
- 谷 花生(Precious.jp)