年齢を重ねると同時に、増えてくる白髪。白髪染めをする場合、どうしても髪全体を暗めの色味にしないとキレイに染まらない、そう思っていませんか?

実際、色を均一に艶やかに染めるには、白髪染めを活用して、やや重めの色味で染めるのが有効的です。しかし、「髪色を明るく保ったまま、キレイに白髪を染めたい」と考えている人も多いはず。

そこで今回は、青山の美容室「サンバレー」の代表を務める美容師の渋谷謙太郎さんに、明るさを残したまま白髪を上手に染める方法を、実際に見せていただきました。20年以上、8万人以上の女性の髪を手がけた渋谷さんによる、現段階での最良の「白髪対策」とは?

渋谷謙太郎さん
ヘアサロン「SUN VALLEY」代表
(しぶや けんたろう)青山の有名美容室で「予約の取れない美容師」として活躍後、当時はまだ小さかった美容室「air(エアー)」に参画。13年7か月の在籍期間中、東京都内2店舗から全国規模の大型ヘアサロンへと育て上げ、銀座や青山、大宮などの各店で多数の顧客を抱えるスタイリストとして活躍。執行役員ディレクターとして後進の育成にも力を注ぐ。20年以上のスタイリスト経験の中で、常に新しいものに挑戦し続けるスタイルで、多くのマスコミ、メディア注目され、モデルやタレントからも絶大な支持を集めている。2018年5月に自身が代表のヘアサロン「SUN VALLEY(サンバレー)」を表参道に設立。

白髪染めで「明るい色」は出しづらい?

【写真A】白髪の比率が50%(左)、20%(右)の毛束サンプルに、実際に薬剤を用いて説明します。こちらは暗めのトーンの白髪染めを用いた場合。白髪は隠れるものの、暗く沈みがちになってしまう
【写真A】白髪の比率が50%(左)、20%(右)の毛束サンプルに、実際に薬剤を用いて説明します。こちらは暗めのトーンの白髪染めを用いた場合。白髪は隠れるものの、暗く沈みがちになってしまう
写真B】白髪染めで明るさを意識すると、白髪が浮いて見えてしまうことも。白髪の比率が50%(左)、20%(右)の毛束サンプルを使用
写真B】白髪染めで明るさを意識すると、白髪が浮いて見えてしまうことも。白髪の比率が50%(左)、20%(右)の毛束サンプルを使用

--渋谷さん、今回もよろしくお願いいたします! 前回記事では「白髪染めで明るい色を出すのは難しい」、というお話がありましたよね。

【前回記事:カリスマ美容師に教わる「白髪染めへの切り替えタイミング」とキレイな染め方のコツとは?】

渋谷謙太郎さん(以下、渋谷)「よろしくお願いします! そうですね。特にベージュなどの寒色系は顕著です。

写真AとBを見てもらうとわかりやすいのですが、どちらも『寒色系の白髪染め』で染めたものです。上の写真Aがやや暗め、下の写真Bがより明るめのトーンで染めたものですね。

暗めのトーンだと、白髪はキレイに隠れるものの、多くの人がイメージする明るめのベージュが出づらく、暗く沈んだ印象になってしまい、明るいトーンだと、明るさは出るものの、今度は白髪が浮いてしまうんですよね」

--多くの人が、ファッションカラー(白髪用でない髪色染め)から白髪染めに切り替えるのにやや躊躇してしまうのは、明るい色にできない、というところが大きいですよね。

渋谷「どうしても白髪染めだけでキレイに染めようとすると、重めの色になってしまいますからね。ただ、明るさをキレイに残しつつ、寒色系の色味に染める方法もあります。今回は、実際にウィッグを使ってその方法を紹介しますね」

白髪を上手に明るく!その方法とは?

今回使用したのは白髪の割合が50%のウィッグ。かなり白髪が浮いて見える
今回使用したのは白髪の割合が50%のウィッグ。かなり白髪が浮いて見える

今回用意したのは髪全体の50%が白髪のウィッグ。何も施さない状態だと、かなり白髪が目立つ状態です。

渋谷「髪色を明るく、なおかつ白髪を上手に浮かせない状態で艶っぽく仕上げるために、ブリーチとヘアマニキュアを使用します。

今回は違いがわかりやすいよう、ヘアマニキュアのみで染めたパターンもお見せしますね」

ブリーチ剤でハイライトを入れる

使用するのは白髪染めではなくブリーチ剤!
使用するのは白髪染めではなくブリーチ剤!

まず、等間隔に細い毛束を取り、ブリーチでハイライトを入れていきます。

渋谷「まずは、地毛の明るさをブリーチで調整していきます。こうすることで、地毛と白髪の色味をなじませます。

ブリーチ剤で頭皮が荒れてしまうことを懸念する人も多いと思いますが、ハイライトの場合は根元を数ミリ浮かせた状態で薬剤を乗せていくので、肌が弱い人にもおすすめの方法ですね」

洗い流すとハイライト部分と白髪部分の色がなじむ

ハイライトを入れただけでも髪の印象がグッと変化
ハイライトを入れただけでも髪の印象がグッと変化

ブリーチ剤を湿布し、十数分おいたのち洗い流した状態がこちら。

一番始めの何もしていない状態に比べると、ハイライトの部分と白髪の部分の色がなじみ、白髪が浮いているような違和感がなくなっています。

寒色系のヘアマニュキアを塗布

ヘアマニキュアを使用することでダメージも最小限に
ヘアマニキュアを使用することでダメージも最小限に

ハイライトを入れたら、次は全体に寒色系の色味のヘアマニキュアを乗せていきます。

渋谷「地毛と白髪を事前になじませることで、キレイに寒色系の色が入るようになります。ここで通常のアルカリや酸性のヘアカラーを使用することもできますが、一旦ブリーチでハイライトを入れているため、髪の傷みが気になる人はヘアマニキュアがおすすめですね。

ヘアマニキュアは髪の色を抜かずに色を入れるだけなので、傷みが抑えてツヤを出すことができます」

ヘアマニュキアを洗い流すと、髪色に立体感が出る

白髪染めを使用しなくても、白髪がほとんど目立たない状態に!
白髪染めを使用しなくても、白髪がほとんど目立たない状態に!

ヘアマニキュアを洗い流すと、白髪と地毛の部分が違和感なくキレイに仕上がり、髪色に立体感も出ています。

横の染めていない部分と比べると歴然の差ですね。

ブリーチでハイライトを入れず、寒色系のヘアマニュキアのみで染めると白髪が浮いて見える

黒髪部分がキレイに染まっている分、逆に白髪部分が目立ってしまう
黒髪部分がキレイに染まっている分、逆に白髪部分が目立ってしまう

一方、これはハイライトを入れず、白髪の混じった髪を寒色系のヘアマニキュアのみで染めたもの。

地毛の部分はキレイに寒色系の色味が出ていますが、全体的に地毛の部分がベタッとした印象になり、白髪が浮いて見えてしまいます。

【写真C】ハイライト→ヘアマニュキアをした髪。白髪が気になりがちな毛先もしっかりと色が入っている
【写真C】ハイライト→ヘアマニュキアをした髪。白髪が気になりがちな毛先もしっかりと色が入っている
【写真D】ヘアマニキュアのみを塗布した髪。毛先に行くにしたがい、より白髪の浮きが目立ってしまう
【写真D】ヘアマニキュアのみを塗布した髪。毛先に行くにしたがい、より白髪の浮きが目立ってしまう

特に毛先の部分を比べてみると、その差は歴然。

上の写真Cの先にハイライトを入れたものは、ほとんど白髪が目立たず華やかな印象であるのに対し、下の写真Dのヘアマニキュアのみのものは、毛先に行くほど白髪が目立ち、ややくたびれた印象になってしまっています。

白髪を染めるとなると、一色で髪全体を染めるというイメージがありますが、このテクニックを使うことで、本来白髪染めでは難しい明るさを出したり、立体感を出したりすることが可能なのですね。

この方法を美容室でオーダーするにはどう伝えればいい?

プラダなど高級ブティックが軒を連ねるエリアに佇むサンバレー。
プラダなど高級ブティックが軒を連ねるエリアに佇むサンバレー。

--白髪染めを使用せず、白髪を上手に染める方法があるのは意外でした! 実際に、この方法を美容院でオーダーする場合、伝えるべきポイントはありますか?

渋谷「この方法は頭皮や髪をできるだけ傷めず、白髪を明るくキレイに染める方法です。

まず、『肌が弱く頭皮をできるだけ傷めたくない、だけど明るくしたい!』という要望を伝えてほしいですね。ただそれだけだと、ヘアマニキュアのみを使用される場合があるので、同時に『ヘアマニキュアだけだと白髪が浮いてしまうのが心配』という部分についても、しっかり伝えてください」

--施術自体も良い意味で手間がかかっていますよね。オーダーの方法もしっかりと工夫して伝えることが大切なのですね。

渋谷「そうですね。ただ、この方法は毎回ハイライトを入れる必要はなく、一度入れてしまえば、しばらくはヘアマニキュアで色を乗せるだけで問題ありません。2回目以降は施術も時間が短くなりますよ」

一度白髪染めをしてしまったら、なかなか明るい色にできない! そういった理由で白髪染めを躊躇していた人も少なからずいるはず。

しかし、ハイライトを上手に使うことで白髪染めを使うことなく、キレイに白髪を隠し、なおかつ髪全体に立体感も出せる方法があるのですね。

明るさと華やかさを残しつつ白髪を染めたい、という方は是非、取り入れてみてはいかがでしょうか?

まとめ

  1. 白髪染めだけでは明るい色が出しづらい
  2. ヘアマニキュアだけでは白髪浮きが気になってしまう
  3. ハイライト+ヘアマニキュアで明るさと立体感アップ!

次回は、今回出てきたヘアマニキュアを含め、髪に優しいとされる「オーガニックカラー」や「ヘナカラー」で白髪を染めた場合について、渋谷さんに教わります。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
EDIT&WRITING :
渋谷謙太郎