140年以上建設中…の聖堂、ついに完成間近!? ガウディとサグラダ・ファミリアのすべてを解き明かします

天に向かって生き物のように伸びてゆく多数の塔、うごめくような数々の彫刻…。スペイン・バルセロナの建築家・ガウディと、サグラダ・ファミリア聖堂を大解剖! 旅好き、建築好き、歴史好きも大満足の濃密な展覧会を、美術ライターの浦島茂世さんに紹介していただきました。

浦島茂世さん
美術ライター
All About「美術館」ガイド。古今東西のアートに幅広い見識をもつ。最新刊は街角アートの歴史と魅力を紹介した『パブリックアート入門 タダで観られるけど、タダならぬアートの世界』(イースト・プレス)。

スペイン・バルセロナのサグラダ・ファミリア聖堂
サグラダ・ファミリア聖堂、2023年1月撮影(C)Fundació Junta Constructora del Temple Expiatori de la Sagrada Família

まさか、自分が生きているうちに完成時期が視野に収まるとは思っていませんでした(笑)。サグラダ・ファミリア聖堂。言わずと知れた、スペイン・バルセロナのガウディ建築です。1882年に起工式が行われ、翌年、ガウディが二代目建築家に就任。以来、ガウディ亡きあとも建築は続き、140年以上も「建設中」でしたが、2026年にイエスの塔が完成予定! この展覧会では、注目高まるサグラダ・ファミリアとガウディについて、これでもかというほどに大解剖。大量の図面、模型、写真、資料、最新技術で撮影された映像などで立体的に見せてくれます。

スペイン・バルセロナのサグラダ・ファミリア聖堂
サグラダ・ファミリア聖堂内観(C)Fundació Junta Constructora del Temple Expiatori de la Sagrada Família

おもしろかったのは、ガウディ=奇抜な人、というイメージが完全に覆されたこと。ガウディというと、天才的なひらめきでものをつくっていく人、というアーティスト的な印象が強いと思うのですが、実は、あの奇妙さは、建築はもちろん、自然や幾何学、歴史に対する深い造詣に裏打ちされており、その集大成が、サグラダ・ファミリアなのだ、ということが、展示を通してとてもよくわかるのです。あのたくさんのヘンテコな塔が、綿密に構造計算した結果のデザインだということにも驚くし、建物を埋め尽くす彫刻にも、それぞれ当時の最新の研究や流行を踏まえた元ネタがあることにも感心させられます。やはり現地で見ねば!と、旅心も大いに刺激される展覧会。模型をあちこちから眺め、解説をじっくり読み、と時間がかかりますので、ゆとりをもってお出掛けくださいね。思わず「図鑑」と呼びたくなるような渾身の展覧会図録もおすすめです!(談)

ガウディとサグラダ・ファミリア展

会期:2023年9月10日まで 東京国立近代美術館にて開催中
※9月30日〜12月3日 佐川美術館(滋賀)、12月19日〜2024年3月10日 名古屋市美術館(愛知)へ巡回。

西欧建築の歴史、異文化の造形、自然が生み出す形の神秘を貪欲に吸収し、そこから独自の形と法則を生み出したスペインのアントニ・ガウディ。その発想の源泉を探りつつ、総合芸術としてのサグラダ・ファミリア聖堂建設プロジェクトのプロセスも明らかにしていく。日本人の彫刻家・外尾悦郎が手掛けた彫刻や、聖堂中央の最も高い塔となるイエスの塔の建築という最終段階に向かう現在の姿を伝える最新映像など、見応えあり。

問い合わせ先

東京国立近代美術館

TEL:050-5541-8600

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取材・文 :
剣持亜弥(HATSU)
構成 :
正木 爽・宮田典子(HATSU)、喜多容子(Precious)
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