自宅に友人知人を招く「ホームパーティー」。海外の映画やドラマのように、おしゃれでくつろいだ空間をイメージしていたはずなのに、実際は準備から片付けまでとにかくバタバタと忙しく、ゲストが帰ってから「本当に楽しめたのかしら……」と不安になってしまう、そんな経験をしたことはないでしょうか。

「ホームパーティーでいちばん大切なのは、ホストも一緒に楽しむこと」と明言するのは、盛り付けデザイナーとして活躍されている飯野登起子さん。自宅での料理研究会や、ゲストがいるときにだけ開かれる架空のおもてなし食堂「green食堂」の経験を活かし、2011年より自由大学で「おうちパーティー学」の講義を持つ、おもてなしのプロです。

盛り付けデモンストレーション中の飯野さん
盛り付けデモンストレーション中の飯野さん
尾道自由大学での講座「島根美食倶楽部とめぐる、窯元の旅」にて。出西窯にて、参加者とデザインをしたテーブル
尾道自由大学での講座「島根美食倶楽部とめぐる、窯元の旅」にて。出西窯にて、参加者とデザインをしたテーブル

まずはご自身でも数々のホームパーティーを主催し、その楽しみ方のメソッドを伝え続けている飯野さんに、今回はホームパーティーに関する心配ごとをストレートにぶつけてみました。

■心配ごと1:料理に自信がありません…

日常のご飯ならまだしも、パーティーに出すごちそうとなると気負ってしまい、どんなものをどれぐらい作ればよいか悩みます。また慣れないメニューに挑戦して失敗したらどうしようと、心配はつきません……。

「まずは、パーティーだからといって手料理にこだわらなくても大丈夫。料理が苦手なら持ち寄りパーティーにすればいいんです」

たしかに、持ち寄りなら失敗の心配はなくなりますが、今度は「持ち寄った料理がかぶってしまったらどうしよう」、あるいは「ゲストに負担をかけるのでは?」と思ってしまいます。

「そんなことはないですよ。誰でもホームパーティーに行くときは、何か差し入れを考えるもの。むしろホスト側がゲストそれぞれに持ち寄るようリクエストした方が、相手に負担をかけないと思います。

あるいは、テーマを決めて参加者全員で同じ料理を持ち寄るのも面白いですね。ポテトサラダなど、おなじみの家庭料理でも、それぞれの味付けのこだわりや個性が出て楽しいパーティーになるでしょう。以前に肉じゃがをテーマに皆さんに持ち寄っていただいたことがあります。ゲストの皆さんの出身地により、さまざまな肉じゃがが大集合し、盛り付けの工夫次第で楽しいパーティーが演出できました」

ご飯に味噌汁、コロッケ、肉じゃがなどの家庭料理も、盛り付け次第でこんなに素敵に
ご飯に味噌汁、コロッケ、肉じゃがなどの家庭料理も、盛り付け次第でこんなに素敵に
こちらはぬか漬け。脇役になりがちなメニューも主役になれる盛り付け
こちらはぬか漬け。脇役になりがちなメニューも主役になれる盛り付け
牛のたたきの鮮やかな赤に、補色の緑とエディブルフラワーが美しい
牛のたたきの鮮やかな赤に、補色の緑とエディブルフラワーが美しい

■心配ごと2:段取りが苦手で、慌ててしまいます…

おおよその時間は伝えてあっても、一斉に集まるわけではなく、どのタイミングでパーティーをスタートすればいいか迷ってしまいます。つい慌ててしまい、せっかく用意した料理を出し忘れたりすることも……。

「それなら“お品書き”を書いて、パーティの進行の目安にするといいですよ。例えば小さな黒板を用意し、チョークアートのように可愛く描けば、ホームパーティーらしさもアップしますし、ゲストも『次はこんなメニューが出るんだな』って聞かずともわかるのと、ホスト側も落ち着いて進行できます。

もし余裕があれば、前日までにつくっておいて、その写真をメールやLINEなどでゲストの皆さんへ送ってみてはいかがでしょう。『何時頃にメインの予定です』などと書き添えておけば、途中参加のゲストの方も時間の都合をつけやすいはず」

小さな黒板に本日のお品書きを。これならゲストにも自分にも当日の進行が分かりやすい
小さな黒板に本日のお品書きを。これならゲストにも自分にも当日の進行が分かりやすい
ボードはテーブルの上など見やすい場所に配置すれば、レストランみたいな演出にも
ボードはテーブルの上など見やすい場所に配置すれば、レストランみたいな演出にも

それならすぐに取り入れられそうです。それ以外にも慌てないコツはありますか?

「もちろん、料理をお出しするのであれば、仕上げ直前まで準備しておくのも大事ですが、大人数のときは紙皿を使ったり、片付けは後まわしにするなど、自分がラクできる工夫も大事。ホストが大変そうなパーティーより、ホストも一緒に楽しんでいる方がゲストもくつろげます。パーティで自分が何を大事にしたいか、優先順位を考えれば、省略できるところが見つかると思いますよ」

続いては、呼ばれた側(ゲスト)としての心配ごとも聞いてみました。

■心配ごと3:何を差し入れすればいいでしょう?

気心の知れた友人なら「何を持っていけばいい?」と聞けるのですが、初めて訪れる目上の方や、夫の知人などのお宅へ伺う場合は、どうしたらよいのでしょうか。

「パーティーにテーマがあれば簡単なのですが、特に知らされていないときは悩みますよね。でも実際は、たとえ親しい間柄でなくても、聞いてしまったほうがお互いのため。例えばホストがホームメイドケーキを用意していたのに、同じようなお菓子を持っていってしまったら、お互いに気まずいですよね。直接のお知り合いじゃない場合でも、仲介者を通して聞くのもいいでしょう」

聞いてみて「お気遣いなく」と言われてしまった場合は、どうすればいいのでしょう?

「その場合は、パーティー後日にホストに楽しんでいただいてもよいので、季節のフルーツなどはいかがでしょうか」

■おもてなしのプロが教えるホームパーティーの魅力

見ただけで楽しくなるテーブルの演出は、パーティー成功へのカギ
見ただけで楽しくなるテーブルの演出は、パーティー成功へのカギ

 

素敵なアイディアでホームパーティーへの心配ごとを払拭してくれた飯野さんですが、ここまでホームパーティーに魅了されているのはなぜなのでしょうか。

「自宅に来ていただくということは、プライベートな世界や趣味など、普段の生活を見せること。それ自体が相手との距離を縮める要素でもありますが、そこで食卓を共にすることでより親密になれるんです。

私は友人だけじゃなく、仕事で知り合った違う世代の方でも素敵な方だな、もっと知りたいなと思ったらお誘いします。自分はもちろん、そこで出会った人同士が仲良くなったら、さらにうれしいですし、そういう偶然の素敵な出逢いがたくさんつまっているのがホームパーティーなんです」

招いた人の普段と違う一面が見えるのもホームパーティの醍醐味
招いた人の普段と違う一面が見えるのもホームパーティの醍醐味

「専業の母として20年、自宅で普通に行っていたおもてなしから、現在開講している『おうちパーティー学』は生まれました。講義を受けた皆さんも、私がお伝えしたことをそのままやるのではなく、そこから発展させてオリジナルのパーティーを楽しんでいらっしゃいます。

私自身のパーティーも常に変化し続けていますが、変わらないのは"来てくださる方に楽しんでもらいたい"という気持ち。その思いがあれば、どんなパーティーでも大丈夫。皆さんもそれぞれの個性でホームパーティーを開いていけば、ご自身のスタイルが見つかると思いますよ」

PROFILE
飯野登起子(いいの ときこ)さん
鎌倉生まれ、鎌倉育ち。多摩美術大学デザイン科グラフィックデザイン専攻科卒業後、グラフィックデザイナーの粟津潔さんのアシスタントを務める。結婚後、子育てが一段落した頃から、自宅にてテーマに基づいた持ち寄り形式で盛り付けデザインやスタイリングを楽しむ料理研究会や、大切なお客様をお招きする架空のgreen食堂をそれぞれ100回近く開催。新宿伊勢丹、下鴨茶寮ディスプレイをはじめとする企業や窯元への盛り付けデザインやフードスタイリング等、近年では地方創生関連、日本各地の食のデザインも手がけるようになる。2人の息子の母でもある。

■飯野登起子さんの自由大学での講義のお知らせ

  • 日程/11/14・11/21・11/28・12/3・12/10(全5回)
  • 定員/15名 ※定員になり次第締切
  • 申込締切日/11月7日(火)
  • 授業料/28,000円(税込)
  • 注意事項/第2回目の盛り付けデザインワークに別途¥1,000 が必要となります。また、第5回のパーティーに必要なものは別途実費となります。
  • ※詳細・申込フォームはこちら
  •  
  • 日程/10/17・10/24・10/31・11/7・11/12(全5回)
  • 定員/15名 ※定員になり次第締切
  • 申込締切日/10月10日(火)
  • 授業料/28,000円(税込)
  • 注意事項/第3回講義は、教材費として1000円程度別途かかります。また、第5回の自主制作に必要なものは別途実費となります。
  • ※詳細・申込フォームはこちら

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この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
橘川麻実
EDIT :
青山梓(東京通信社)