雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は、「シネマ・チェプキ・タバタ」代表 平塚千穂子さんの活動をご紹介します。

平塚千穂子さん
シネマ・チェプキ・タバタ」代表
(ひらつか ちほこ)’01年バリアフリー映画鑑賞推進団体「City Lights」設立。’16年ユニバーサルシアター「CINEMA CHUPKI TABATA」オープン。’23年文化庁 芸術選奨 芸術振興部門 新人賞、 日本映画復興賞 日本映画復興奨励賞を受賞。

誰でも安心して映画を楽しめるユニバーサルシアターを運営

白杖を持つ人、車椅子の人、ベビーカーを押す母親、学校帰りの学生…。東京・田端の商店街にある小さなビルに、さまざまな人が吸い込まれていく。自動ドアを入ったすぐ先にあるのは、スクリーンと、座り心地のいいシート20席、そして個室がひとつ。「シネマ・チュプキ・タバタ」は目が不自由な人のためのイヤホン音声ガイドや耳が不自由な人のための字幕付き上映を備えた、日本で唯一のユニバーサルシアターである。

「上映する作品はすべて、音声ガイドと字幕付きです。シネコンで上映されるような作品には、配給の段階からバリアフリー対応(※)のものもありますが、そうでない場合は、私たち自身で製作します」

平塚さんは’01年に音声ガイドを手掛けるボランティア団体を立ち上げ、’16年に夢だったバリアフリー映画館の設立に踏み出した。目指したのは、視覚障がい者だけでなく「さまざまな理由で映画館に行くことをためらってしまっていたどんな人」も、安心して映画を楽しめる、“開かれた”映画館。

「音響監督が監修した音響設計、高品質なスピーカーなど、音環境のよさも自慢です。音楽系の映画だと、音がいいからとわざわざうちに観に来る健常の方もいます」

’21年には「耳が聴こえない人のための舞台手話通訳者の記録映像に目が見えない人のための音声ガイドをつける」という困難な挑戦もあった。その様子は映画『こころの通訳者たち』になり、今、全国で上映会が行われている。

「心を伝えることについて、多くを学びました。配信が進み、映像を早送りで大量消費する時代にあって、見知らぬ者同士、同じ場所で、ひとつの作品を観ることの大切さを、改めて感じています」

【SDGsの現場から】

●音声ガイドに関連する映画も製作

サステナブル_1,インタビュー_1
プロデューサーを務めたドキュメンタリー映画『こころの通訳者たち』のワンシーン。

●映画上映会ではバリアフリーに関する講演も

インタビュー_2,サステナブル_2
館では映画監督など関係者による舞台挨拶やトークも。平塚さんが進行を務めることも。

※(映画の)バリアフリー対応​とは…「改正障害者差別解消法」の完全実施により、’24年4月には映画への視覚障害者用音声ガイドと聴覚障害者用字幕の付与が義務になる。

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PHOTO :
望月みちか
EDIT :
正木 爽(HATSU)、喜多容子(Precious)
取材・文 :
剣持亜弥(HATSU)