身長156cmのインテリアエディターDが、おすすめのアイテムを実際に体験しながらレポートする本連載。今回は2回目の登場となるイタリアン家具ブランド「カッシーナ」から、美術史上重要な椅子として有名な「ブラック レッド アンド ブルー」ラウンジチェアをピックアップしました。

カッシーナといえば、いつかは手に入れたい憧れの家具ブランドとしても有名ですよね? だれもがカッシーナの家具とわかるアイテムを手にする喜びは、一流メゾンのバッグを買う高揚感と似た一面がありながら、生活の道具として信頼できる安心感も共存しています。

そんなカッシーナのなかでもトップクラスの名作といえる「ブラック レッド アンド ブルー」ラウンジチェア。さらに現代の暮らしにあった仕様にアップデートされたことで高まった魅力を、さまざまな角度からご紹介します。

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有名だけど持っている人は少ない「座れるアート」という選択肢

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シンプルな構造ながらパーツの交差による独特の空間的ハーモニーと美しいダイナミズム

「だれもが知っている椅子」ではないけれど、美術館や教科書で見たことがあるような気がする椅子。それが、原色の2枚の板が角材のフレームに載せられただけの、いかにも硬そうなリートフェルトデザインの「レッド&ブルーチェア」です。デザインされたのは1918年、オランダの近代デザインのムーヴメント「デ・ステイル」の思想を体現している作品でもあります。

当時は第一次世界大戦の混沌の真っただ中、曲線を多く用いたアール・ヌーヴォーから直線的なアール・デコへと装飾芸術の流行スタイルが移る頃でもありました。

「秩序への回帰」を掲げてピエト・モンドリアンとテオ・ファン・ドゥースブルフを中心として生まれた国際的な芸術活動「デ・ステイル」は、芸術家自身の個性を表面上から取り除き、精密さや全体的な調和を求め「垂直方向と水平方向の対比をシンプルにすること」「白と黒のほかには、原色のみを用いること」などシンプルで合理的な表現で普遍性を提唱したのです。その造形理念は芸術美を持ちながらも、社会に大きく影響を与えました。

現代の暮らしにも合うシックな配色と見た目を裏切るかけ心地! 

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【ブランド】カッシーナ 【商品名】BLACK RED AND BLUE(ブラック レッド アンド ブルー) 【写真の仕様の価格】¥775,500(本体:¥583,000、背・座クッション:¥192,500)【サイズ】本体:幅655×奥行き840×高さ875、座面高330、肘高500(mm) 背・座クッション:幅420×奥行き420~740×厚み50(mm) 【材質】本体/フレーム:ビーチ材・ブラック塗装、背・座:ビーチ材・グリーン塗装 オプション/背・座クッション:ポリウレタンフォーム・フェザーパッディング

オリジナルデザインは1918年に無染色・無塗装のもので作られましたが、この椅子をデザインした建築家のリートフェルトは、顧客の要望に合わせてさまざまな色の組み合わせを試していました。その中からカッシーナでは1920年ゼルマーカー邸のために作られた仕様を再現。「ブラック レッド アンド ブルー」ラウンジチェアとして販売しています。

配色の効果で、現代の暮らしにも合うシックな装いになり、オプションの背・座クッションをのせることで快適な座り心地を作り出しました。

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黒のビーチウッドのフレームに小口は白というコントラスト、座面と背もたれは深いグリーンのラッカー仕上げ

角度の妙と秀逸な寸法体系、シンプルな構造と低め座面の効果

実は、クッションなしのオリジナルの仕様でも意外なまでに快適なかけ心地で正直驚きました。座面の傾斜に身を委ねると背板にちょうど受け止めてもらえる寸法体系になっていて、膝裏も当たることなく両脚もきちんと着地します。なんとなく和の寸法体系を思い出させる感覚。

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日本建築を彷彿とさせるディテール。低めの目線で空間が広く感じられます

クッションがなくてもかけ心地はよかったですが、コンパクトな幅に対してアーム高が微妙に高く、雑誌を読もうとすると窮屈に感じました。

クッションをプラスすると快適なラウンジチェアに!!!

オプションのクッションは背と座が繋がった1パーツになっていて、置くだけの簡単な仕様になっています。女性でも軽く持ち上げられる重量と形状で、設置するときには下の写真で解説しているようにちょっとしたコツを押さえると、革を傷めることなく簡単に設置できます。

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クッションを「く」の字型に曲げて、アームの横から滑らせるとスムーズ
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アームの高さもちょうどよくなり、コンパクトでかけ心地のよいラウンジチェアに

「レッド&ブルーチェア」を生み出したオランダの建築家・デザイナーのヘリット・リートフェルト

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オランダの建築家兼デザイナー、ヘリット・リートフェルト(1888~1964年)

1888年、ヘリット・リートフェルトはユトレヒトで家具職人の息子として生まれました。1906年〜1911年まで宝石デザイナーとして働きながら美術工芸博物館の夜間授業で学び、その後1915年までP.J.クラールハメールに建築事務所のスタッフとして働き、1916年から新しい構造の家具の実験的な試みを始めます。

1918年「デ・ステイル」に参加以後、中心的存在に。1917年「レッド&ブルーチェア(赤と青の椅子)」を発表。このデザインによって建築理論の根本的な変化を提示します。リートフェルトが設計を手がけたシュローダー邸は世界遺産にも登録され、現在はミュージアムとして公開されています。

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「レッド&ブルーチェア」は美術史上重要なアイテムとしてニューヨーク近代美術館(MoMA)に所蔵

以上、カッシーナの名品「ブラック レッド アンド ブルー」ラウンジチェアと、そのオリジナルである「レッド&ブルーチェア」についてご紹介しました。

時代が大きく変わろうとする時には重要なデザインが生まれます。コロナ禍でライフスタイルがガラリと変わった現代では、非接触の技術や動画による企業プレゼンテーションなどデザインの領域も広がりました。

求められる技術や考え方が大きく変化する今、これから出てくる新しいデザインに注目するとともに、美術史に出てくる歴史的ターニングポイントになった椅子、いわば“座れるアート”を暮らしに取り入れて一緒に年月を重ねる毎日を慈しんでみませんか? 

※掲載した商品の価格は、すべて税込です。

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この記事の執筆者
イデーに5年間(1997年~2002年)所属し、定番家具の開発や「東京デザイナーズブロック2001」の実行委員長、ロンドン・ミラノ・NYで発表されたブランド「SPUTNIK」の立ち上げに関わる。 2012年より「Design life with kids interior workshop」主宰。モンテッソーリ教育の視点を取り入れた、自身デザインの、“時計の読めない子が読みたくなる”アナログ時計『fun pun clock(ふんぷんクロック)』が、グッドデザイン賞2017を受賞。現在は、フリーランスのデザイナー・インテリアエディターとして「豊かな暮らし」について、プロダクトやコーディネート、ライティングを通して情報発信をしている。
公式サイト:YOKODOBASHI.COM