【目次】

太りすぎも痩せ型も…体重の基礎知識


上西 一弘先生
女子栄養大学 栄養学部教授 栄養学博士
(うえにし かずひろ)徳島大学医学部栄養学科卒業。食品関連企業に就職し入院患者向けの流動食の開発に携わる。1991年より女子栄養大学に勤務。食べることを一歩進め、選手のパフォーマンスが上がり、勝てる身体を作るためのスポーツ栄養学を研究し指導を行う。

■栄養バランスのとれた食事とBMIを把握しよう

バランスのとれた食事、とはよくいわれ、そうしたほうが良いとわかっていても、忙しい毎日ではなかなか難しい場合もあります。バランスのとれた食事の正しい内容とはどんなものでしょうか?免疫力アップのための、バランスのとれた食事に大切なポイントをご紹介します。

【バランスのとれた食事3つのポイント】

【POINT1】 PFCバランス(タンパク質・脂質・炭水化物)がとれていること

適切な体重維持のためのエネルギー摂取。

【POINT2】 ビタミン、ミネラルがとれていること

代謝をサポートするビタミン12種類、ミネラル4種類を摂取。

【POINT3】水分摂取(熱中症対策含む)

食事を抜くと水分摂取量は減少する(さらにマスク着用で喉の渇きが鈍くなる)ため。

「PFCバランス、つまりタンパク質、脂質、炭水化物の3点がバランスよくとれていることが大切です。適切な体重維持のためのエネルギー摂取のことをいい、炭水化物が50~60%、脂質が20~30%、タンパク質が15~20% がベストバランスといわれています。どれかが多すぎても少なすぎても、よくありません。肥満や痩せすぎの原因になるからです。特に、高齢者は痩せすぎに注意が必要です。年代別で目標とするBMIが出ていますので、参考にしていただき、自分の体重が目標範囲内にあるかをチェックし、目標体重を維持していくことが大切です。痩せていることや太っていることは、ウイルス感染しやすいリスクにもなります」(上西先生)。

【目標とするBMI範囲】

<年齢>→ <目標とするBMI)>
18~49歳 → 18.5~24.9
50~64歳→ 20.0~24.9
65歳以上 →  21.5~24.9

「前述のように、免疫低下を防ぐにはビタミンとミネラルの摂取が大切です。特にビタミンはビタミンA~Eまで全てのビタミンが免疫に関係しています。ですから、色々な食品から摂取する必要があるのです。

例えば、外出先であれば単品よりは定食を頼むなど、様々な食材が摂れるような食事になるよう工夫するといいと思います。サプリメントからの摂取もできなくはないですが、取り合わせや人によって体質も違うことから、できるだけ食事からの栄養摂取をおすすめします。そして、免疫アップにも欠かせないうえ、特にこの時期は熱中症対策としても忘れてはならないのが水分摂取です。人は1日に2.3~3.5Lもの水分が必要とされるため、十分な水分と電解質の補給が大切です。

特にマスクをしているこの頃は、喉の渇きも感じにくいため、注意して水分補給しましょう。食事を抜くのは水分摂取量が減少してしまうので、気をつける点です。しっかりと食事から水分を取ることが大事です。食事から50%の水分が摂れます。朝食を抜いてしまう人は、熱中症になりやすい人が多いともいわれています」(上西先生)。

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痩せ型の人の特徴とは?


■摂取カロリーよりも消費カロリーが多くなりすぎている

森 拓郎さん
ボディワーカー
(もり たくろう)大手フィットネスクラブを経て、2009年に自身のスタジオ「rinato(リナート)をオープン。モデルや女優からも大人気で、ピラティス、整体、美容矯正などのボディメイクをはじめ、食事によるダイエットの指導も行う。テレビや雑誌など多くのメディアでも活躍する他、ベストセラーにもなった著書『オトナ女子のためのヤセ方図鑑』(ワニブックス)や、『ダイエット事典(飛鳥新社)』も話題の的。
摂取カロリーより、消費カロリーを多くすることは、体脂肪を落とすための基本。
摂取カロリーより、消費カロリーを多くすることは、体脂肪を落とすための基本。

40代にもなると、代謝の衰えを気にして、食べる量を減らしたり、野菜中心の食事にするなど、カロリーオフに精を出す方も多いのですが、果たしてこれは、正しいダイエット法と言えるのでしょうか?

摂取カロリーより、消費カロリーを多くすることは、体脂肪を落とすための基本です。しかし、食べる量を減らすことで、最初は体重が落ちても、体はその低カロリーの食事に合わせて代謝を落としてしまうので、長期的には太りやすい体を作ってしまうことになります。体は少ないエネルギーしか入ってこなければ、体の代謝を落とし、余計なエネルギーを消費する筋肉を落としていくというワケです。

特に、40代女性にとって良くないのが、早く痩せたいからと、食事を減らして、激しい運動をすることです。エネルギー不足になり、筋力が落ちて、代謝が下がり痩せにくくなるばかりか、栄養不足で老化を加速させてしまいます」(森さん)。

ダイエット指導の達人・森 拓郎さんに聞く! 40代女性が陥りがちな「間違ったダイエット」とは?

■必要なカロリーが摂取できていない

豊永 彩子さん
管理栄養士(フリーランス)
(とよなが あやこ)米国NTI認定栄養コンサルタント。栄養の知識とカロリー計算を中心とする基礎栄養学だけでなく、メンタルヘルスにフォーカスし解剖生理学なども統合したホリスティック栄養学※や、カラダ本来のメカニズムを整えるメゾット(姿勢や呼吸・味覚)をプラスした考え方で、ダイエット/食事カウンセリング・セミナー講師・商品監修・レシピ本出版/書籍レシピ提供 ・レシピ提供などを多数手がける。

成人女性の消費カロリーは基礎代謝だけでも1日1,200kcal前後と言われています。管理栄養士の豊永彩子先生によれば、女性は毎日最低でも約1,800kcal程度を必要としていて、この必要量に1日でも足りない日があると、体内の栄養素が犠牲になります。エネルギーが慢性的に不足すると、筋力や肌、髪のつやといった生命維持に直接関わりのない部分から支障が出始め、さらには冷えや疲れ、精神的なアンバランスなどにつながっていくそう。

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■食生活を見直す

森 拓郎さん
ボディワーカー
(もり たくろう)大手フィットネスクラブを経て、2009年に自身のスタジオ「rinato(リナート)をオープン。モデルや女優からも大人気で、ピラティス、整体、美容矯正などのボディメイクをはじめ、食事によるダイエットの指導も行う。テレビや雑誌など多くのメディアでも活躍する他、ベストセラーにもなった著書『オトナ女子のためのヤセ方図鑑』(ワニブックス)や、『ダイエット事典(飛鳥新社)』も話題の的。

(1)高たんぱく・中糖質・低脂質な食事を心がけよう

たんぱく質は魚から摂取する方が、脂質を下げやすい。
たんぱく質は魚から摂取する方が、脂質を下げやすい。

40代女性が心がけたいのは、程よく糖質を摂ることと、積極的なたんぱく質の摂取。脂質はなるべく減らしつつ、食事の時には良質なタンパク質を必ず摂取するようにすると、良いバランスを保つことができます。エネルギー源となるご飯は白米、玄米、雑穀米など何を食べてもOK。また、できるだけ魚を食べる方が、低脂質で高タンパクな食事メニューを作りやすくなります。タラやサケ、タイなどの白身魚、アジ、イワシ、サバなどの青魚がおすすめです」(森さん)。

【たんぱく質の1日の摂取量について】

「1日に必要なたんぱく質量は体重1キロあたり1グラム。例えば、体重50キロの女性であれば50グラムのたんぱく質が必要です。代謝アップを狙うなら体重1キロあたり1.2グラムくらいを目指して摂取しましょう。1日に肉と魚を手のひら2枚分、これに卵1〜2個、納豆や豆腐など2〜3品プラスするのがおすすめです」(森さん)。

【1食における理想の献立は?】

「理想の献立は、肉、魚、卵などの動物性たんぱく質と、納豆や豆腐などの植物性たんぱく質を組み合わせ、1食『見た目の50%』をたんぱく質にするのが理想的です。うち動物性たんぱく質と植物性たんぱく質の割合は7:3が目安と成ります。圧倒的にたんぱく質が不足気味なので、毎食、十分に摂取するように心がけましょう」(森さん)

【プロテインドリンクもおすすめ】

「間食など甘いものが欲しくなる人は、プロテインドリンクを飲むことで、欲求を抑えられる方も多いようです。手軽に手に入るので、取り入れてみるのもおすすめです」(森さん)。

(2)「ベジタブル・ファースト」よりも「プロテイン・ファースト」を意識

お肉などのたんぱく質は代謝をアップに欠かせない。
お肉などのたんぱく質は代謝をアップに欠かせない。

血糖値の上昇を抑えたり、食べ過ぎ予防にも効果があるとして、野菜を先に食べる食事法、ベジタブル・ファーストが話題になりました。食べ過ぎが心配な方は、この食べ方はおすすめです。しかし、代謝を良くすることが目的であれば、プロテイン・ファーストを意識する方が良いでしょう。たんぱく質を優先しても、血糖値の急上昇は防げます。ビタミンやミネラル、食物繊維を含む野菜の摂取は大切ですが、肉や魚、卵などのたんぱく質の方が栄養価も高く、ダイエットには効果的です」(森さん)。

(3)食べ過ぎた翌日は「絶食」「減食」でなく、食の調整を!

「外食など食べ過ぎた翌日は、前日に食べ過ぎた分を調整することは大切ですが、絶食したり、量を少なくするのは、栄養不足になりかえって逆効果。意識すべきは、何をどれくらい食べるかということなのです。

例えば、前日に食べたもので脂質が多かったのであれば、低脂質なものを選び、糖質やタンパク質は最低限の量を摂取すればOK。具体的には、ご飯、味噌汁、白身魚や大豆を使ったお惣菜などを組み合わせた、脂質を控えめにした和定食がおすすめです。自分が食べ過ぎたものをある程度把握しておけば、翌日に何を食べるべきかがよくわかります。サラダにしたからといって、ドレッシングをたっぷりかけていたら、脂質がオーバーになるので気をつけましょう」(森さん)。

(4)噛み応えのある、自然の素材を使った食事をしよう

食事はしっかりと噛んで食べる習慣を。
食事はしっかりと噛んで食べる習慣を。

麺類、柔らかいパン、スープなど、あまり噛まなくていい食べ物は避け、よく噛んで食べる食材を選ぶようにしましょう。咀嚼は脳を刺激し、摂食中枢に働きかけて、食欲を正しく制御します。また、顎の力が弱ると、フェイスラインが崩れる他、首が短くなり、首の横ジワも目立つようになります。美容面においても、しっかり噛んで食べることは重要というわけです」(森さん)。

(5)1日2ℓの水を飲む必要なし!食事中の水分摂取も控えめに!

「『水は1日2ℓ飲む』という説がありますが、科学的な根拠は一切ありません。水の過剰摂取は、水分代謝が低い方の場合、むくみの原因になることも。夏場なら1ℓ、冬場なら500mL程度で十分です。飲めば飲むほど老廃物が排泄されたり、痩せるといったこともないので、ほどほどにしておきましょう。また、食事中の水分の摂りすぎは、噛む回数を減らしてしまうので、控えめに」(森さん)。

ダイエット指導の達人・森 拓郎さんに聞く! 40代女性が陥りがちな「間違ったダイエット」とは?

■筋トレをする

田中 詩織先生
東京大学医学部卒業。総合内科医を経て「筋肉・美容クリニック」を麻布十番に開院。コンセプトは、医学的な根拠に基づいた治療とトレーニングによって、一生ものの体づくりをサポートすること。
筋肉をつけると肌がきれいになる。
筋肉をつけると肌がきれいになる。

年齢と共に崩れはじめるボディラインに対し、大人の女性が行うべきは、ダイエットではなく筋トレ。 豊かな存在感と凛とした意思を感じるライン、しなやかな筋肉で、素敵に体を支えたい!筋肉が私たちにもたらすメリットや、筋トレの必要性とともに、身につけたいのは筋肉に関する正しい知識。効率よく筋肉を鍛えるためのトリビアを現役ドクターが指南します。

(1)筋トレにいちばん向いている時間帯は朝食前

朝食前の時間は体内に糖分が少なく、体脂肪の分解が促進されるので、体を引き締めるための筋トレにはベストなタイミング。また、筋トレにより、アドレナリンやエンドルフィンなどが分泌されることで、1日を活動的かつハッピーに過ごせる効果も。ただし起き抜けは筋肉が冷えているので、ケガ予防のために入念なストレッチを。

(2)有酸素運動は筋肉を減らす

脂肪燃焼に効果のある有酸素運動ですが、長時間の有酸素運動は、筋肉を分解してエネルギーに変換させてしまうため、実は筋肉も一緒に落としてしまう可能性があります。有酸素運動の前に、エネルギー源となる必須アミノ酸BCAA(バリン、ロイシン、イソロイシンの総称)を摂取すると、そのリスクを回避することができます。

(3)筋肉をつけると肌がきれいになる

筋トレによって増える成長ホルモンが肌のターンオーバーやダメージ修復を促進。筋肉量が増えると血流もよくなるので、美肌をキープするためには筋肉をつけることが不可欠です。また2018年に、運動によって分泌される生理活性物質“マイオネクチン”に、メラニンの生成を抑制する働きがあることも発見されています。つまりは、筋トレすれば、透明美肌まで手に入るということ!

ドクターに聞く!これから筋肉美人を目指すための一生モノの「筋肉基礎知識」

この記事の執筆者
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