世界中が注目する2020年米大統領選。なかでも黒人女性として初めて副大統領候補に指名されたカマラ・ハリス上院議員の人気が高まっています。彼女はなぜ国民から支持されるのか?今回は生い立ちから飾らないファッションポリシーまで、改めて紐解いていきます。

黒人女性として初! 副大統領候補として注目されるカマラ・ハリス上院議員って?

カマラ・ハリス上院議員
話題の女性リーダー、カマラ・ハリス上院議員

アメリカの民主党のカマラ・ハリス上院議員は、主要政党で史上初の黒人、南アジア系女性の副大統領候補として正式指名を受諾し、バイデン元副大統領とタッグを組むことになった。カマラさんを起用したことで、数え切れないほどの記事が見出しを飾り、どれほどアメリカ国民の熱狂を呼び起こしたかを示す指標のひとつに、献金がある。

バイデンさんとハリスさん
2020年米大統領選で、バイデンさんとハリスさんがそろって初会見した8月13日(木)の様子

8月13日(木)の民主党大会で、カマラさんの起用を発表して48時間以内に、集まったのはなんと4800万ドル。それも共和党よりとみられていた企業からも新たな献金を呼び込んだのだ。7月にバイデン陣営が集めた資金は1億4千万ドルなので、2日間で約その三分の一を集めた計算になる。混迷しながらも、多様性へと移行する時代を象徴する出来事ではないか。

前オバマ大統領をして、思わず「ずば抜けて美人」と公式の場で言わしめ、そのためオバマ前大統領は当時カリフォルニア州の司法長官であったカマラに謝罪するハメになったが、美貌に息を飲んだ前オバマ大統領の率直な感想は、微笑ましく、これはご愛嬌と言って良いだろう。カマラさんは大輪の花を思わせる抜群の美人なのである。だが、政治の世界では必ずしも、それが武器にはならないことも知っている。

両手をあげるカマラ・ハリス上院議員
バイデン大統領候補が指名受諾演説を行った8月20日(木)の民主党全国大会にて

カマラさんが起用されて、24時間で全世界でカマラの画像検索が4倍に伸び、「カマラ・ハリス 夫」「カマラ・ハリス 人種」の検索も急増した。重要な候補者をもっと知りたいと思うのは当然のことだが、彼女の目覚ましいキャリアと人望の賜物である副大統領候補と言う座をもってしても「初の女性」や「初の有色人種」そして「夫」まで検索されると言う注目のされ方は、現代が抱えるジェンダーレスやダイバシティーなどの問題がいまだに根強く、カマラさんがパイオニア的な存在等ことということを映し出している。

ちなみにカマラさんには現在ボディガードが付いているがコードネームは「パイオニア」。カマラ自身がつけたそうだ。

世界が注目する、女性リーダーの生い立ちは?

父親はジャマイカ移民でのちにスタンフォード大学の経済学教授、母親はタミル系インド人で、著名な乳がん研究者というアカデミックな家柄で育ち、カマラという名前も、サンスクリット語の「蓮の女性」を意味する。全米屈指の黒人名門大学ハワード大で政治と経済を専攻し、その後ヘイスティングス・ロースクールで法務博士号を取得。上院議員になる前は、カリフォルニア州司法長官に就任。初のインド系、初のアフリカ系、初の女性として、この任を得た。

「ブランドネームに頼らない」。スマートな女性像が共感を得る時代に

椅子に座るカマラ・ハリス上院議員
世界中から共感をよぶ、ブランドネームに頼らないカマラさんの着こなし

カマラさんのファッションはある意味非常に意味深く、スマートだ。女性の政治家について回るファッションへのコメントなど、一切言わせない、「私への関心は仕事の内容だけにして」というメディアへの無言のメッセージが伝わってくる。男性の背広に通じる「匿名性」こそ、公共的な自らの立場には大切であるという信念だ。だから、愛用するのはテーラードのパンツスーツが圧倒的に多い。

パンツスーツ姿
女性らしさを感じさせる色や素材選びが秀逸

ネイビー、グレー、黒といったベーシックカラーが主流だが、インナーにはシャツより、白や黒のTシャツを好み、スポーティーで清潔、華やかな顔立ちをシンプルに引き立て、共感を呼ぶスタイルに仕上げている。

シャツではなく胸開きの深いTシャツや柔らかなブラウスを合わせることで、自然体でフェミニンな雰囲気が伝わってくる。

バーガンディーのスーツと同色のサテンのTシャツ姿
副大統領候補に正式指名された、8月19日(水)のカマラさん

そんな定番カラーをチョイスするカマラさんだが、副大統領指名の大会には、民主党の女性議員のお約束である白いスーツではなく、バーガンディーのスーツと同色のサテンのTシャツを着て話題を呼んだ。

まさに「ノームコア」のお手本!? 「コンバースやティンバーランド」など、着用したシューズブランドがトレンド入り

「ファッションで自分を語らない」主義のカマラさんだが、皮肉なことに最近では、メンズで言うところの「ノームコア(究極の普通スタイル)」の姿にファンが激増している。

スキニージーンズにスニーカー
カジュアルなスタイルで演説をするカマラさん

例えば、白いシャツの袖をまくりあげ、スキニージーンズにスニーカーというカジュアルな演説の姿や、遊説先での活動的なスタイルが話題に上っている。

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

Laced up and ready to win.

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ミルウォーキー ジェネラル・ミッチェル国際空港 (MKE)で颯爽とスニーカーとジーンズで飛行機を降りる動画は、さまざまなメディアで取り上げられ、再生数をどんどんのばしているという。

「コンバースのチャックテイラーを溺愛している」と、インタビューで明かす

愛用のスニーカーは、「コンバースのチャックテイラー」
「コンバース」を着用し、公の場に現れるカマラさん

愛用のスニーカーは、「コンバースのチャックテイラー」だとか。長年コンバースを愛用しているらしく、レザーから厚底まで、全種類の「チャックテイラー」をもっていると『The Cut』のインタビューでも明かしている。

被災地訪問時に着用した「ティンバーランドのブーツ」がヒット

「ティンバーランド」のブーツ
9月15日(火)に被災地を訪問した際のカマラさん

もうひとつ話題を集めているのが、米加州の山火事における被災地を訪問した際に着用していた「ティンバーランド」のブーツだ。ヒップホップカルチャーで愛されていたブランドだが、「Timbs」「コンバース」「チャックテイラー」があっという間にSNSのトレンド入りしたのはいうまでもない。

人生の相棒は、35年間寄り添ってきた「パールネックレス」

パールネックレス
人生をともに歩んできた「パールネックレス」の存在

そんなカジュアルアイテムを愛用するカマラさんだが、実は肌身離さずと言って良いほど愛用しているのが、優美なパールのネックレスとイヤリングだ。大粒の白や黒の真珠、チェーンで繋いだものなど、スタイルの幅も広い。

なかでも、度々登場するパールネックレスがある。一連から二連使いまで、付け方も微妙に長さに変化をつけて、おそらく同じものをバランスを変えながら、上手に着まわしているように見える。大学の卒業写真から始まって、以来35年間、カマラのキャリアとともに歩んできたといって良いほどの相棒ぶりだ。

スーツにパールネックレスは政治家の典型的なルックでもあるが、このネックレスには深い意味が込められている。カマラさんがハワード大学生の頃、初の黒人女性のための社交クラブ「アルファ・カッパ・アルファ(AKA)」のメンバーであったことを示すもので、後に「20粒のパール」と呼ばれる女子グループが創設したことが由来であるため、20粒のパールはその象徴なのである。

AKAの国際会長グレンダ・グローバーは「パールは教養と知恵の象徴です。若い女性をリーダーになるべく、リーダーになる知恵を持つべく、訓練します」と、米ファッション誌『Vanity Fair』のインタビューで述べている。

パールのネックレスとイヤリング
副大統領候補に正式指名された際にも「パールのネックレス」を着用

それを具現化するにふさわしい副大統領に指名された際にも身につけ、普段も離さないこのパールのネックレスこそ、カマラ・ハリス上院議員を象徴するアクセサリーといえるだろう。

そして、これまでのようにハイヒールを痛みに耐えて履くより、軽快なスニーカーを選ぶ方がはるかに今の感覚だ。カマラ・ハリスさんのパンツスーツが「政治家にありがち」に見えないのは、機能性を重視したスニーカーとのコーディネートなどが、結果的にハイ&ローのモデルケースとなり、自分らしい選択の蓄積が個性となって共感を呼び、リーダーにふさわしいと受け入れられているからではないだろうか。

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この記事の執筆者
1987年、ザ・ウールマーク・カンパニー婦人服ディレクターとしてジャパンウールコレクションをプロデュース。退任後パリ、ミラノ、ロンドン、マドリードなど世界のコレクションを取材開始。朝日、毎日、日経など新聞でコレクション情報を掲載。女性誌にもソーシャライツやブランドストーリーなどを連載。毎シーズン2回開催するコレクショントレンドセミナーは、日本最大の来場者数を誇る。好きなもの:ワンピースドレス、タイトスカート、映画『男と女』のアナーク・エーメ、映画『ワイルドバンチ』のウォーレン・オーツ、村上春樹、須賀敦子、山田詠美、トム・フォード、沢木耕太郎の映画評論、アーネスト・ヘミングウエイの『エデンの園』、フランソワーズ ・サガン、キース・リチャーズ、ミウッチャ・プラダ、シャンパン、ワインは“ジンファンデル”、福島屋、自転車、海沿いの家、犬、パリ、ロンドンのウェイトローズ(スーパー)
PHOTO :
AFLO
WRITING :
藤岡篤子
EDIT :
石原あや乃