ミュシャの作品と彼が見た景色を求めて、チェコをめぐる旅の最終第4回。今回は、ブルノからさらに南へ向かい、国境近くの街・レドニツェ&ヴァルチツェとミクロフを歩きます。
国境近くまで足を延ばし「南モラヴィア州」で、ワインと美しい景観に癒やされる
ワインの試飲を楽しみ世界遺産の景観でのんびり「レドニツェ&ヴァルチツェ」
ブルノから南へ。南モラヴィア州は最近評価の高いチェコワインの産地。気候も温暖で、なだらかな丘陵地いっぱいにぶどう畑が広がる景色は壮観! この風光明媚な土地を求めて、領土にしてしまったのがリヒテンシュタイン家である。ふたつの城と広大な庭園をもつこの地域は世界遺産登録され、お城見学に興味がなくとも行ってみる価値がある。というのもレドニツェ城は内装が美しく、庭園が素晴らしいこと。特に庭園は人為的に造られた庭のなかでは世界一の広さを誇り、ユネスコの世界遺産に登録されている。さらに、ヴァルチツェ城には国立ワインセンターがあり、格付けワインが楽しめるからだ!
リヒテンシュタイン家の居城、レドニツェ&ヴァルチツェ城
ハプスブルク帝国が崩壊し、チェコスロバキアが独立するまで、現在のチェコにも領土を広げていた貴族、リヒテンシュタイン家。この美しい南モラヴィアではヴァルチツェ城をふだんの住まいに、レドニツェ城は夏の別荘としていた。
ミュシャが青年時代を過ごした、美しい丘のある国境の街「ミクロフ」
そして旅の終わりを締めくくるのはミクロフ。ミュシャが肖像画を描いて、初めて絵で生計を立てた街だ。ぶどう畑を眼下に眺め、小高い丘にパステルカラーの家が並ぶ。丘の上からオーストリアとの国境を望むと、その先はもうウィーンだ。
プラハに馥郁(ふくいく)たる文化があるなら、ここには豊かな土地の恵みがある。大人の女性には、こんなふうにゆるやかな時間が必要だ。チェコの旅はそんな思いに気づかせてくれる。
ミュシャの住居跡がレストラン&ホテルに
ミクロフは青年時代のミュシャがウィーンで修業したのちに暮らした街。ここで裕福なパトロンに出会い、画家としての第1歩を踏み出した。美しい眺望に未来への明るい希望を見出していたのだろう。
注目のワイナリー「ソンベルク」にも立ち寄って!
2003年創業というまだ新しいワイナリーでありながら、世界のさまざまな賞を総なめにして、注目されているのが「ソンベルク」。ミクロフにも近いので、ワイン好きならぜひ足を延ばしたい。
45ヘクタールの広大な畑では、生物多様性を維持するために、ぶどうの間に他の植物も植えられており、アプリコットジャムや蜂蜜などもつくられている。湖の奥に見えるのはワインの名前にもある「パーラバ」の丘。その先はもうミクロフだ。
ここにも寄り道! 世界文化遺産にも指定された藍染めの工房へ
伝統的な手仕事の温もりを味わいたいなら、藍染めのアトリエを訪ねたい。版木に彫った伝統的なモチーフをていねいにプリントして何度も染色を重ねていく。併設のショップではテーブルクロスなども購入できる。ブルノからは、車で1時間強、電車で2時間弱。
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チェコの旅シリーズ
- 1:名画が生まれた街をたどる!「ミュシャ」をめぐるチェコの旅【プロローグ】
- 2:名画が生まれた街をたどる!「ミュシャ」をめぐるチェコの旅【プラハ編】
- 3:名画が生まれた街をたどる!「ミュシャ」をめぐるチェコの旅【ブルノ編】
- PHOTO :
- 篠 あゆみ
- COOPERATION :
- チェコ政府観光局
- EDIT&WRITING :
- 藤田由美、古里典子(Precious)