おうち時間がニューノーマルとなりつつある今、自分が生活をする部屋の中が散らかっていたり、ものがぎっしり詰まっていたりすると、ストレスがたまったり、窮屈に感じてしまうもの。

今こそ、家の中の片付けをしたいと思っても、なかなか重い腰が上がらない方も多いのではないでしょうか。

そんな人におすすめなのが、片付けによる「精神的な効果」を知ること。片付けには単なる「モノが片付く」「なんとなくスッキリする」などの効果だけでない、意外な効果もあるのです。

それを踏まえれば、モチベーションも簡単に上げることができ、途端に片付けがしたくなるでしょう。

そこで今回は、整理収納アドバイザーの資格をもち、家電メーカーに勤務しながら、片付け部長®代表として、片付けに関する講演活動もしている大村信夫さんに、片付けの精神的効果とモチベーションを上げる方法を教わります。

「片付け」の意外な精神的効果4つ

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片付けにはどんな精神的効果が?

大村さんによれば、片付けにはこんな精神的効果があるのだそうです。

■1:理想と現実とのギャップが埋まるので満たされる

「何事もそうですが、理想と現実にギャップがあると、ストレスが溜まりやすくなります。片付けも同じです。理想の『片付いている部屋』と、現状『片付いていない部屋』のギャップを埋めましょう。片付けをして理想の状態になれば、そのギャップが埋まるので精神的にもスッキリして満たされます」

■2:片付けをして視界から入る情報が少なくなれば、脳が疲労しにくくなる

「特に人間は外界からの情報を五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)で得ています。五感のなかで特に一番情報量が多いのが、視覚情報と言われます。(※)外界から得る全情報のうち、五感の中でも約80%を目が担っていると言われるのです。

視界に入ってくる情報は、みなさんが意識しなくても、脳が必要か不要かを随時判断しているのです。ですので視界に入ってくるものが多いと、それだけ脳が働くことになり、脳は疲労します。一方で片付いた部屋は、視界から入る情報も少なくなり、脳はその分の処理をしなくてよいのです」

※『産業教育機器システム便覧』(教育機器編集委員会編 日科技連出版社 1972)では五感による知覚の割合として、「味覚1.0%、触覚 1.5%、臭覚 3.5%、聴覚 11.0%、視覚 83.0%」と示されている。

■3:探し物が見つからなくてイライラすることが減る

「探し物をしているときに、ウキウキ・ルンルンな気持ちで探していますか? きっとそんなことはないですよね。片付いていない部屋では、探し物をすることが多くなり、その都度イライラしてしまいます。

片付いた部屋では、探し物が見つからなくてイライラするということも少なくなりますので、それによる精神的な効果も大きいでしょう」

■4:日常に自然に応用でき、毎日が充実する

「片付けとは『小さな判断と行動の繰り返し』です。この小さな判断とは、モノが必要か不要なのかを判断し、必要であれば決められた場所へ『収納』し、不要であれば『手放す』、つまり捨てる、譲渡などという行動をすることです。この『判断力』と『行動力』が大事なのです。

私は片付けのプロの資格『整理収納アドバイザー』をもっていますが、この資格をもつ方はとても毎日を充実して過ごしている方ばかりです。あるとき、その理由が分かったのです。

それは、この判断力と行動力を、単に部屋の『モノ』に対してだけでなく、日常の『コト』にまで自然に応用しているから。

つまり、自分の人生にとって『必要なコト』『大切にしたいコト』を判断して行動しているのです。そのための手軽なトレーニングが部屋の片付けというわけです。モノを整理することで、心まで整理されます」

片付けのモチベーションを上げる方法

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片付けが億劫に感じたらチェック!

この片付けの精神的効果を踏まえて、片付けのモチベーションを上げる方法を大村さんに教えていただきました。

■1:理想の部屋とインテリアを具体的にイメージする

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理想を明確に描こう

「片付け自体は、多くの人にとって、そんなに楽しい行為ではありません。楽しい行為であれば、誰もが率先してやっているはずですよね。それは片付けがダイエットと同じだから。

ダイエットはダイエットすることが目的ではなく、ダイエットしたその先にある状況、例えばお気に入りのお洋服を着たい、会う人から『素敵ですね』と言われたいなどの状況になることが目的ですよね。

脳科学では、脳は『想像』と『現実」を区別することができないと言われています。

つまり、あるイメージを思い浮かべると、脳はそのイメージを達成するための反応を起こし、行動につなげることできるのだということです。

私はこの方法によって、片付いた部屋を維持する以外にも多くの目標を達成しています。私はフルマラソンを10回連続で完走していますが、毎回本番の前の夜などに、マラソンのゴールシーンを強くイメージして眠りについていました。日常のマラソンの練習プラスαで、このイメージ付けは必要だと思います。

ダイエットに成功したときには、10kgやせた状態でピッタリになるスーツをオーダーしておき、それを部屋の見えるところに飾って、それを着ている自分を想像していました。

結果、3か月で着ることができました。イメージの力は偉大です。

片付けも同じです。まずはありたい部屋をイメージしてください。家族もいるなら、ぜひ家族で一緒にそれをイメージしてみてください。

そのときには、実際にインターネットなどで理想の部屋の画像を探し、そこで生活している状況、過ごす時間を家族でイメージして共有認識化してみてください。

そして、部屋が片付いたら置いてみたいインテリア用品を具体的に選んでおきましょう。それができないうちに片付けをしてしまうと行き詰まります。大切なのは『やり方』ではなく『あり方』なのです」

■2:サラミ・スライス法で片付けていく

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こま切れに行えば簡単!

「これは片付けだけでなく、家事や仕事にも応用できる方法です。『やる気が出ない』というときには、たいていが、取りかかろうとすることがあまりにも大きな作業に見えてしまうからです。

全体的に散らかったリビングを今日中にすべて片付けよう、と思うとひるんでしまいますよね。ですのでおすすめは、サラミのスライスのようにこま切れに行うことです。

サラミにまるごとかじりつくには、強靭な歯とあごの力が必要ですので、丸ごと一本食べることはできませんが、薄くスライスしていけば食べれるようになりますよね。

片付けも、まずはダイニングテーブルの横の棚、テレビ台など、スポット的に取り組んではいかがでしょうか」

■3:音楽を流しながら行う

ライオンの調査では、音楽を聴きながら家事を行うと『家事が楽しく感じられる』と答えた人が6割以上にも上りました。ぜひ片付けにも応用してみましょう。

ただし注意したいのは、この片付けと音楽の親和性が高いのは、『出したものをしまう』などのあまり考えない作業としてください。片付けの『いる』『いらない』の選択は頭を使いますので、もしその集中力を妨げるのであれば、音楽はかけないほうがよいときもあります。

ノリノリの音楽をかけて、その勢いでどんどん手放すという考えもありますが(笑)」

■4:プロに依頼してきれいを維持する

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プロにお願いしてモチベーションを維持!

「モチベーションを上げるのとは少し違うかも知れませんが、自分ひとりではやりにくいと思ったら、プロに頼んでしまうことをおすすめします。

検索エンジンで『(お住まいの地域)整理収納アドバイザー』で検索すれば何人も出てくると思いますが、ぜひその方々のブログなどをみて、自分と価値観が近かったり、自分が理想としている部屋に近かったりする方に依頼してみましょう。

実際に訪問してもらえば最適なアドバイスをもらえますし、その後も継続的にフォローしてもらうことで、部屋をきれいにし続けるモチベーションにもなります」

片付けをしたい気持ちはあるものの、なかなかモチベーションが上がらなかったという人は、ぜひこちらをヒントに、お部屋もメンタルもスッキリさせてみませんか。

大村 信夫さん
(おおむら のぶお)家電メーカーに勤務しながら「片付けパパ®」「片付け部®」代表として活動。整理収納アドバイザー1級、3児のパパ。モノを整理することで心も整理され、日常生活や人間関係など人生全体に好循環が生まれることを伝えるべく、講演やワークショップを全国で開催。片付けパパの「7つの片付け習慣術」

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この記事の執筆者
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WRITING :
石原亜香利
EDIT :
安念美和子
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