「HACCI =(イコール)私。このブランドは私の人生です」──。そう語るのは、withコロナ時代の今、その免疫力アップ効果で注目を集めるはちみつをたっぷりと贅沢に使用した商品で人気のはちみつビューティブランド「HACCI」CEOの水谷 仁美(みずたに ひとみ)さん。
大正元年創業の老舗養蜂園「水谷養蜂園」の長女として生まれ、産湯にはちみつを使い、おやつにはロイヤルゼリーという、幼少期からはちみつに囲まれた環境で育った水谷さん。2人の子供を出産後、教育のため家族で米国へ移住。6年間を過ごし、帰国後の2004年、専業主婦仲間と2人で「HACCI」ブランドを設立しました。
HACCIホームページ
高品質のはちみつを使用しているのはもちろんのこと、従来のはちみつ製品の概念を覆すアイデアやエレガントなデザインが相まって幅広い層から支持を集める「HACCI」を生み出した水谷さんに、キャリアに関するエトセトラをうかがいました。
はちみつビューティブランド「HACCI」CEO 水谷 仁美さんへ10の質問
「実は就職したことが全くないんです。大学を卒業してから、いわゆる花嫁修行をして、結婚しました。住んでいた神戸にはそれが普通というムードもあって…。仕事は42歳にHACCIの仕事で社会人デビュー。それまでは専業主婦でした。実家の仕事は兄弟が継ぎ、私は全くタッチしていませんでした。
結婚後は子供2人を育てながら、米国で暮らしていました。私の生活の中心は子育て…のつもりだったのですが、実際は子供を通じて現地の人と交流し、私が一番刺激を受けてしまいました。
さらにはママ友達から何らかの形で、社会に接点を持つということの大切さを教えてもらいました。裕福な方も多かったですが、仕事はもちろんボランティアなど、自分の置かれた環境に甘んじることなくきちんと自分の足で立っていて。『OOちゃんのママ』ではなく、自分の名前で生きることを教えてもらいました」
「帰国後、子育てが落ち着いたとき、『米国で学んだように社会に出たい』と思ったのですが、いざ決意しても、バイトすらしたことがなかったので何から始めたらよいのか…。そのタイミングで同じく専業主婦の友人に出会い、『何か社会の役に立つことをしよう』と立ち上がりました。
そこで思い出したのが、ロサンゼルスで地元の主婦達との集まりに実家のはちみつを持っていったところ、その品質の高さにとても喜ばれたこと。あまりにも普通に触れていた実家のはちみつですが、それを通じてたくさんの人に喜んでもらえることを知った衝撃を思い出し、『これだ!』と。
女性の目線で、はちみつの革命を起こしたい、とスタートし、初めてつくったのが、アカシアのはちみつに美容成分を入れ、スポイトのついた容器に入れ、食べたり、肌に塗布したり、クリームや乳液などに一滴混ぜれば保湿力が高くなるアイテムです。
はちみつはもともと保湿成分が高いのですが、美白効果もあるし、殺菌力もある。その3つの効果が得られるのに、当時はまだ誰も商品化していなくて。そうだ、美容効果の高いはちみつに、さらにヒアルロン酸やコラーゲンを入れた商品をつくろう!とお風呂の中で思いつきました。
最初の商品である『ビューティーハニー』はリストバンドが付いていて、バッグに忍ばせても割れることなく安心して持ち歩けます。いかにも女性目線ですよね(笑)
転機は2006年6月6日から、銀座三越にに3か月間の催事としてHACCIを出店したこと。地下の食品売り場での取り扱いだったので、価格がコスメとしては普通でも食品としては高い、なんて言われたりもしていました。
最初の2か月の売上は一日2〜3本とか。ところがテレビで取り上げられた途端、突然朝から大行列に。毎日午前中で売り切れてしまい、午後はひたすら謝る…みたいなことが、夏の間ずっと続きました。そのうちコスメフロアからも声がかかり、化粧品に本格的に参入することになりました」
「現在は、商品開発からデザイン、SNS、社員教育に至るまで全部関わっています。歩いたり音楽を聴いたり、外から受ける刺激でアイデアが浮かぶことが多い、感覚的なタイプなので、いわゆるデスクワークではないです。
今はコロナ禍なので個室にいることが多いですが、普段は社員と同じスペースに紛れ込んで座っています(笑)そうすることで、社員が私に相談しやすい状況をつくっています。
仕事ってひとりじゃ絶対できないもの。チームとしてどれだけ成長できるか、ですよね。社員と方向性をきちんとシェアできるように、近くにいるようにしているんです。社員の9割以上が女性ですが、性別や国籍も関係なく、産休・育休なども取りやすい環境にしています。また、コロナ禍前はハワイ研修も実施したり、残業時にピザをとってみんなで食べたり…アットホームな社風なんですよ。
HACCIは毎年新しいことをしていく企業なので、みんなが同じ方向を向いていること、そしてスピーディであることが最重要。そのためにも距離が近いのがベストです」
HACCIは自分の子供のようなもの。海外進出は毎回エキサイティング
「海外展開です。当初は1〜2年目で海外へ、と思っていましたが、実際はしっかり日本でブランディングしてから進出という運びになりました。
各国それぞれ文化が異なり、石鹸ひとつとっても違います。ヨーロッパでは洗顔はクレンジングのみで洗顔石鹸は使わないんですよね。習慣などたくさん違いがあるなか、その国にあった製品をHACCIとして売り出していくのには、さまざまな葛藤があります。でも、日本の製品をそのまま持っていくのではなく、その国で喜ばれるものをきちんと作りたいんです。
現在はドバイ、香港、中国へ展開、さらにロシアも計画中。世界中からお話をいただいていますが、進出する際はその国のお客様がHACCIの商品を手にして喜んでくださる姿を思い浮かべて、毎回ドキドキします」
「全てです。クオリティは当然のこと、デザイン、文言、何ひとつ譲れません。HACCIは自分の子供のようなもの。仕事では完璧主義者かもしれません。
その分、プライベートはヘロヘロ(笑) ボーッとしています。先日も新幹線のチケットをなくしてしまって大騒ぎしました」
「いろいろな壁があっても諦めず、信念を貫くこと。そうすると、熱意が周りの方々に伝わり、みなさんとても協力してくれます。
HACCIが誕生したとき、それが私の人生になりました。私は理路整然と語れるわけではないのですが、『HACCI=マイライフ』の情熱が周りを動かすような気がします」
「商品に関しては絶対的な自信があるので、新しいことに挑戦する際も、何も迷わないです。とはいえ、周りの意見を一応は全部聞きますよ。そのなかから、これは!という意見を、ミツバチのような直感でキャッチする能力はあるのではないかな、と自負しています」
うまくいかないときは立ち止まる。悪いことと良いことは背中合わせ
「信頼の大切さ、物事を工夫すること、プロ意識を持つこと、がいかに重要かを学びました」
「アイデアとデザインの分野が得意です。HACCIのファンをいい意味で裏切ることをいつも意識しています。
コロナ禍前はフットワーク軽く海外へ出かけていました。常に動いて、24時間を充実させるよう心がけています。自分が充実していると、いいアイデアが浮かんでくるんですよね。もちろん人生、嫌なことはあります。でも、自分を常にいい状態に持っていくように努力しています」
「意識的に環境を変えます。そして、うまくいかないことは、そこで一度立ち止まり、考える。無理矢理に進めるのではなく、いいタイミングが来るまで待ちます。
コロナの影響によりインバウンド需要が少なくなり、売上も打撃がありましたが、だからこそHACCIに向き合う時間ができました。一方、はちみつの殺菌力が注目されて、さらにはちみつの良さが浸透しました。世の中って悪い面だけでなく良いことも背中合わせだな、と実感しました」
「とにかく失敗を恐れずに挑戦して欲しいです。その挑戦は何ものにも代えられない財産になります。気になる場所を実際に訪れたり、冒険や挑戦をすることで、パソコンのなかでは知り得ない体験ができるはず。失敗すればするほど、きっと自分の人生に厚みができます。ぜひ、チャレンジしてみてください」
以上、HACCI’s JAPAN CEO 水谷 仁美さんに伺った、キャリアについての10の質問でした。
明日公開の【リモートワーク編】では、愛用のチャットツールや自宅ワークスペース、水谷さんが感じるリモートワークのメリット、についてなどをご紹介します。どうぞお楽しみに!
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- TEXT :
- 神田 朝子さん ライター/ピアニスト
公式サイト:epiphany piano studio
- PHOTO :
- 黒石あみ(小学館)
- EDIT&WRITING :
- 神田朝子