白髪を隠しつつ、髪に華やかさを取り戻してくれる白髪染め。上手に色味を選ぶことで、髪色を思い通りのイメージに仕上げることも難しくありません。
しかし、白髪の浮きや根元が気になることで、通常のいわゆる“おしゃれ染め”であるファッションカラーをしていたときよりも、染める頻度が高くなっている、という人も多いのではないでしょうか? そうなると、自ずと気になってくるのが髪へのダメージ。
そこで今回は、白髪染めにより髪の傷みが気になっている人のために、オーガニックカラーやヘアマニキュアで白髪を染めた場合の仕上がりや、通常のアルカリカラーとの違いなどを、プロの目線から解説でご紹介します。
今回も、青山の美容院サンバレー代表である、渋谷謙太郎さんにお話をうかがいました。
そもそも白髪染めで「白髪が染まる仕組み」は?
--渋谷さん、よろしくお願いします! まずに、通常のアルカリカラーなどで白髪が染まる仕組みをお教えいただけますでしょうか?
渋谷謙太郎(以下、渋谷)「よろしくお願いします! まずこの写真Aの毛束なのですが、これはブラウン系の白髪染めで白髪を染めたものです。明るさは数字で示されていて、この毛束の明るさは8/7というところですね。数字が大きくなるほどに明るく、数字が小さいほど暗いトーンになります。8/7という数字は、8と7の明るさのちょうど中間のトーン、と考えていただければと思います」
--この毛束は8/7の明るさのトーンで染められたもの、ということですね。
渋谷「厳密に言うと、ただ染めているだけではなく、通常のアルカリカラーなどは地毛の色を抜いて、同時にそこに色を入れているんです。
この場合だと、9や10程度のトーンまで色を抜いて、カラーを入れることで8/7の色味にしているという感じですね。この色を抜くという工程が、髪にダメージを与える原因になります。髪の傷みが気になる、肌が弱い、という人はオーガニックカラーでの白髪染めを検討するのも手ですね」
「オーガニックカラー」とはどういうもの?
--それでは、オーガニックカラーには「色を抜く」という機能が入っていない、ということでしょうか?
渋谷「いえ、通常のオーガニックカラーであれば、アルカリカラーなどと同じく色を明るくしてから染めるという機能が入っています。実際に国産メーカーのオーガニック白髪染めで染めたものが、上の写真Bです。
自然なツヤが出しやすいのが、オーガニックのよいところですね。ただ、オーガニックの場合、ジアミンの含有量が少ないぶん、明るい色に染めづらく、色が落ちやすいというデメリットがあります」
渋谷「この写真Cは海外メーカーのオーガニック白髪染めで染めた毛束です。メーカにもよりますが、オーガニックにおいては海外製のもののほうが、キレイに白髪を隠しつつ、キレイな色に染めやすい場合が多いですね」
--具体的に国産のものと海外のもので、大きな違いはどこにあるのでしょうか?
渋谷「海外製のものは、アンモニアフリーのものが多いです。というのも海外では、『口から臭気としてアンモニアが入ってしまうことが体に害だ』という考えがあるためです。
カラーをする際のアンモニア臭が苦手、むせてしまうという人は、海外メーカーのオーガニックカラーを使用するのがおすすめです。
ただ、海外メーカーのものは少し扱いが難しいところがあり、美容院によって技量の差が出やすい、というケースがありますね」
髪を傷めない「ヘアマニキュア」での仕上がりは?
--白髪染めの方法としてヘアマニキュアを使用する、というのもよく耳にします。
渋谷「そうですね。ヘアマニキュアは髪の毛を明るくする機能は入っておらず、単純に髪に色を入れるという方法で地毛や白髪を染めていくものです。
色を入れるだけなので、髪に対するダメージが少ないのがメリットです。ただ、地毛の色を調整しないまま色を乗せることになるので、当然、地毛と白髪に入る色に差が出てしまいます。色味によっては写真Dの左側の毛束ように、逆に白髪が浮いて見えてしまうこともあります。
ヘアマニキュアを使用する場合は、前回記事でお話した方法で、まず地毛と白髪の色をなじませてからヘアマニキュアで色を入れる、という方法がおすすめですね」
【前回記事:「白髪を明るくキレイに染めたい!」若々しく華やかに白髪を隠すオーダー方法や染め方は?】
よく耳にする「ヘナカラー」とは?
--ヘナカラーは、どういった特徴があるカラーなのでしょうか? 天然の染毛料で、最も髪には優しいというイメージがありますが。
渋谷「そうですね。植物由来なので、髪に優しいカラーではあります。写真Eを見ていただくとわかる通り、ちょっとオレンジがかった色味になります。ヘアマニキュアより色が落ちづらいのが特徴です」
--髪へのダメージを考慮すると、ヘナカラーがいちばん良さそうですが……。
渋谷「単純に髪へのダメージだけで考えるとそうですね。ただ、ヘナカラーもヘアマニキュアと同じく、髪の色を明るくする機能がなく、色を入れていくだけなので、白髪が浮いて見えてしまうんですよね。
また、ヘナカラーのデメリットとしては、ヘナカラーで色を入れてしまうとブリーチが効きづらくなるので、一度使用するとほかの色味に変えることができず、ヘナカラーしか使えなくなってしまう、というところですね」
市販の白髪染め、メリットやデメリットは?
--白髪染めはある程度の頻度で行う必要があるため、髪へのダメージもさることながら、美容院に通う手間を考えると、合間に市販の白髪染めを使用したい、という人もいますよね。
渋谷「基本的に市販の白髪染めは、通常のアルカリカラーです。ちょっと気をつけてほしいのが、人によっては髪へのダメージを加速させてしまう可能性がある、というところです」
--美容院でアルカリカラーなどの白髪染めを行うのと、どういったところに違いがあるのでしょうか?
渋谷「最初に、アルカリカラーなどで白髪を染める仕組みを説明しましたよね。一度地毛の色を抜き同時に色を入れるのですが、その際、美容院の場合は髪質に合わせて薬剤を調節します。市販の白髪染めの場合は、どんな髪質の人でもある程度イメージ通りの色になるよう、その色を抜く機能が強いんですね。
髪が細く軟毛の人ほど薬剤の影響を受けやすいので、市販のものを使ってしまうと、必要以上に髪に負荷がかかり、結果、髪へのダメージを大きくしてしまいます。
髪の毛が細い、またはすでにダメージを受けている、という人は市販の白髪染めは避けた方が無難です。これはファッションカラーにも言えることですね」
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白髪が伸びてきた生え際が気になり、ついつい頻度が増えてしまいがちな白髪染め。
髪の傷みが気になってきた、という場合はオーガニックの白髪染めを検討するのも、方法のひとつですね。
まとめ
- アルカリカラーで髪が傷む原因は地毛の色を抜く機能があるため
- 髪を傷めずキレイに染めたいならオーガニックカラーがおすすめ
- ヘアマニキュアやヘナカラーは逆に白髪の浮きが目立つことも!
- 軟毛の人、髪ダメージが気になる人は市販のヘアカラーは避けたほうが無難
本記事の渋谷さんのお話から、以上のことがわかりました。
あなたもそれぞれのカラーの特性を理解し、自分の今の髪の状態や白髪の割合などを加味して、上手にオーガニックカラーやアルカリカラーを利用してみてはいかがでしょうか?
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- EDIT&WRITING :
- 渋谷謙太郎