女性の間で筋力トレーニングや健康的なボディづくりの関心が高まり、その手法のひとつとして「ラン=走る」運動を行う女性が増え続けています。
現に、笹川スポーツ財団による調査結果「成人のジョギング・ランニング実施率の推移(1998年~2016年):全体・性別」によると、ジョギング・ランニングを年1回以上実施している女性の割合は、2002年の3.4%から徐々に増えていき、2016年には5.4%となっています。
みなさんの中にも、周りの女性も走り始めたという声を聞くなどして、そろそろ始めようかと思っている方は多いのではないでしょうか。でも、準備のないままに始めると健康に不安が残ることも…。そこで健康的なランの始め方を、管理栄養士でジョギングインストラクターの深野祐子さんに教わります。
40代の女性が「ランニング」を始める前に知っておきたい「骨粗しょう症」リスク
深野さんによると、40代以降の女性がランニングをはじめる場合、注意したいことがあるのだそうです。
「40代は、日本人の平均閉経年齢の50歳へと向かっていく時期です。閉経後の女性は骨粗しょう症のリスクが高まるといわれています。閉経すると骨の代謝と深く関係している女性ホルモン『エストロゲン』の分泌が急激に低下するほか、加齢による胃酸の分泌の低下や、腸での栄養素の吸収機能の低下、運動不足や過度の飲酒、ストレスなど、40代は骨密度が低下しやすい条件が重なっているためです」
深野さんによると、ランニングは40代以降の女性におすすめの運動なのだそうです。
「ランニングは有酸素運動としてもそうですが、骨を丈夫にするためにもおすすめの運動です。というのも、骨を丈夫にするためには、骨に十分な刺激を与えることが重要だからです。ただ40代以降は骨密度が低下しやすいので、ランニングを行うだけではかえってケガのリスクを高めたり、骨粗しょう症のリスクを高めたりする可能性もあります。もちろんランニングのやりすぎもNGです。同時に骨を強くする栄養素を食事で積極的にとることがポイントです」
骨を強くする栄養素
・カルシウム(骨の材料となる・骨を強くする)…乳製品・小魚・大豆製品・緑黄色野菜など
・ビタミンD(カルシウムの吸収を助ける)…鮭・さんまなどの魚、干しシイタケなど
・ビタミンK(骨の形成を助ける)…納豆、ほうれん草や小松菜などの緑黄色野菜など
・たんぱく質(骨や筋肉の成分)…肉・魚・たまご・大豆製品など
ランニングをはじめる前にチェックしたい3つのポイント
健康を保つためにも、将来の骨粗しょう症リスクのためにも実践したいランニング。深野さんによると、走り始める前には、次のことを行うといいそうです。
「ランニング初心者の方や運動が久しぶりの方は、体が硬かったり、筋力が低下していたり、心肺機能が低下していたりしている状態です。やみくもに走るとすぐに疲れてしまいます。急にランニングを始めると、膝や腰などを痛めたり、けがをしてしまったりすることも。せっかく健康のために始めたランニングで故障、病院通い…なんて話もよく聞きます。なので次のことを心がけましょう」
■1:「ウォーキング」で身体づくりを
「ウォーキングは、ランニングを行う上で重要です。特に急に走って膝などを痛めるリスクを減らしますし、低強度の有酸素運動として脂肪を燃やし、ランニングする身体に変えていきます」
■2:正しいフォームで行う
「ランニングもウォーキングどちらも正しいフォームで行うことが大切。正しい姿勢作りのポイントは、つま先をそろえて気を付けの姿勢で立ち、おへその下に手のひら、背中に手の甲を置いて息を吐きながらお腹をへこませた状態をキープすることです」
■3:ウォーキングから「ジョグウォーク」へ
「この正しい姿勢による30分のウォーキングが習慣化してきたら、ウォーキングの合間にランニングを少しずつプラスしていくジョグウォークを。10分ウォーク⇒5分ジョグ⇒10分ウォーク⇒5分ジョグ⇒5分ウォークというように、徐々にランニングの時間を増やしていくようにしていくのが、健康的にランニングを行うポイントです」
いつ走ればいいの?朝RUN・夜RUNのポイント
徐々にランへとシフトしていき、ぜひランニングを支障なく続けたいですよね。では、実際、いつの時間帯に行うのがいいのでしょうか。
「ご自身の取り組みやすい時間帯でOKです。働く女性の場合、平日ですと仕事終わりに行うことが多いようですが、まずは継続することが重要なので、ご自身のライフスタイルに合わせて行うといいです。ただ、時間帯によってランニングで得られる効果や注意点が異なります」
■1:朝RUN
●メリット
代謝が高まり、脂肪燃焼効果が期待できる。
●気をつける点
・起床してからすぐの体は、水分不足、および血圧の大きな変化が起こりやすい状態なので避ける。空腹状態では体温も低いので、体は十分に運動の準備ができているとはいえない。
・前日からの睡眠時間がいつもより少ない、二日酔いなどのときは無理して走らない。
・起床後は必ずコップ1杯の水などで水分補給をし、バナナ1本程度の軽食を食べ、ウォーミングアップを入念に行ってから。
■2:夜RUN
●メリット
体温が高く、体の活動スイッチが入っているので、朝と比べて長い時間・強度の高いランニングにも取り組みやすい。
●気をつける点
・ランニングが終わった後に夜ごはんを食べようとすると、夜ごはんを食べる時間が遅くなりがちになるのはもちろん、ランチ(昼食)から時間が経って、空腹のまま走ることになるので、走る前に軽食、例えばエネルギーゼリー、おにぎりや肉まん1個、バナナ1本程度を食べ、夕食を軽めにするのがおすすめ。
・寝る直前の運動は体が興奮状態になって寝つきに影響してしまうため、できるだけ睡眠時間の2~3時間前には終了するように気をつける。
・できるだけ明るい場所を選ぶ、ウェアも黒っぽいものではなく、反射板のついているものなどを選ぶなど安全にも配慮する。
ランニングは「ロコモ」予防にも
近年、よく耳にするようになった「ロコモ」という言葉。40代以降にランやウォーキングなどの適度な運動を継続することは、ロコモ予防にもつながるのだそうです。ぜひロコモについても知っておきましょう。
●ロコモとは?
「ロコモティブシンドローム(以下、ロコモ)とは直訳すると『運動器症候群』で、筋肉や骨をはじめとした運動器の障害のために、立つ・歩くなどの移動機能の低下をきたした状態です。
ロコモは進行すると移動機能が限られ、ひどくなると寝たきりになり、介護が必要になるリスクが高くなることから、近年メタボリックシンドロームと合わせて重要なファクターとなっています」
●ロコモの要因
「ロコモの要因としてあげられるのが、運動習慣のない生活、やせすぎ/肥満、活動量の低下、そしてスポーツのやりすぎなど。骨や筋肉量のピークは20~30代ですから、当然、徐々に衰えていきます。女性は体の変化がある40~50代で急激に衰えや不調を感じやすくなりますが、ランニングは運動習慣がつきシェイプアップにも最適な運動となります」
●過度に走りすぎない
「走るときに注意したいのは、加齢と共に、やりすぎによる筋肉や骨、関節へのダメージが出てくることです。脊柱管狭窄症や変形性膝関節症、股関節症などには気をつけなければなりません。また『走る』ことにハマり、習慣づいていた方が故障をしてしまうと、急に運動量が減ることになり、体重の増加など悪いサイクルに変わっていってしまう場合もあります。走っているのだから、健康で他の人よりも筋肉も骨も強いであろうとたかをくくらず、将来的にロコモにならないよう、過度に走ることのリスクを知ることも大切です。健康のために始めたランニングが過度なスポーツになりすぎないように注意が必要です」
ランを始めたいと思い、今すぐ走ろうと思っていた方は、ぜひこれらの注意点やポイントをよく押さえて、健康的に走りましょう!
Japanマラソンクラブ
http://www.jmcrun.com/
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 石原亜香利