豊かさの意味を知る、どんな場所で、どう暮らしていきたいのか。年齢もキャリアも重ねてきたプレシャス世代にとって、それは豊かな人生を送るための、大切な選択のひとつ。雑誌『Precious』6月号では、南仏の小さな街で暮らすことを選んだ3人の穏やかで、より自分らしく過ごす日々を取材しました。
今回は、インテリアデザイナーのカリーヌ・ブラウンさんのお住まいをご紹介します。
「便利ではない暮らしは、自ら考えて動くことや自分の力で生きるたくましさを与えてくれました」
「この家を購入した20年前は、一面、野原でした。外科医の夫はN.Y.に残り、私は小さな子供たちを連れて先に移住、ひとりで家を整えました。キッチン、子供部屋、寝室、リビング、プールや庭まで少しずつ。インテリアデザイナーとしての知識と経験を生かしながら、自分のアイディアでデザインし、ゼロからつくり上げていくのが本当に楽しくて。庭が完成するまで6年もかかったのよ」
そう笑いながら広大な敷地を案内するカリーヌさん。総面積約1ヘクタールに及ぶ邸宅は、1780年代、Ferme du Château(農園の城)として建てられたもの。リビングのアーチ形の天井はそのまま生かし、全面に大きな窓を配置し、開放的に。キッチンは機能性重視でアイランド型の台を設置するなど、シャトーの重厚な雰囲気を、現代の暮らしに合うよう工夫したのだとか。
「大都会マンハッタンのコンビニエント(便利)な暮らしと、ここでの暮らしは真逆。土や石、木や花など自然と対峙しながら、自分で考え、動かなければ何も解決しない生活のおかげで、自分の力で生きるたくましさを身につけました」
「このユゼスの広大な庭はしっかりと土に根ざしていて、自然との共存を実感できます」
土の香りがする暮らしに憧れて、何度も旅した南仏で物件を探し始め、この家のワイルドな環境に魅せられたというカリーヌさん。
「私にとって庭は、家の重要な要素のひとつ。植物の生き生きとした姿、四季折々の表情は、ポジティブなパワーを与えてくれます。マンハッタンのペントハウスにも屋上に庭がありましたが、このユゼスの広大な庭は、しっかりと土に根ざしていて、自然との共存を実感できるんです」
何もなかった野原に植樹し、花を植え、プールを造営。かつて使用人の部屋だった別棟をゲストルーム兼プールハウスに改築しました。
「朝は鳥たちのさえずりで目覚め、紅茶を飲んだら厩舎へ行き、馬たちをブラッシング。乗馬後、シャワーを浴びてプールハウスで読書をするのが至福の時間です。ランチの後は少し仕事をして、夫と夕食をすませたら、それぞれ好きな場所で過ごします。自然と動物たちとの穏やかな日々はあまりに美しく、かけがえのないものだと実感しています」
カリーヌさんのHouse DATA
●場所…ユゼスの中心地から車で約20分。
●建物…1780年代に建てられたFerme du Château(農園の城)。
●間取り…ダイニングキッチン、リビング×3、仕事部屋×2、主寝室、子供部屋×2、ゲストルーム、バスルーム×4、プールハウス(兼ゲストハウス)
●家族構成…夫とふたり(子供たちは独立)、犬3匹、馬3頭、鳥、鯉
●訪れる頻度…20年前に移住し、こちらがメインハウス。同時期にモロッコにも別荘を購入。現在、そちらの改装工事に夢中。
●ここに決めたいちばんの理由…土の香りがする場所。豊かな自然と歴史ある建物のコントラスト。敷地をゼロから自分でデザインできる面白さ。
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- PHOTO :
- 篠あゆみ
- EDIT&WRITING :
- 田中美保、古里典子(Precious)
- 取材 :
- 鈴木ひろこ