映画のワンシーンに出てくるような、暖炉の前にロッキングチェアーを置いて、家族との団欒やひとりの時間を楽しむ光景。一度は経験してみたい憧れの暮らしですよね。

雪国のリゾートホテルなどでは暖炉がある場合もあり、その暖かさと揺れる炎の美しさに感動したことのある方もいるのではないでしょうか。

そんな暖炉ですが、実際に自宅で愛用しているという方はあまり多くはありません。薪ストーブを利用する人は増えてきているとはいうものの、煙突を設置する必要があるので、マンションや既存の住宅に取り付けるのはなかなか難しいもの。そんな「暖炉」を設置するためにかかる費用や維持管理費を事例とともにご紹介します。

今回ご協力いただいたのは、ヨーロッパや北欧の既存の暖炉から、ホテルやレストランのオーダーメイド暖炉まで幅広く手がける株式会社メトスの岩﨑秀明さん。暖炉にまつわるお値段や維持方法について、詳しくお伺いしました。

森永高滝カントリークラブのラウンジ(設計/レーモンド設計) 大きな石とフード型の暖炉が特徴的なオーダーメイドの暖炉

■中世ヨーロッパで誕生した暖炉はもともと日本の囲炉裏のようなもの

暖炉とは、そもそもどういったものなんでしょうか?

「中世ヨーロッパで誕生した暖炉は、木造の住宅の部屋の中心で火を燃やすもので、日本の囲炉裏のようなものでした。それが、建物が石やレンガなど耐火性の素材でつくられるようになっていったことで、暖炉の設置場所も壁の中へと移っていきました。

基本的には暖炉には薪を使いますが、ガスを使った暖炉やバイオエタノールを使った暖炉など、さまざまな燃料を使うことができるものもあります。薪の自然な炎は暖かさだけでなく、ガスやエタノールと違って炎の波長が不ぞろいで、刻一刻と変わる炎を見ると、自然と心が落ち着いていきます」

ガスを使った池の真ん中にあるオブジェ。本物の炎が神秘的な空間を演出(ウィザススタイル福岡 )

確かに、キャンプで焚き火を眺めていると、落ち着いた気分になってきますよね。

暖炉と似た「薪ストーブ」との違いはなんでしょうか?

「暖炉と薪ストーブは、どちらも薪で暖をとる暖房器具ですが、暖炉は壁に埋め込まれ家屋と一体化しており、暖炉の周りをレンガや石など好みの素材で装飾できます。大きな違いは、薪ストーブはストーブの中に炎がありますが、暖炉は燃え上がる炎を直接楽しめるという点です。

暖炉というと、レンガで周りを囲ったものをイメージしがちですが、鋳物製の暖炉を壁に埋め込んだものなど、さまざまなタイプの暖炉があります。最近のものは熱効率が高いものも多く、暖房器具としても優秀です」

■部屋に温かみをもたらしてくれる暖炉のメリットとは

暖炉を設置するメリットとして、どんなことが挙げられるでしょうか。

「暖炉のメリットは、調理ができることです。ダッチオーブンで煮込み料理を作ったり、オーブンのようにピザを焼いたり、燻製づくりも楽しめます。直火でつくる料理は素材のおいしさを引き出してくれるので、ガスでつくるよりもおいしいのがポイントです」

暖炉のなかで、マシュマロを炙ったりと、いろんな楽しみ方ができそうですね。

暖炉を設置すると、他にもいいことってありますか?

「ヨーロッパにおいて暖炉のあるところは、家族が集まったり、心が休まるところという役割があります。暖炉の上には代々伝わるお皿や家族の写真などを並べる伝統が今も続いています。暖炉があると部屋が温かな印象になりますし、スタイリッシュな暖炉を置けば、インテリアが華やかになります」

ベルギーの「Dovre」(ドブレ)というメーカーの暖炉。直線のフォルムがモダンな雰囲気

自然な暖かさと美しい炎、料理が楽しめるうえに、見栄えもするというのが暖炉のメリット。実際に設置してみたくなりますね。

■暖炉設置の前に煙突の設置がマスト。設置費用は200万円~

ズバリ、設置にかかるお値段はおいくらでしょう?

「暖炉を設置するためには、まず煙突を設置する必要があり、新築時やリフォーム時に設置する場合が多いです。オーダーメイドの場合、暖炉のサイズやイメージ、レンガや石などどんな素材を使うかといった用途によって金額は異なります。

既存のメーカーのユニットタイプのものなら暖炉自体が60万円くらいのものもあり、化粧工事を除き暖炉と煙突設置工事も含めて200万円くらいでできます。オーダーメイドの場合は材質やサイズによっても異なるので、高価なものについてはキリがありません」

薪ストーブよりも、自分好みの素材や大きさを選べることができるのが暖炉の魅力

屋根に煙突を通すための工事は大変そうですが、200万円くらいからできるのならば、設置を現実的に考えられるかもしれませんね。

■薪にかかる費用はひと月およそ5万円

暖炉に使う薪はどうやって入手すればいいのでしょうか。かかる費用はいかほど?

「薪は燃料店のオンラインショップなどから購入できます。その場合、1束が500円くらいで、1日3束使うとすると、1500円くらい。一か月で考えると、45,000円くらいでしょうか。

薪を使う暖炉は、乾燥していればどんな樹種でも問題ありません。ただし、スギやヒノキなどの針葉樹は着火しやすいが日持ちが悪く、ナラやクヌギなどの広葉樹は安定して火持ちするなど、それぞれの特性を知ることが必要です。

林業関係者から丸太を買ってチェーンソーと斧で薪づくりをしたり、植木屋さんから庭木の剪定でいらない木材をもらってくるなど、みなさん工夫しています。森で小枝を拾って、焚付けにしてもいいですし、薪を手に入れる工程も暖炉の楽しみのひとつです」

確かに映画などではよく拾ってきた木材を斧で割るシーンが見られますね。自然の中で木々を拾い集めるのはなんだか冒険みたいで楽しそう。岩﨑さんによれば、薪の他に、家屋の解体で出た廃材を暖炉で焚べて再利用している人もいるそうです。

暖炉の中のゆらめく炎を眺めながら、家での時間を楽しみたいですね

■灰となった薪は植物の肥料に。1年に1度の煙突掃除がマスト

なかなか想像のしづらい使い方やメンテナンスについてもお伺いしました。

「暖炉は焚付けとなる木っ端や割り箸、着火剤などを使って、薪を燃やします。暖炉で使う薪は1~2年ほど乾燥させる必要があるので、納屋や庭などに薪を置いておくスペースが必要ですね

メンテナンスは、薪が灰となるので、暖炉から灰をかき出す掃除があります。この灰は、植物の肥料となります。扉がついている暖炉の場合は、ススで扉が黒くなるので、扉をクリーナーで磨きます

また、1年に1度程度、煙突掃除が必要です。屋根の上に登って煙突からブラシを入れて掃除をします。シーズンが終わり、本格的に梅雨になる前の乾燥した時期のお掃除が最適で、業者に頼むことがほとんど。地域によって煙突掃除の費用は異なりますが、都内ならば清掃代金は5万円前後かかります

スウェーデン産の「コンツーラ Ci51 Fika」

最後に、岩﨑さんから改めて薪を使った暖炉の良さを教えていただきました。

「薪の暖かさは電気やガス、灯油とは明らかに違います。薪を使った人は、みんな『冬が待ち遠しい』と言うほど。体の芯から暖まりますよ」

暖かさ以外にもたくさんのメリットがある暖炉。一度工事をしてしまえば、数十年単位での使用が可能です。家族の団欒にひと役買ってくれるのならば、お得な買い物かもしれません。

問い合わせ先

  • メトス 
  • 営業時間/9:00〜17:30
  • 定休日/土・日・祝日、年末年始
    TEL:03-3542-0333(代表)
  • 住所/東京都中央区築地6-16-1 築地616ビル2F

  •  
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
長祖久美子
EDIT :
青山 梓(東京通信社)