『Precious』本誌をはじめ、テレビや広告など幅広く活躍する人気スタイリストの犬走比佐乃さんに、大人の女性に必要なファッションについて教えていただく連載。今回は、撮影現場や日々の自身のコーディネートに用いている「着こなしの隠し技」3選に注目! 犬走さんが長年の経験値から編み出したマル秘テクニックを伝授していただきます。

犬走比佐乃さん
スタイリスト
(いぬばしり ひさの)本誌をはじめ数々の女性誌や女優のスタイリングを手がけ、「マダム犬走」の愛称で多くのファンをもつ。30年以上を誇るキャリアと卓越した審美眼でセレクト&スタイリングする自身の着こなしも注目を集める。

ちょっとした工夫が着こなしの洗練度を高める! 簡単で使える隠しテク

雑誌などで見る洗練された着こなし。憧れて同じアイテムを購入しても、自分で着てみると「なんかちょっと違う」と思ったことはありませんか? でも、それはある意味当たり前で、ファッション撮影の現場では、主にスタイリストがきれいに見せるためのさまざまな着こなしテクニックを、こっそり仕込んでいるからなのです。

着こなしの洗練度を上げる隠し技はスタイリストさんによって、方法もツールもさまざま。それぞれプロの手腕を駆使して、いわば「着付け」を行うわけですが、犬走さんの方法はどれも、素人でもすぐに取り入れられるような簡単さながら、その効果は抜群!

本来は歴代のアシスタントだけが知っている犬走流の「隠し技」のなかから、今回は3つのテクニックを教えていただきました。

■1:シャツやニットの袖まくりには、手芸用の極細ゴムが最適!

主にシャツの袖をまくる際にゴムを仕込むテクニックは、おそらくご存知の方も多いでしょう。袖を何度も折り返さすことなく、絶妙なポイントで安定させるこのワザ、多くのスタイリストは輪ゴムや細めのヘアゴムを使用しています。

でも、犬走さんが使っているのは、シャーリングなどに使われる手芸用の極細ゴム!

シャツ_1
犬走さんは折り返さず、袖口を少し上げて着こなしている「THE ROW」のシャツワンピ。手芸用の極細ゴムはアイテムと同色、または同系色のものを使うのが犬走さんのこだわり。

「先日スタイリストの方々と、“何を使っている?”というようなお話をする機会があったのですが、手芸用のゴムを使われている方はいらっしゃいませんでしたね。私の場合、例えば輪ゴムだと圧迫感を感じて快適ではないし、洋服に跡がついてしまうこともあるので、手芸用の極細ゴムに辿り着きました」(犬走さん)

犬走さんの「お道具バッグ」には、さまざまな色、サイズでつくられた極細ゴムの輪っかがぎっしり詰まったポーチが必ず入っています。

犬走さんがシャツの着こなしに使っているゴム糸
手芸用の極細ゴムは「オカダヤ」などで購入。

「シャツはもちろんですが、これからの季節はニットの袖口に仕込むことも。ほんの少し袖口を上に上げて安定させることで着こなしがグッと垢抜けますし、例えばデスクワークなどもしやすくなるのではないでしょうか」(犬走さん)

■2:胸元の開きをスナップボタンで調節、安定させる!

胸元の抜け感をキープしたまま着こなしたい、襟口が深く開いたトップス。でもそのままだと下着が見えてしまったり、「ちょっと深すぎ」と思うことはよくありますよね。

「ある程度潔く胸元の開けた着こなしは、露出のバランスが大切。下着は絶対にチラリとも見せないのが大人の女性の矜持です」(犬走さん)

そこで登場するのがスナップボタン!

トップス_1,ジャケット_1,パンツ_1
そのままだと深すぎる胸元の開きを調整するためにスナップボタンを仕込んだ犬走さんのジレ。Photo:黒石あみ(小学館/犬走さん)

「このジレはちょうどいいVの空き具合なのですが、動くと少し心もとないので、安定させるためにスナップボタンをひとつ付けました。お借りした衣装には撮影時だけ両面テープなどで安定させてしのぐこともありますが、私物や買い取ったアイテムにはこうしてひと手間かけておけば、日々ストレスなくおしゃれを楽しむことができます」(犬走さん)

■3:インナートップスにはハサミを入れて、チラ見え断固防止!

トップスの襟ぐりから少しでも覗いてしまうと、一気に「おばさん指数」が上がってしまうインナートップス問題。防寒のためにインナートップスが欠かせないこれからの季節、大人の女性としては留意したいポイントですが、犬走さんはどうやってこのチラ見えを防止しているのでしょうか?

「私は大胆にジョキジョキと、余分な部分をハサミでカットしています(笑)」(犬走さん)

インナーとハサミ
薄手のカットソーやシャツの着こなしに響かないシームレスなブラトップも、襟口や後ろの上部をカットして活用!

でもやはり、まつるなどの処理をしないといけないのでは?

「もちろん素材によってはほつれ止めの処理をした方がいいものもありますが、インナートップスの場合、案外切りっぱなしでも大丈夫だったりするんです」(犬走さん)

これは襟口だけではなく、袖口にも応用できそうな裏ワザ!

「見せるべきでないものは見せないように着こなすのがおしゃれの心意気。大人の女性ならなおのこと、そういった基本を心に留めておくことが、着こなしの洗練のために必要なのではないでしょうか」(犬走さん)


今回は犬走さんが公私ともに活用している「着こなしの隠し技」3選をお届けしました。長いキャリア、経験、そして洋服への愛から生まれた犬走流テクニックをぜひ取り入れ、おしゃれの洗練度を高めてみませんか?

※私物に関してのブランドへのお問い合わせはご遠慮ください。

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PHOTO :
田中麻衣(小学館)
WRITING :
岡村佳代
EDIT :
谷 花生