最近よく耳にする言葉、「ヒュッゲ(ヒュゲ)」。百貨店の北欧の催事や陶器コーナー、カフェなどで、北欧カルチャーに触れた際に耳にしたことがある、という方が多いのではないでしょうか?
“幸福”、“心地よい時間・場所”を意味するデンマークの言葉「ヒュッゲ(ヒュゲ)」とは一体? そして、ヒュッゲと日本人の感性との、意外な共通点とは?
■1:「ヒュッゲ」はデンマーク語で「幸せを感じる居心地のよさ、心地よいことや時間」を意味する言葉
デンマーク語の「ヒュッゲ(Hygge)」は、どの国の言語にも翻訳しにくい概念だといわれており、オックスフォード英語辞典にも、英語ではなくデンマーク語のまま掲載されているほどです。
「幸せを感じる居心地のよさ、心地よいことや時間」という意味をもつヒュッゲ。本質的な幸せを追求したその優しい考え方に、世界中から賛同と注目が集まり、各国で関連書籍が次々に出版されるなど、世界中で「ヒュッゲブーム」が起きているともいえます。
国連の幸福度調査で世界トップのデンマーク。ヒュッゲがその秘訣!?
このブームには、2013年に国連の幸福度調査(※1)でデンマークが1位になったという側面もあるようです。これ以降デンマークは毎年、同調査トップランクの常連。“もしかして、ヒュッゲこそが幸せになる秘訣なのか?”とイメージする人が多いのかもしれません。
果たして「ヒュッゲ」と「世界一幸せな国」はどんな関係性があるのでしょうか。
「ヒュッゲ」と「ヒュゲ」、どちらの発音がデンマーク語に近い?
ちなみに、どの国の人にとっても難易度が高いことで知られる「Hygge」の発音は、フとヒュの間のような音から始まります。日本語での発音は、「ヒュッゲ」と言うよりも「ヒュゲ」と短く発音するほうが、デンマーク語により近いようです。
■2:幸せには「短期的なもの」と「長期的なもの」がある
デンマークで幸福について研究する「ハピネス・リサーチ・インスティチュート(※2)」は同社の報告書の中で、幸せには「短期的なもの」と「長期的なもの」があると切り出しています。同社代表のマイク・ワイキング氏も、著書(※3)や講演内容でこのことについて語っています。
時間が経過することによって消える一時的な幸せが「短期的な幸せ」、人生における満足感の高まりが「長期的な幸せ」
欲しかったバッグが買えたことや、行きたかった場所に行ってみたという幸せは「短期的な幸せ」で、時間が経過することによって消えてしまう一時的なもの。一方「長期的な幸せ」とは、長年の夢が実現できた、他者に貢献できた、など、自分の人生における満足感の高まりのこと。
この2つははっきりと切り離せるものではないうえに、同じ「幸せ」という言葉で表現されるため、ちょっと紛らわしいですよね。
また、一般的に研究者たちが幸福度を測る調査では、「長期的な幸せ」が対象とされるそうです。ゆったりと時間を過ごす価値観と、人生のどの位置に立っているのかを振り返って、自分のものさしで幸せを感じる価値観。それらを現実化するための社会制度が整えたことで、デンマークは世界一幸せになったといえるのかもしれません。
仲間と楽しむ鍋パーティーや温泉など、日本にも昔からヒュッゲ(ヒュゲ)がある
しかし、時間の過ごし方や自らの幸せをほかの誰かや世間ではなく“自分”で決めることは、デンマークに住んでいなくても可能なはず。快適な空間を持つことや、気の置けない仲間・愛する家族と共に過ごすことをヒュッゲとするならば、仲間と楽しむ鍋パーティーや温泉は完全にヒュッゲ。この日本にも、昔からヒュッゲがあったことになりますね。
■3:ヒュッゲ(ヒュゲ)とは、どの国に暮らそうとも可能な幸せの追求のこと
つまりヒュッゲとは、どこの国に暮らそうとも可能な「幸せの追求」のことなのです。
デンマークでそのような概念が育まれたのは、ほとんどの国民がヒュッゲという文化を大切にする“共通認識”を持っているため。長期休暇の取得や、人より先に帰ることに、少しの後ろめたさを感じてしまうような日本の職場環境などでは、多少困難な場合もあるかもしれませんが、本来ならどの国の人も、同じように幸せの追求をする権利があるはずです。
個性的で愛らしいデンマークの住民がたくさん登場する『クリスチャニア 自由の国に生きるデンマークの奇跡』
デンマークのコペンハーゲンにあるフリータウン(日本語では“自治区”と訳される)「クリスチャニア」について書かれた『クリスチャニア 自由の国に生きるデンマークの奇跡』には、個性的で愛らしいデンマークの住民がたくさん登場します。彼らの共通点は「人生を楽しむ時間を持つこと」と「よりよい社会のために自分ができることをする」というふたつを常に大切にしていること。
デンマーク人は、「人生を楽しむ小さな時間を持つ」という短期的なヒュッゲを積み重ねることで、長期的な幸せを測る幸福度ランキングの上位となりました。これらが両方あってこそ人生は輝きだす。まずは私たちも、長期的な人生のビジョンを描きながら、今この瞬間を、幸せで満たしていきましょう。
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- やなぎさわ まどか