友達が『投資でお金が増えた』と話しているのを聞いて、私もやってみたいと思ったんです

【ケーススタディ】ナオコさん(53歳)は、夫のカズヒロさん(55歳)の海外転勤で、30代の頃に7年間ほど、イタリアのナポリで暮らしていました。そのときに覚えたのが、ナポリの家庭料理です。

帰国後、友人たちにふるまったマンマの味が評判となり、次々と「イタリア料理を教えて!」という声がかかるように。それが口コミで広がり、自宅マンションで少人数の料理教室を開くほどになりました。

カズヒロさんも、ナオコさんの料理教室には協力的で、5年前に念願のオープンキッチン付きのマンションに買い換えることに。

「前のマンションを売却して得たお金に、手持ちの貯蓄を加えて新しいマンションを購入しましたが、少しだけ住宅ローンも組みました。あと5年で終わる予定なので、住宅ローンのことはそれほど心配していませんが、問題は私たちの老後資金です」(ナオコさん)

貯蓄から投資を検討

現在、手持ちの貯蓄は1000万円ほど。雇用継続すれば、カズヒロさんは65歳まで働けますが、定年までにできるだけ老後資金を増やしておきたい、という希望があります。幸い、一人息子のソウイチさん(28歳)が独立して家を出たので、支出は減って、銀行の口座残高は少しずつ増えるようになりました。そこで、ナオコさんの頭に浮かんだのが「投資」でした。

「今は、銀行にお金を預けておいても、全然、利息がつかないでしょう。友達が『投資でお金が増えた』と話しているのを聞いて、私もやってみたいと思ったんです。でも、夫婦ともにこれまで投資らしい投資はしたことがありません。こんな私達でも、これから投資を始められるでしょうか?」(ナオコさん)

投資をすると、株式市場や債券市場の動向によって、預けたお金以上のリターンが期待できることがあるので、今のようなマイナス金利の時代には魅力的に映ります。ただし、預金や貯金と違って、預けたお金の元本は保証されません。運用成績しだいでは、元本が大きく減ってしまうこともあるので、投資を始める前には商品の特性をよく理解したうえで、始める必要があります。

とはいえ、ナオコさんのように投資の初心者の場合、「何に注意をすればいいのか」「何から始めればいいのか」が、さっぱりわからないというのが実情ではないでしょうか。そこで今回は、一から投資を始めるときの注意点、商品の選び方などについて、ファイナンシャル・プランナーの資格をもち、投資に詳しいフリーライターの高橋晴美さんにアドバイスしていただきます。

日銀のマイナス金利によって、一般の人の資産形成にも変化が

マイナス金利によって、投資が促されている状態に

モノがたくさん売れたり、企業が新たな事業のための工場を建てたりして、人々の間をたくさんのお金が循環すると景気はよくなります。

そうした経済環境をつくるために、日本銀行(日銀)が、2016年1月旬に景気刺激策の最終手段として導入したのが「マイナス金利」です。

マイナス金利下では、銀行が日銀にお金を預けておくと元本が減ってしまいます。お金を減らしたくない銀行は、日銀からお金を引き上げて、企業に貸し付けたり、投資をしたりするので、市場にお金が出回りやすくなります。その結果、労働者の賃金も上がって、購買意欲も上がると考えられたのです。

その影響は、一般の人が銀行に預けるお金にも波及しており、マイナスにはならないものの、利息はまったくといっていいほどつきません。そのため、も「貯蓄から投資へ」という掛け声のもと、一般の人の間にも「投資をしなければいけない」という雰囲気が強くなっています。

とはいえ、投資にはリスクがつきもの。投資に詳しいフリーライターの高橋晴美さんは、「投資は、必ずしなければいけないわけではない」といいます。

「家族構成、貯蓄残高、控えているライフイベントなどによって、家計の状況は人それぞれです。貯蓄があっても、教育資金や住宅購入資金など、使い道が決まっているお金で投資をして、元本割れしてしまうと、ライフイベントをプラン通りに進められなくなる可能性があります。ですから、手持ちのお金、時期によっては、投資を控えたほうがよいケースもあります」(高橋さん)

また、お金に対する考え方も人それぞれです。「手持ち資金を絶対に減らしたくない」と考える人もいれば、「運用成績が悪い時期があっても、気長に待つことができる」という人もいます。

「自分が持っている投資商品の値動きが気になって、仕事が手につかなくなったり、ラジオから投資情報が流れてくるとドキドキしてしまうなど、投資をすることがストレスになる人もいます。投資以外にもお金を貯めることはできるので、無理することはありません」(高橋さん)

たとえば、家計を見直して月1万円ずつ余分に貯められるようになれば、年間12万円、10年では120万円のお金を残すことができます。家計費の節約でも、投資するのと同様の効果を得ることは可能なので、自分に合った方法でお金を増やすことを考えてみましょう。

税制優遇制度を利用すれば、節税しながら投資ができる

税制優遇のある投資商品を利用すると、非課税

ただし、ひと昔前と違って、公的な年金だけで老後資金を賄えるかというと、それは難しいと言わざるをえません。公的年金が破綻する可能性は、限りなくゼロに近いけれど、支給額がこれまでよりも減額されていくので、不足する老後資金は自分で用意する必要があるのです。そのため、国も個人の資産形成を後押しするために、投資をする人に対するさまざまな優遇税制を設けるようになっているのです。たとえば、以前、このコラムで紹介した「個人型確定拠出年金(iDeco)」もそのひとつ。掛け金、運用期間中の利息、年金受取時のすべてにおいて、税制優遇が受けられる仕組みになっています。

「節税」と「老後資金づくり」ができる、確定拠出年金の基本

通常、投資して得られた利益には、20.315%の所得税がかかります。つまり、投資をして10万円の利益がでた場合、約2万円の税金が差し引かれ、手元に残るのは約8万円になります。でも、国が後押しする税制優遇のある投資商品を利用すると非課税となり、10万円まるまる手にすることができるのです。

「優遇税制のある投資商品を使う人、使わない人の間には、将来の資産に大きな差が出る可能性があります。投資に興味があって、手持ち資金にも余裕のあるなら、有利な制度を利用しない手はありません」(高橋さん)

「投資を始めるときの5ポイント」長期・分散投資で安定的に運用を

それでは、ナオコさんのような初心者は、どのようなことに注意をすればいいのでしょうか。投資を始めるときの5つのポイントをまとめてみました。

投資を始める注意点5つ

■1:使い道の決まったお金で投資しない

投資商品は、株式や債券、不動産などでお金を運用します。運用期間中(お金を預けている最中)は、市場の動向によって評価額が変わり、最初に預けた元本より高くなることもあれば、下回って損することもあります。お金を使う時期に評価額が下回っていると、必要な資金を用意できない可能性があるので、教育資金や住宅取得資金、万一の医療費など使い道の決まったお金で投資をするのは、お勧めできません。

■2:生活費の1年分程度のお金もっておく

前述のとおり、投資にリスクはつきもの。万一、最初に預けたお金より、評価額が値下がりする期間があっても、慌てないで投資を続けるためには、生活に支障が出ないようにしておきたいもの。投資するときは、教育資金や住宅取得資金のほかに、生活費の1年分程度の預貯金を持ったうえで、余裕資金で行うようにしましょう。

■3:始めようと思ったときが吉日

評価額が安いときに投資を始めて、値上がりしたら売却すれば利益が出ます。そのため、「安くなったら投資を始めよう」と思うかもしれませんが、それではいつまでたっても投資は始められません。というのも、投資商品の「高い」「安い」は相対的なもので、歴史的に振り返ってはじめて評価できるものだからです。「安くなったら…」と思っていると、いつまでたっても投資ができません。「始めよう!」と思ったときが、投資の始め時です。

■4:積み立てで購入して「買い付け単価」を平均化する

投資商品の「高い」「安い」はあとから振り返ってはじめてわかるものですが、高い時にたくさん買ってしまうのは避けたいところです。そこで、毎月、同じ商品を、一定額ずつ積み立てで購入すると、投資商品の価格変動リスクを抑えて、買い付け価格を平均化することが可能になります。積み立てで購入すると、価格が安いときは買い付ける量が多くなり、価格が高いときは買い付ける量が少なくなるので、結果的に買い付け価格が平均化されていくのです。これを「ドルコスト平均法」といいます。値動きリスクを回避しながら、安定的に投資をしていくための有効な手段となっているので、投資の初心者は積み立てで始めるのがお勧めです。

■5:始めたら「日々の値動きに一喜一憂しない」で長く続ける

投資商品は、値上がりする日もあれば、連続して値下がりするときもあります。投資を始めると、誰だって自分が購入した商品の価格が気になりますが、その都度、価格に一喜一憂すると精神的に消耗してしまいます。ちょっと下がると気になって、すぐに売却してしまうと、せっかくのドルコスト平均法も効果を発揮できません。投資を始めたら、日々の値動きには一喜一憂せず、ドーンと構えておきたいもの。そのためにも、投資は生活に支障の出ない余裕資金で行うのが鉄則なのです。

今、始めるなら税制優遇が受けられる「つみたてNISA」がイチ押し

初心者はつみたてNISAから

このように、余裕資金の一部を使って、ひとつの商品を一定額ずつ積み立てで購入していくと、投資につきものの価格変動リスクを抑えながら、安定的にお金を増やしていける可能性が高くなるのです。こうした投資をするときに最適なのが、税制優遇の受けられる「つみたてNISA(ニーサ)」を使って、「投資信託」を積み立てる方法です。

※NISA=Nippon Individual Savings Account、金融商品を扱う口座の税金が非課税になる仕組み

投資信託は、投資家から集めたお金をひとまとめにして、株式や債券などで運用して、その利益をみんなで分配する商品です。

「複数の株式や債券に分散投資できるので、リスクを抑えながらリターンを狙うことが可能になります」(高橋さん)

つみたてNISAは、国民が資産形成を支援するための制度で、利益に対する税金がかかりません。手数料が安く、長期保有に向いている投資信託などを数千円から積み立てで購入できるので、ナオコさんのような投資の初心者でも利用しやすくなっています。

 では、つみたてNISAは、どのようにして申し込めばいいのでしょうか? 次回は、つみたてNISAの具体的な内容、投資信託の選び方、お得な購入先などについて見ていきたいと思います。

高橋晴美さん
フリーライター/ファイナンシャル・プランナー(AFP)
(たかはしはるみ)編集プロダクション勤務を経て、1997年にフリーライターとして独立。マネー記事を数多く手掛けており、投資信託、資産形成、住宅ローン学などに詳しい。ビジネス誌「プレジデント」などに記事を寄稿するほか、多くの専門家の著書の執筆協力をしている。
この記事の執筆者
1968年、千葉県生まれ。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。医療や年金などの社会保障制度、家計の節約など身の回りのお金の情報について、新聞や雑誌、ネットサイトに寄稿。おもな著書に「読むだけで200万円節約できる!医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30」(ダイヤモンド社)がある。