誕生日やアニバーサリーなどに欠かせない、甘くておいしいケーキ。中でも、真っ白な生クリームでデコレーションされ、たっぷりのいちごが乗ったショートケーキは、日本人の定番の味です。

このショートケーキ、実は海外から来たものではなく、日本オリジナルのケーキだということをご存じでしょうか? 洋菓子の本場・フランスには、このようなケーキは存在しません。

では、ショートケーキはどうやって生まれたのか?

その歴史をひもとくと、全国の百貨店などに出店している老舗洋菓子店「コロンバン」の存在があります。

1924年(大正13年)に東京・大森の地で創業したコロンバンですが、創業者の門倉國輝氏が、「日本人の舌に合うケーキを」と試行錯誤して生み出したのが、ショートケーキ。

今回は、「コロンバン」の商品部長・太田眞裕さんに、長い歴史を持つお店の創業にまつわるエピソードや、これまでの歩み、そしてコロンバンがショートケーキをつくった理由などをお伺いしました。

洋菓子業界唯一の「宮内省御用達」!老舗洋菓子店コロンバンの創業秘話

コロンバンの創業者・門倉國輝氏は、洋菓子職人として修業を積み、1915年(大正4年)から1918年(大正7年)までの3年間、宮内省大膳寮員(天皇の料理番)を務めていた人物。

そののち、「本物を知りたい、つくりたい」という想いから、改めて本場の製菓技術を習得するためフランス・パリに渡ります。

そして、今から96年前の1924年(大正13年)、日本初の本格フランス菓子店「コロンバン」を創業。お店の名前は、門倉氏が当時修行していたフランスのお店からもらったものだそう。現在は、フランスのコロンバンは廃業しています。

渡仏前に宮内省大膳寮員を務めていた経歴から、コロンバンは洋菓子業界唯一の宮内省御用達として、創業当初から現在に至るまで、皇室のためにお菓子を納品し続けています。

「大きいものですと、春・秋の園遊会のときや、国賓のお客様がお見えになるときなどに、ひと口菓子のプチケーキや焼き菓子を納品させていただいております。

プチケーキは店で販売しているものとは違うのですが、クッキーのような焼き菓子は販売しているものと同じものです」(太田さん)

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創業当時の写真

東京・大森の地に創業したコロンバンは、1931年(昭和6年)に銀座6丁目角に銀座コロンバン本店を開店。満を持して開設した本店は、1Fを近代風、2Fを古代フランス風サロンとしました。

2Fのサロンでは、のちに藤田嗣治画伯の天井壁画を6枚飾り、本格的なフランス料理も提供していました。皇室や宮内省への納品には、日産自動車が130台だけ生産した、当時としては珍しいダットサントラック14型を2台購入して使用していたそうです。

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ダットサントラックで菓子を納品していたコロンバン

そして同じ年に、同じく銀座の地に、オープンテラス喫茶のパイオニアともいえる路傍風の店舗「テラスコロンバン」を開店。

その後、第2次世界大戦で、洋菓子にとってなくてはならない砂糖の配給が停止され、休業を余儀なくされますが、1946年(昭和21年)には営業を再開。1951年(昭和26年)には東京・渋谷の東横のれん街がオープンし、日本初の洋生菓子実演室付き店舗を設置して、ますます人々の注目を集め、活気づいていきます。

こうして現在の、老舗洋菓子店といえばコロンバン、とイメージされるような確固たる地位を築いていきます。工場を各地に建設して生産態勢を整え、全国のデパートや百貨店に売り場を設け、全国的なブランドに成長していったのです。

なぜショートケーキは生まれたのか?創業者の想いとは

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コロンバンの代名詞でもあるショートケーキの製造風景

そんなコロンバンの定番商品であるショートケーキが、どのようにして誕生したのか。これは、創業者の門倉氏が、修行先のフランスから帰国したときに「現地の味のままだと、日本人には受けないのでは」と感じたことがきっかけです。

フランス菓子の主流のといえば、カスタードクリームやバタークリームのケーキでした。現在でこそ、どこか懐かしい味のバタークリームのケーキが再び人気となっていますが、当時の日本人の舌にはまだなじみが薄く、門倉氏はそこまで広く受け入れられないのでは、と考えたのです。

そこで、当時の日本人にも好んで食べられていたカステラをべースに、取引先であった中沢乳業が遠心分離機を導入して生クリームの大量生産を始めたことから、カステラに似た卵黄をたっぷり入れたスポンジケーキに、生クリームを組み合わせた「ショートケーキ」を開発しました。

さらに、甘いだけではなく、いちごを飾ることで酸味も加えられ、シンプルながら誰の舌にもなじむ、万人に愛されるケーキが誕生したのです。

「真っ白い生クリームを塗った生地に、真っ赤ないちご。白地に赤といえば、日本国旗の日の丸を想像しますよね。創業者がそこまで考えてつくったと言われています。そういったなじみ深い見た目も、日本人に好まれた一因かもしれません」(太田さん)

ショートケーキのレシピは、創業当初から変わっていないといいます。

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昭和34年(1959年)頃のパンフレット

当時に比べて現在、流通しているもののほうがいちごの甘みがある上、消費者の健康志向が年々高まっているため、生クリームの糖度に関しては年々さがっているそうですが、基本的なレシピは変えていないとのこと。

「生クリームの乳脂肪分は45%で、植物性油脂は入れていません。45%だとしつこいんじゃないかと思うお客様もいらっしゃると思いますが、食べてみると意外とさっぱりしていて、でもコクがある。

生地はふつう全卵だけでつくりますが、当社はそれに加えて卵黄も同割で入れています。生地も少し黄色っぽいですし、より卵の風味を感じられると思います」(太田さん)

ふわふわで優しい味のスポンジケーキに、甘さ控えめな生クリーム、酸味と甘みを感じるジューシーないちごのマリアージュは、シンプルながら奥深く、いつまでも食べていたくなる味。

クリスマスや記念日など、ケーキを買うときにはまずショートケーキを思い浮かべる方も多いと思います。日本人に合うものをと、徹底的に考えられたケーキだからこそ、今も色あせずに愛されているんですね。

ショートケーキだけじゃない!コロンバンの定番洋生菓子4選

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コロンバンの生菓子は、定番や季節限定など豊富なラインナップが魅力的

コロンバンの商品は、ショートケーキ以外にももちろん多くの種類が存在します。そこで、ショートケーキを含めたコロンバンの定番生菓子を4つ、ご紹介します。

■1:誰からも愛される味!コロンバンの代名詞「ショートケーキ」

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「ショートケーキ」¥550

コク深い生クリームで、たまごたっぷりのスポンジケーキをデコレーションした、コロンバンの顔とも言える定番商品。生クリームは甘さ控えめに、糖度10%ほどのものを使用しています。

いちごは旬のものを使うため、季節によって品種が変わるそう。

「昭和40年代頃は夏にショートケーキを販売していなかった時期もあったようです。夏場いちごの流通がなかったので、マスカットなどで代用していた時代もありました。間にも、缶詰の桃をサンドしていたり。さらに輸入いちごを使っていたときもあったのですが、これがあまりおいしくなかったんですね(笑)」(太田さん)

ふんわりしっとりしたスポンジケーキと、生クリームの甘み、旬のいちごの軽やかな酸味が口の中で合わさり、幸せな気持ちになれる定番の味です。

■2:どこか懐かしい味わいの「モンブラン」

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「モンブラン」¥520

サクサクのメレンゲ生地の上に、和栗のペーストにコロンバン伝統のバタークリームを混ぜたマロンクリームを絞ったモンブランです。

「デザインなどは時代とともに変わってきましたが、こちらも誕生以来レシピはほとんど変わっていません」(太田さん)

どこか懐かしく、優しくコクのある味わいのモンブランです。

■3:根強い人気のバタークリームが決め手「ガトー・オ・ブール」

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「ガトー・オ・ブール」¥500

コロンバン伝統のバタークリームをたっぷりと使用したプチガトー。ふんわりしっとりと焼き上げられたスポンジケーキと、バタークリームの相性は抜群です。

「コロンバンでは、生クリームを使ったお菓子より実はバタークリームを使ったお菓子のほうが多いんです。人気があるので、バタークリームのロールケーキも定番で置いてあります。バタークリームも創業以来使っていて、根強い人気がありますね」(太田さん)

■4:リキュール好きにはたまらない「サバラン」

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「サバラン」¥500

ブリオッシュ生地に、ジャマイカ産ヘビーラムをベースにしたシロップをひたひたにしみ込ませ、ジャムを塗ってフルーツを乗せたサバラン。

「ショートケーキの次に売れているのが実はこのサバラン。創業当初から人気がある商品です」(太田さん)

シロップがじゅわっとしみ込んだ生地は、リキュール好きな方にはたまらない仕上がりになっていますよ。


コロンバンでは、2010年より原宿本店や渋谷の自社ビル屋上でミツバチを育てて、養蜂事業を開始しています。屋上の近辺にある明治神宮、代々木公園、赤坂御所、新宿御苑など半径3㎞以内で咲く草花から、ミツバチたちがせっせと花粉や蜜を集めてつくった香り高い「原宿はちみつ」を使ったスイーツづくりも注目されています。

「元銀行員である現社長が、銀行時代に付き合いのあった養蜂家の方にご指導いただいて、まったくの素人ながら、ミツバチと環境保護を目的に養蜂事業を始めました。

最初の年から思いがけずはちみつがとれたので、何かできないかということで生まれたのが、はちみつをかけて食べるスタイルの『原宿はちみつプリン』です。

もともと環境のことを考えて始めた事業なので、容器も再生ガラスを使って保存容器になるようにつくられていて、召し上がったあとも再利用できますよ」(太田さん)

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花の香りがフワッと香る原宿はちみつを使用した「原宿はちみつプリン」も人気商品。時期によってはちみつの色も変わるそう

また、無農薬で育てた野菜をサロンのカフェメニューに使用したり、グルテンフリーのスイーツをつくったりなど、現在もさまざまな新しい取り組みを続けています。

日本人に合うものをと考えられてつくられたコロンバンのスイーツですが、今は店舗によっては海外からやってくる方も多いのだとか。老舗の看板を守りながら新しいチャレンジにも取り組んでいるコロンバンは、今や日本だけでなく世界に愛されるブランドになろうとしています。

元祖ともいえるショートケーキや、進化を続ける洋菓子の数々をいただきに、ぜひコロンバンを訪れてみてくださいね。

※価格はすべて税抜です。

問い合わせ先

コロンバン

0120-55-4282​(お客様窓口、土日祝祭日を除く9:00~17:00)

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WRITING :
小林麻美