老舗レザーブランド・コノリー オーナー、イザベル・エッティギィさんの「シンプル&ベーシックな家」を訪問

1878年創業、英国王室御用達の老舗レザーブランド・コノリー。コノリーレザーと呼ばれる上質な革はロールス・ロイスやベントレーなどの高級車や旅客機、豪華客船などに使用されています。

2016年、ハイドパーク近くの高級エリア・メイフェア地区に、旗艦店がオープン。オーナーのイザベル・エッティギィさんは、アートギャラリーとして使用されていた建物の地下1階と1階をショップに、2階はギャラリー兼リビング、3階から5階を自宅スペースとして改装・増築しました。

イザベル・エッティギィさん
コノリー オーナー
大学で美術史を専攻し、インテリア雑誌の広告担当を経てグラフィックデザイナーとして活躍。ジョゼフのファウンダー、ジョゼフ・エッティギィ氏と結婚。1998年、夫妻で英国の老舗レザーブランド コノリー社を譲り受け、その哲学を継承。2010年、夫の死後、レザーグッズに加え、プレタポルテ事業を開始。ジョン・ロブ、セルジオ・ロッシなどを手がけたキャンディーがパートナーになり、2019年、初の海外店舗を東京・銀座にオープン。

エッティギィさんのHouse DATA

間取り …ダイニング、キッチン、バスルーム×3、寝室×3、書斎、リビング兼ギャラリー、ランドリールーム
家族構成 …2匹の愛犬と長女
住み始めて何年? …約3年

愛犬のフレンチブルドッグのバベットと雑種のエジャックス。
愛犬のフレンチブルドッグのバベットと雑種のエジャックス。

「家は、大切な家族や友人と長い時間を過ごす場所。だからこそベーシックであることが基本です」(エッティギィさん)

自然光が降り注ぐ明るいダイニング。人を招くのが大好きというイザベルさん。週末ごとにディナーやソワレで家族や友人と食卓を囲む。卓上の燭台はアンドレ・デュブレイユの作品。キャンドルを灯すとガラス球を通してロマンティックに煌きらめくのがお気に入りだとか。
自然光が降り注ぐ明るいダイニング。人を招くのが大好きというイザベルさん。週末ごとにディナーやソワレで家族や友人と食卓を囲む。卓上の燭台はアンドレ・デュブレイユの作品。キャンドルを灯すとガラス球を通してロマンティックに煌きらめくのがお気に入りだとか。

「古きよきロンドンのエレガンスを感じるこのエリアで物件を探していたとき、こぢんまりとしながらも風格と趣のあるたたずまいにひと目惚れして即決。歴史的建造物なので、可能な限りオリジナルを残しつつ、現代の暮らしに合った快適で居心地のよい空間を意識しました」

キッチンからダイニングを望む。カウンターにはフルーツやアフタヌーンティー用の焼き菓子を常備。
キッチンからダイニングを望む。カウンターにはフルーツやアフタヌーンティー用の焼き菓子を常備。
機能性を重視して、イギリスの老舗ブランド「Plain English Kitchen」のシステムキッチンを採用。棚にはアンティークの銀器やアールヌーボー時代のラリックやエミール・ガレなどの花器が並ぶ。絵画は、フランス人画家、モーリス・エステーヴの1979年の作品。
機能性を重視して、イギリスの老舗ブランド「Plain English Kitchen」のシステムキッチンを採用。棚にはアンティークの銀器やアールヌーボー時代のラリックやエミール・ガレなどの花器が並ぶ。絵画は、フランス人画家、モーリス・エステーヴの1979年の作品。
食器棚のガラス扉内には、ロンドンの人気フローリスト、コンスタンス・スプライのオブジェや、鳥のオブジェ、パブロ・ピカソのオリジナル作品などが。
食器棚のガラス扉内には、ロンドンの人気フローリスト、コンスタンス・スプライのオブジェや、鳥のオブジェ、パブロ・ピカソのオリジナル作品などが。

時代や背景の異なるテイストをミックスして楽しむ

その想いをかなえたのは、15年来のつきあいがあるパリ在住の内装建築家デュオ、ジル&ボワシエ。

「ダイニングの木の椅子やソファ、食器棚や照明は彼らのオリジナルデザイン。天然素材の風合いを生かした、洗練された仕上がりが心地よく、気に入っています。一方、ダイニングテーブルや花器、窓際に置いたシリアのチェアなどはアンティーク。現代のデザイナーのものと古いもの、時代や背景の異なるテイストをミックスして楽しんでいます」

2階のリビング兼ギャラリー。アートに造詣が深いイザベルさんの審美眼が光る現代アートが随所に。
2階のリビング兼ギャラリー。アートに造詣が深いイザベルさんの審美眼が光る現代アートが随所に。
額装された写真は、N.Y.の写真家Mathew Johnson。
額装された写真は、N.Y.の写真家Mathew Johnson。
商談ほか、ディナーの食後酒を楽しむなどサロン的な役割も。
商談ほか、ディナーの食後酒を楽しむなどサロン的な役割も。
作品が生きるよう白い壁にこだわり、展示は3か月ごとに入れ替える。白いオブジェは、日本人アーティストMari-Ruth Odaの作品。
作品が生きるよう白い壁にこだわり、展示は3か月ごとに入れ替える。白いオブジェは、日本人アーティストMari-Ruth Odaの作品。

ベージュと白のやわらかなカラーグラデーションと、窓枠や大理石にモノトーンを効果的に配した室内は、優しい空気に包まれています。

「人の手の温もりが感じられる、木やレザーなどナチュラルな材質が好きです。暮らす人の人生とともに、豊かに変化していく過程が愛おしくて。家は、大切な家族や友人と長い時間を過ごす場所。だからこそベーシックが基本。シンプルであること、コンフォタブルなテクスチャー、なにより美しいこと。これが私の考えるベーシックです

最上階にあるゲストルーム。天蓋付きのベッドがアクセント。
最上階にあるゲストルーム。天蓋付きのベッドがアクセント。
自慢の天窓は船をイメージしてデザイン。
自慢の天窓は船をイメージしてデザイン。
イザベルさんの寝室。ダイニング同様、白とベージュの優しいカラートーンで、ベッドとソファはジル&ボワシエのデザイン。壁にはランドスケープフォトグラファーDavid Parkerの作品が。
イザベルさんの寝室。ダイニング同様、白とベージュの優しいカラートーンで、ベッドとソファはジル&ボワシエのデザイン。壁にはランドスケープフォトグラファーDavid Parkerの作品が。
1830年に建てられたこの地区でいちばん古い建物ゆえ、ジョージアン建築様式へのオマージュとして、窓にはウッド製の鎧戸を設置。
1830年に建てられたこの地区でいちばん古い建物ゆえ、ジョージアン建築様式へのオマージュとして、窓にはウッド製の鎧戸を設置。
繊細な螺鈿細工が美しい、18世紀シリアのアンティークチェアを置くことで、モダンでクリーンな空間にエキゾチックな趣を添えている。
繊細な螺鈿細工が美しい、18世紀シリアのアンティークチェアを置くことで、モダンでクリーンな空間にエキゾチックな趣を添えている。
この家で唯一、カラフルなのはギャラリーに隣接する部屋。イザベルさんが選んだ「キングス・イエロー」と呼ばれるイギリスを象徴する高貴なイエローは、こちらもジョージアンスタイルのエレガンスを表現したとか。
この家で唯一、カラフルなのはギャラリーに隣接する部屋。イザベルさんが選んだ「キングス・イエロー」と呼ばれるイギリスを象徴する高貴なイエローは、こちらもジョージアンスタイルのエレガンスを表現したとか。
天然素材のウッドとモノトーンの大理石。一見相反する異素材がシックに調和したバスルーム。
天然素材のウッドとモノトーンの大理石。一見相反する異素材がシックに調和したバスルーム。

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PHOTO :
篠あゆみ
EDIT&WRITING :
田中美保、古里典子(Precious)
取材 :
鈴木ひろこ