おにぎりは日本人にとってソウルフード。好きな具をめぐって討論されるほどの国民食です。今回はそんなおにぎりの美味しい食べ方や、つくり方、おしゃれなレシピをご紹介。おにぎり協会代表理事の中村祐介さん、「おにぎり ぼんご」代表の右近由美子さん、料理家の寺井幸也さんのお三方に教えていただきました。
【目次】
おにぎりを最高に美味しく食べたいなら、5つの条件を満たしていること
条件1:自分好みの系統を知ってから「お米の銘柄」を選ぶ
最高のおにぎりは、やはりお米の銘柄にこだわるところから始まります。ざっくりとした違いは、あっさり系・もちもち系という系統と、やわらかい・硬いという硬軟。例えば、あっさり系でやわらかいなら、ササニシキ。もちもち系でやわらかいなら、ゆめぴりかがベター。後者はしっとりとした粒感が特徴で、口の中に入れると甘味の広がりがあります。
おいしいおにぎりと出合うためには、まず自分好みのお米のタイプを知ること。この行程が、お店でおにぎりを選ぶときも楽しめますし、自宅でつくるときのポイントにもなります。
まずは、これまでに食べたお米のなかで、最も好みだったものを思い出しましょう。それからおにぎりで使われているお米をチェックするようにするのが、さらにおいしく食べるためのコツです。最近では、玄米や雑穀米も人気。白米に限らず、「おいしい!」と思ったお米の種類を、振り返ってみてください。
気をつけてほしいのは、具材との相性。あっさり系のお米が好きな方は、そこに味が濃いものをいれてしまうと、食べたときのバランスが悪くなってしまいます。自分の味の好みから具材を導き出すことが大切です。また、その具材の機能性にも注目しましょう。例えば梅干しに多く含まれるクエン酸と塩分は、疲れたカラダを癒やす効果が期待できます。
普段はあっさり味のお米が好きな人は、具材もなるべく味が薄めのものがよさそうです。例えば、ササニシキのおにぎりなら、鮭やツナのようなパンチの弱い具材がいいでしょう。(中村さん)
条件2:「優しく握られた」おにぎりを選ぶ
自分でおにぎりをつくるときは、炊飯や握り方でおいしさが変わります。お店で買うときは優しく握ったものを選ぶと、最高のおにぎりを味わえるでしょう。
条件3:できあがりから4時間以内に食べる
手づくりのおにぎりであれば、できあがりから4時間以内に食べてください。食べるタイミングによって、具材の選び方は少し変わります。例えば、ツナマヨなど油分があるものは、時間が経つとおにぎりの形が崩れてしまうほか、傷みやすいなどの問題があります。こうした具材のおにぎりは、すぐ食べるときに向いています。一方、古くから愛される梅、鮭、おかか、昆布などは、4時間後でもおにぎりは崩れず、おいしく食べられます。
どうしてもツナがいい場合には、油分をしっかり切ってマヨネーズは控えめにし、レモン汁や黒こしょうを効かせてください。おにぎりの具材は油分が大敵で、塩と酸が豊富なものがおいしいです。(中村さん)
条件4:まずは形を愛で、それから「粒感を確認しながら」食べる
多くの方が知っている三角型は、江戸時代になってから関東地方で完成されました。五街道が整備され、旅人が携行しやすいように改良されたといわれています。東北地方などでは円盤型で、これは寒い地方ゆえに火をあてやすく、表面積を多く取っていることが考えられます。
関西地方で多く見られる俵型は、江戸時代、町人文化が花開いた大坂(後に大阪)で幕の内弁当に入っていたことから、それがおにぎりへと変わってなっていったようです。味付け海苔が巻きやすいからという理由もあります。丸型は中部地方を中心に、中国・四国・九州と全国に広く分布しています。江戸時代、野菜の残ったものを混ぜ込んだ『かて飯』を食べることが多かったのですが、そのかて飯として、握りやすい形ともいわれています。
おにぎりの形を理解したら、まずはその形を愛でること。その上で、お米がしっかり粒感を出せているかをチェックして、ひと口食べます。口に入れてお米がほろほろと、ほどけるほどの口ほどけ感のあるおにぎりは、おいしいおにぎりと言えます。さらに、具材とお米のバランスも楽しんで。
海苔はパリパリ派としっとり派の2大派閥がありますが、パリパリ派が好きな方は、海苔のついていないおにぎりを買って、海苔をあとづけするのもおすすめの食べ方です。また、しっとりした海苔がかみ切りづらいという場合は、爪楊枝で海苔に一定の間隔で穴を開けておくと、噛み切りやすくなります。(中村さん)
条件5:お弁当として持っていくときは「木製容器」に入れる
お弁当におにぎりを入れるときは、お弁当箱にこだわりをもつと、おいしさに違いが出ます。水分の逃げ場がなく密閉性の高いプラスチック製だと、おにぎりだけでなく、お弁当の中身が傷みやすくなります。
お弁当が傷む主な理由は、水分と高い温度なので、夏場にはプラスチック製のお弁当箱には、保冷剤を添えるように気をつけましょう。外で食べるときのお弁当におすすめなのは、少し高価ですが木製の容器です。木材だと適度な隙間があり、余計な水分を吸収してくれます。
また、おにぎりはできたてのおにぎりをラップで包むと余計な水分がこもり、傷む原因になります。少し隙間をつくったり、粗熱をしっかり取ってから包むほうが、傷みにくくなります。冷めてしまったおにぎりは、家であれば”焼きおにぎり”にして食べるのも適しています。(中村さん)
\お話を伺ったのは・・・/
一般社団法人おにぎり協会
「おにぎり」を最高においしく食べるための5つの条件|米の銘柄、優しい握り方、できて4時間以内に食べる、木製容器に入れるなど
専門店に聞いた「究極のおにぎり」のつくり方
ごはんのこだわりポイントは 「硬さ」と「温度」の2つ
■1:ごはんは硬め!浸水時間は長めに、水分は控え目に
おにぎりにはやや硬めのごはんを使います。やわらかすぎるごはんはお米が潰れやすく、本来のおいしさを十分に引き出せないためです。
硬めのごはんを炊くときには「浸水時間は長めに、水分はいつもご家庭で炊く時よりも気持ち控え目に」することがポイント。単に水分を少なくするだけでは、時間が経つにつれておいしさが失われてしまいます。そこで、浸水時間を1〜2時間程度と長めにすることで、硬めでもおいしさをキープしたご飯が炊けます。また前の晩に研いで水分を切ってから浸水し、冷蔵庫でひと晩冷やしてから炊くと、さらにおいしいご飯に仕上がります。
■2:炊き上がってから5分ほど冷ます
硬さに加えて、ごはんの温度も気をつけたいポイントです。炊きたてアツアツではなく、炊飯器から取り出して5分ほど冷まし、60℃くらいになったごはんを握りましょう。冷ますことでお米が程よく縮み空気が入る隙間ができ、ホロホロとした口当たりのよいおにぎりになります。
おにぎりは「握らない」! 優しく、軽く、3回押さえる程度でOK
■1:茶碗にラップをのせる
■2:塩水(または酢水)で手を濡らす
■3:ひと握りのご飯を手に取り茶碗へ。具材はたっぷり詰める
どこからでもおいしく食べられように、具材はたっぷり詰めるのがポイント。
■4:少なめのご飯を手に取り、具材に蓋をするように被せる
■5:ラップを巾着のように絞って丸くする(※まだ握らないこと!)
■6:指に塩を付けて、手のひらになじませる
■7:握るのは「3回」だけ! 軽く押さえる程度の力加減で
握るときのポイントは「握らないこと」。つまり、「軽く押さえる程度の力加減」で、3回形を整える程度にご飯をまとめるくらいで十分。このときラップではなく手で握ることで、水分が程よく逃げて水っぽくなるのを防いでくれます。
■8:海苔を付ける
海苔の片側におにぎりをのせたら、反対側を持ち上げてそっとあてるだけで海苔は付きます。形を整えるように、少しだけキュッと力を入れて押さえてあげましょう。
■9:できあがり
お米の粒感が際立った、ふわっとしたおにぎりが完成。たった3回握っただけですが、海苔が支えてくれるので型崩れも起こりません。ひと口食べてみれば、今までのおにぎりとの違いにきっと驚くはず!
おにぎりにぴったりな具材・お米・海苔・塩の選び方
■1:具材は「持ち歩くなら塩分の多いもの。すぐ食べるなら好きなもの」を
温かいご飯に入れるため、どうしても生モノは傷みやすくなります。肉などのタンパク質系も実は傷みやすい具材。生野菜や汁気の多いものは傷みやすいだけでなく、水分でおにぎりが崩れてしまうのでNGです。
持ち運びするなら塩分の多いシャケやタラコ、梅干し、煮昆布などがおすすめ。しかし、つくってからすぐに食べるならバリエーション豊かな具材に挑戦できます。
■2:お米は「硬めに炊いても、冷めてもおいしいもの」を
おにぎりづくりにおいて、ご飯の硬さは重要なポイントです。そのためお米は硬めに炊いても、冷めてもおいしいものを選ぶのがベスト。
■3:海苔は「歯切れのよいもの」を
厚過ぎず薄過ぎない、おにぎりに巻いてしっとりしても歯切れのよい海苔が理想。
■4:塩は「お米の味を生かす、クセないもの」を
お米の味を生かすため、塩はとにかくクセのないものという基準で選びましょう。
\お話を伺ったのは・・・/
いつもの「おにぎり」をもっと美味しく! 専門店に聞いた「究極のおにぎり」のつくり方
いつもの「おにぎり」が喜ばれる!彩り豊かな「焼きおにぎり」のつくり方
彩り豊かな「焼きおにぎり(3種)」のつくり方
■コーンバター醤油の焼きおにぎり(2人分)
・とうもろこし 1/2本(コーン缶で代用可)
・実山椒 10g
・バター 10g
・醤油 小さじ1
・塩、こしょう 各少々
・白ご飯 適量
(1)とうもろこしは芯から実を切り落とす。フライパンにバター、とうもろこし、実山椒を入れて弱〜中火で炒める。とうもろこしに火が通ってきたら醤油、塩こしょうを加えてさらに炒めて味をなじませる。
(2)ボウルに白ご飯、(1)を入れて混ぜ合わせる。手に少量の水をつけながら好みの形に握っていく。
■鮭とゆかりの焼きおにぎり(2人分)
・鮭の切り身 1切れ(鮭フレークで代用可)
・ゆかり 5g
・ごま油 大さじ1
・白ご飯 適量
・味噌 大さじ2(おにぎりを焼くときに使用)
(1)鮭を魚焼きグリルなどで焼いてほぐす。
(2)ボウルに白ご飯、(1)、ゆかり、ごま油を入れて混ぜ合わせる。手に少量の水をつけながら好みの形に握っていく。
■大葉と塩昆布の焼きおにぎり(2人分)
・大葉 4枚
・塩昆布 8g
・いりごま 適量
・ごま油 大さじ1
・白ご飯 適量
・醤油 適量(おにぎりを焼く時に使用)
(1)大葉は、半分はみじん切り、半分はせん切りにする。
(2)ボウルに白ご飯、(1)でみじん切りにした大葉、塩昆布、いりごま、ごま油を入れて混ぜ合わせる。手に少量の水をつけながら好みの形に握っていく。
■焼きおにぎり3種のつくり方
(1)焼き網やトースターなどに具材を混ぜ合わせた焼きおにぎり3種を並べる(今回はアラジンの「グラファイトグリラー」を使用)。「コーンのバター醤油の焼きおにぎり」はそのまま焼く。綺麗な焦げ目がついてきたらひっくり返し、同様に焼く。
(2)「鮭とゆかりの焼きおにぎり」には味噌を塗る。綺麗な焦げ目が付いて来たらひっくり返して味噌を塗り、同様に焼く。
(3)「大葉と塩昆布の焼きおにぎり」には醤油を塗る。いい焦げ目がついてきたらひっくり返し、醤油を塗り同様に焼く。
(4)表面に焦げ目がついてきたら器に盛り、「大葉と塩昆布の焼きおにぎり」にはせん切りした大葉を乗せて完成。
\お話を伺ったのは・・・/
いつもの「おにぎり」が喜ばれ料理に!彩り豊かな「焼きおにぎり」のつくり方