2019年は、日本におけるロイヤルファッションのメモリアルイヤーであった。

新天皇の即位、それに伴う「即位の礼」などの行事で、日本古来の正装の雅やかさを改めて認識し、同時に、国家的な行事に参列する、海外の王室の最高位の民族衣装や、フォーマルなドレスを拝見する機会にも恵まれた。

世界の中でファッション先進国とも言える日本だが、意外に知らないのは洋装のフォーマルのルール。友人のウエディングへ参列するくらいの知識だと、いざ王子様と出会い恋に落ちたとき(今の王妃はほとんどキャリアウーマン出身ですから)、慌ててしまいがち。

基本だけは常にしっかり押さえておきたい。まずは、即位の礼「正殿の儀」と「饗宴の儀」を例に解説しよう。

昼間の礼服「ローブ・モンタント」の着こなしルールとは?

まず、日中のフォーマルドレスから。昼間執り行われる「正殿の儀」は昼間の礼装「ローブ・モンタント」が正式な装い。和服であれば、「色留袖」が決まりだ。

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1959年、真っ白な礼服をまとった正田美智子さま(当時)

明治時代から、「通常礼服」と規定されている「ローブ・モンタント」とは、胸元を閉じ、丈が長く、裾を引く長さ。袖は手首まであるのが特徴。これに帽子を被り、手袋と扇子を持つ(例外的にミモレ丈もあるとされている)。

日本にいながらして、国際的な顔ぶれが装うフォーマルドレスを、緊張と静寂感に満ちた格調高い儀式とともに、拝見できるというのは、一生に一度あるかないかの貴重な体験ではないだろうか?

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レースを重ねた礼服を選んだ英国のエリザベス女王

カラーには規定はないので、日本の皇族は白やアイボリーの格調ある綸子などの地紋のあるドレスを好んで、お召しになっているが、海外の王室では、プリンセスの個性や好みに応じて、華やかなカラーや柄を選んでいるケースが主流だ。

「正殿の儀」に出席した、世界の王室の第一級の装いをチェック!

2019年10月22日に行われた「正殿の儀」に、絢爛たる色彩で圧倒した、スペイン王室のレティシア王妃を見てみよう。 

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色あざやかな「ローブ・モンタント」を選んだレティシア王妃

シャルトルースグリーン(アニスグリーン)の地に、ピンクや赤の大輪のバラを散らした華やかなプリントで仕立てられたローブモンタント。裾もトレーンを引いている。帽子の代わりに、広幅のカチューシャをターバンのようにつけて、ヘッドドレスに。ベルトやイヤリンッグも同じグリーンに統一して、カラーをより際立たせる。

夫のフェリペ六世の正統で完璧にルールに則ったフォーマルに対して、自らの華やかな存在感をいっそう強調するようなドレスの選択だ。

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華やかなヘッドドレスで視線を奪ったマキシマ王妃

雅子皇后との親交で知られるオランダのマキシマ王妃は、カラーこそブルーグレーの抑えた色調であったが、大きなバラの模様が裾から胸元にかけて、大きくパネル柄で広がるドレスを選択。それだけでも、十分に艶やかだが、話題をさらったのは、顔よりも大きいサイズの、薔薇を形どったヘッドドレスだ。太陽のような笑顔で知られるマキシマ妃の艶やかさを引き立てる、装いの最大のアクセントになっている。

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フェミニンな「ローブ・モンタント」を選んだメアリー皇太子妃

デンマークのメアリー皇太子妃も、ラベンダー味のグレーを選択。オーソドックスな装いを好む彼女らしく、シンプルでドレスコードにのっとったローブモンタントだが、長袖がそのままケープに繋がり、動くたびに手肌が見え隠れするという、保守的ながら主張のあるドレスになっている。

ローブモンタントとは、先述したようにネックラインまで覆う、長袖で腕を覆う、裾を引くロング丈で、肌の露出が少ないのが鉄則だ。ただ、その伝統のルールを自分らしく、個性的に解釈し、またヘッドドレスで、退屈になりがちなローブモンタントを、今様の装いに変身させ自由は無限に広がっており、これこそプリンセスのファッションセンスと腕の見せどころ。即位の礼という世紀のセレモニーで見せた、ロイヤルファミリーのデイフォーマルは、まさに各国のプリンセスのコレクションさながらの華やかさであった。


夜の最高位の礼装「ローブデコルテ」の着こなしルールとは?

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フォーマルな装いのなかでも個性感じさせる故ダイアナ元妃の着こなしは、女性の憧れの的
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故ダイアナ元妃らしい、モダンさや自由な振る舞いが、世界中を魅了

格式の高いローブデコルテとは、18世紀のフランスが発祥とされ、ネックラインが深くカットされ、首元から胸や肩を大きく露出するのが特徴。ティアラや、勲章、オペラグローブと呼ばれる、肘上まである長い手袋を着用することが多い。着る人の肉体的な美しさを誇示する役割もあり、話はそれるが、ヨーロッパでボディー用の化粧品が発達したのも、肌を見せる機会が多いからこそである。

「饗宴の儀」に出席した、世界の王室の第一級の装いをチェック!

夜に開催された「饗宴の儀」では、夜の最高位の礼装「ローブデコルテ」に身を包んだプリンセスたちが勢ぞろいした。

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気品あるゴールドレースの「ローブデコルテ」を選んだマチルド王妃

饗宴の儀で、高貴さを漂わせたエレガントな装いで、魅了したのは、ベルギーのマチルド王妃だ。父親は伯爵と言う名家の生まれで、結婚前に働いてはいたが、近年の王妃では、珍しく生粋のブルーブラッド(由緒正しい血統)である。

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昼間の礼服「ローブ・モンタント」では隙のないピンクのケープドレスに身を包んだマチルド王妃

ローブ・モンタントの隙のないピンクのケープドレスも素敵だったが、ローブデコルテでは、淡いゴールドのレースをチョイス。控え目だが、砂金のようにキラキラと輝くゴールドの上品さときたら、シンプルなデザインと相まって、まさに王家の気品を象徴するような優雅さであった。

故ダイアナ妃がまとったローブデコルテが、3300万円で落札へ!

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ジョン・トタボルタと踊る故ダイアナ元妃

最近3300万円で落札された、故ダイアナ元妃の「トラボルタドレス」。ホワイトハウスでこれを着て、俳優のジョン・トタボルタと踊ったため、そう呼ばれている。紺色のベルベットドレスも、ローブデコルテの代表的なデザインといえる。

文化によって異なる「フォーマル」のスタイル

他にも、最高位のフォーマルとして、民族衣装がある。

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ジェツン・ペマ王妃

例えばブータンの国王、王妃は昼も、夜もワンチュク国王は「ゴ」、ジェツン・ペマ王妃は「キラ」と呼ばれる民族衣装を身につけ、「饗宴の儀」では、王妃はティアラを身につけていた。ブータンは外出するときは、民族衣装を着ることが法律で定められているので、その意味でも、国を象徴するフォーマルのお手本といえる。

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写真左から/ 「饗宴の儀」に礼服で参加したグスタフ国王とマティーン王子

男性では、ブルネイのグスタフ国王のように軍服の礼服や、マティーン王子のような軍服の礼服に蝶ネクタイを合わせるのが正装となる場合もある。

200年ぶりの生前譲位という、世紀の瞬間を祝うために訪れた、世界の王室の第一級の装い。個性豊かに自分らしさを盛り込みながら、その装いはルールに従い、セレモニーへの敬意に満ちていた。

「服装コード」とは周りに対する配慮、気遣い、敬意の現れなのである。フォーマルになればなるほどこの「ルール」を守ることが求められてくる。なぜなら「ルール」とは品格のベースにあるものだからだ。

だから、あなたが王室に入ることになったら、フォーマルの服装コードだけは押さえて欲しい。ルールがあるからこそカジュアルも生きてくるし、レティシア王妃やマキシマ王妃のように、ファッションの振り幅を楽しめる。それに、何より大一級礼装は王室を頂点とする、限られた人にしか、そうそう装う機会がないもの。

特権は、楽しむためにあるものだから。

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この記事の執筆者
1987年、国際羊毛事務局婦人服ディレクターとしてジャパンウールコレクションをプロデュース。退任後パリ、ミラノ、ロンドン、マドリードなど世界のコレクションを取材開始。朝日、毎日、日経など新聞でコレクション情報を掲載。女性誌にもソーシャライツやブランドストーリーなどを連載。2000年より情報用語辞典『イミダス』でファッション分野を執筆。毎シーズン2回開催するコレクショントレンドセミナーは、日本最大の来場者数を誇る。好きなもの:ワンピースドレス、タイトスカート、映画『男と女』のアナーク・エーメ、映画『ワイルドバンチ』のウォーレン・オーツ、村上春樹、須賀敦子、山田詠美、トム・フォード、沢木耕太郎の映画評論、アーネスト・ヘミングウエイの『エデンの園』、フランソワーズ ・サガン、キース・リチャーズ、ミウッチャ・プラダ、シャンパン、ワインは“ジンファンデル”、福島屋、自転車、海沿いの家、犬、パリ、ロンドンのウェイトローズ(スーパー)
PHOTO :
AFLO
WRITING :
藤岡篤子
EDIT :
石原あや乃