星野リゾートが展開する温泉旅館ブランド「界」は、全国に22施設。どの施設も、各地の温泉とともに地域ならではの歴史や文化を味わうことをコンセプトにしています。
その中の一つ、石川県・山代温泉に位置する「界 加賀」は、北大路魯山人など多くの文化人に愛された老舗旅館「白銀屋(しろがねや)」が前身。国の登録有形文化財にもなっている伝統建築棟や茶室、加賀友禅・加賀水引といった伝統工芸など、きらびやかな加賀の伝統と文化に浸ることができます。
こちらの「界 加賀」に、2023年4月より、伝統的な金継ぎで大切な器を守る「金継ぎ工房」がオープンしました。
日本初、温泉旅館に「金継ぎ工房」が誕生
「金継ぎ」とは、陶磁器の破損部分を漆によって接着し、金などの金属粉で装飾して仕上げる日本の伝統的な修復技法のこと。温泉旅館の内部施設に金継ぎをする専用の場所が誕生することは、日本初となります。
「界 加賀」では、旅館ゆかりの文化人である北大路魯山人の「器は料理の着物」という言葉に倣い、器を宝物として大切に扱ってきました。2015年の開業当初から、地元の九谷焼や山中塗の作家の手による器を毎日使用する中で、劣化・破損した器を廃棄するのはもったいないと感じた元蒔絵師のスタッフが「金継ぎ」を提案。2019年より、大切な器を守っていくことを目的に取り組みが始まりました。
今では金継ぎができるスタッフは全体の半数を超え、修復を行った器の数は300点以上に。今後もスタッフが器を宝物として捉え、より本格的に取り組むための施設として「金継ぎ工房」が誕生しました。工房では、合成樹脂を含まない天然漆で仕上げる本格金継ぎで、スタッフが自ら器の修復を行います。
「界 加賀」の金継ぎ工房の特徴
■1:天然漆で伝統的な金継ぎを行う工房
漆とは、ウルシの木から採れる樹液のこと。「界 加賀」では、天然漆をはじめとした自然の素材のみを使って器を継ぐ、伝統的で難易度の高い「本格金継ぎ」を行っています。
■2:使命感あふれるスタッフが金継ぎ技術を習得中
金継ぎ工房で器を継ぐのは、温泉旅館のスタッフとして接客サービスを行う「界 加賀」のスタッフ自身。
漆で接着する本格金継ぎは、1つの器を継ぐのに1か月以上を要する、根気のいる作業だそう。地元の金継ぎ作家である中岡庸子氏を講師に招き、日々学び続けながら修繕活動を行っています。
■3:宿泊ゲストが金継ぎの一部を体験できる「金継ぎいろは」
宿泊者が金継ぎの一部を体験できる取り組み「金継ぎいろは」。金継ぎの数ある工程のうち、欠けた器を漆のパテで埋める「埋め」、継いだ部分に金粉を蒔く「粉蒔き」、蒔いた金粉を漆で固める「固め」のいずれかを体験することができます。金継ぎの一部を実際に体験することで、金継ぎ技術の難しさ、奥深さを自身の手で体感して。
※湿度や気温、その日の作業状況により、体験できる内容は異なります。
■4:登録文化財の古建築と展示品のこだわり
紅殻格子(金沢の町屋の外観でみられる建築様式)が特徴の伝統建築棟は、約200年前に建てられた国の登録文化財。内装も格子の色と合わせた紅殻色の壁とし、壁には実際に金継ぎで使う道具類が展示されています。窓からはスタッフが器を修復している様子を見ることも。
以上、「界 加賀」に新しくオープンした「金継ぎ工房」についてご紹介しました。宿泊の際は、ぜひご自身の手で、器を慈しむ伝統文化を体感してみてはいかがでしょうか?
問い合わせ先
- 「界 加賀」金継ぎ工房
- オープン日:2023 年4月19日(水)
時間:見学/15:00~17:30
金継ぎいろは/15:30~30 分間
定員:金継ぎいろは6名
対象:宿泊者、12 歳以上を対象
「金継ぎいろは」予約:当日現地フロントにて予約
料金:無料
問い合わせ先
- TEXT :
- Precious.jp編集部