メンズファッションを基軸とする当メディアとしては、当然ながらボンドの着こなしが気になる。それは過去作品でも同様で、特に初代ボンドを演じたショーン・コネリーの劇中での着こなしは、活動的な紳士の理想像として、今も高く評価されている。
一方で、大作娯楽映画としての魅力を支えているのが、派手なアクションと美女たちの熱演だ。近接格闘、巨大セットを使った破壊作戦、カーアクションなどは、CGを随所に取り入れながら、今後のシリーズでも最大の見どころになるだろう。反面、ボンドガール(敵味方問わず、ボンドが好意を寄せる女性を総称してこう呼ぶ)は時代の流れに合わせて、初期のセクシャル一辺倒な役割から、自立した強い女性像へと役割を変えていった。
男の目線でボンドガールを語るとき、今では女性蔑視といわれかねない役割であろうとも、初期〜中期のボンドガールに重点を置くのは、ごく自然なことだと思う。喫煙シーン同様、その時代では不自然でなかった描写に苦言を呈するのは、エンターテインメントの可能性を狭めてしまう。ボンドガールの輝きは、誰も否定できないのだ。
そこで今回は、過去の作品で活躍した歴代のボンドガールのなかから、特に魅惑的で存在感のあるキャラクターを選りすぐって紹介しよう。なお、コアなファンの間では外せないキャラクターが一部含まれていないが、あくまでも編集部の主観に基づいたセレクションとしてご了承いただきたい。
なお、見出しに記したキャラクターの名称は「」内が役名で、()内を本名・芸名としている。
ミス・ユニバース2位の美貌「タチアナ・ロマノヴァ」(ダニエラ・ビアンキ)
第2作「ロシアより愛をこめて」(1963年)で、犯罪組織「スペクター」の策略により、ボンドを罠にはめるロシア人スパイ、タチアナを演じた。名前でおわかりのように生粋のイタリア人で、1960年のミス・ユニバースで2位(準優勝)に輝いた知性的な美貌の持ち主。英語が苦手だったようで、本作以外はすべてイタリア映画のみの出演にとどまった。
馬小屋でボンドと親密に!「プッシー・ガロア」(オナー・ブラックマン)
第3作「ゴールドフィンガー」(1964年)に登場した、ロンドン出身のイギリス人俳優。強烈な役名も一役買い、歴代ボンドガールのなかでも1、2を争う人気キャラクター。意志の強そうな顔立ちとボリュームのある胸元で、ショーン・コネリー演じる骨太なボンドとも堂々わたりあった。なお、つい先日(4月7日)逝去したことが報道された。94歳であった。
金色の肢体(死体)で映画史に名を残した女優 「ジル・マスターソン」(シャーリー・イートン)
こちらも第3作「ゴールドフィンガー」に登場したイギリス人俳優。1950年代からエンターテインメントの世界で活躍し、そのセクシーぶりは母国で有名だったとか。映画の冒頭で、ゴールドフィンガーのカードゲームのイカサマをアシストしていたが、ボンドに口説かれて任務を放棄。その報いとして、金粉で全身を覆われ、窒息死する。現実にそうした現象(皮膚呼吸が困難になって窒息死)は起きないといわれているが、ともあれ作品を象徴する名シーンとなった。
一筋縄ではいかない悪女 「フィオーナ・ヴォルペ」(ルチアナ・パルッツィ)
第4作「サンダーボール作戦」(1965年)に登場した、女帝感漂うイタリア人俳優。高額なダイヤモンドと引き換えに、スペクターが原爆搭載のNATO空軍機を強奪。リミットが迫るなか、ボンドが原爆のありかを捜索するという本作において、フィオーナは序盤から中盤まで幾度も登場する。どんな男も虜にする肉体と冷酷ぶりで、コミカルな演出を抑えたストーリーを印象付けた。
日本人社長に使える謎の外国人秘書 「ヘルガ・ブラント」(カリン・ドール)
日本を舞台にした第5作「007は二度死ぬ」(1967年)において、スペクターの配下にある大里化学の社長秘書を務めたのが、ドイツ人俳優カリン・ドール演じるヘルガ。若林映子や浜美枝など、日本人俳優の出番が強い本作において、登場シーンは多くないものの、色気のある悪女として鮮烈な印象を残した。
富豪に目がないグラマラス美女 「プレンティ・オトゥール」(ラナ・ウッド)
製作会社と良好な関係になかったショーン・コネリーが一度はボンド役を降りたしたものの、ふたたび演じることとなった第7作「ダイヤモンドは永遠に」(1971年)。南アフリカで採掘されたダイヤモンドの大量消失事件を追ってラスベガスにやってきたボンドに、色仕掛けで近づいたのがプレンティだ。演じるラナ・ウッドは、81年に不可解な死を遂げたアメリカの人気女優、ナタリー・ウッドの妹。出演シーンは少ないが(そもそも映画出演本数も多くない)、姉をしのぐグラマラスな肢体で存在を印象付けた。
ロレックスでドレスのジッパーを…… 「ミス・カルーソー」(マデリン・スミス)
前作の「ダイヤモンドは永遠に」で、すでに兆候はあったものの、ロジャー・ムーアが3代目ボンドを初めて演じた「死ぬのは奴らだ」(1973年)で、シリーズはより低年齢層にもアピールする、コミカルな大衆娯楽志向へ舵を切る。とはいえ本作では、ムーア版ボンドのイメージは完全に確立されておらず、冒頭ではいきなり自宅に同業の女性スパイを連れ込んでいる。その女性スパイ、ミス・カルーソーを演じるのは、色白でグラマラスな小悪魔的魅力のイギリス人女優、マデリン・スミス。出演シーンはわずかで、ほかの映画への出演作品も少ないが、“危険と隣り合わせの日々→恋愛にも全力を尽くす”という、ボンドの役柄を強調する存在として印象深い。
大人の色気の奥深さを教えてくれた淑女 「アンドレ・アンダース」(モード・アダムス)
身長190cmを超える怪奇映画のスター、クリストファー・リーが謎の殺し屋、スカラマンガを演じる第9作「黄金銃を持つ男」は、コミカルなアクションと大人向けの演出が混在する異色作。スカラマンガの美しい愛人、アンドレ・アンダースを演じたのが、スウェーデン出身のモード・アダムス。従来のボンドガールにはない大人の色気をたずさえていた。彼女はのちに、第13作「オクトパシー」で、今度はメインのボンドガールを演じている。
【後編「007」不滅のボンドガール図鑑に続く】
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- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
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