「討論」や「議論」を指す「ディスカッション」は、ビジネス会話でもよく出てくる言葉ですね。では、こちらもよく耳にする「ディベート」とは、どう違うのでしょうか? 今回は「ディスカッション」というカタカナ語について解説します。
【目次】
【「ディスカッション」とは?基礎知識】
■意味
「ディスカッション」は、討論、討議、議論を意味する英単語[discussion]のことで、会議や講習会などのなかで、ある問題を検討するために参加者が意見を述べ合うことを指します。ディスカッションは、自由に発言し、意見や情報を出し合い、協力しながらより良い結論へと導いていくのが目的なので、一方的な発言である[presentation](提示、紹介)や[announcement](発表)とは違います。
■目的
ディスカッションは異なる意見をぶつけ合い、それぞれの主張を繰り広げていくことで、どの意見が最もテーマや議題に有益かを見極めることを目的に行われます。
■種類
「ディスカッション」にはいくつか種類があり、取り上げるテーマによってふさわしい方法で行われます。
・自由討論型ディスカッション:参加者が自由に発言、意見を述べます。
・問題解決型ディスカッション:解決策を探ることに主眼を置いて意見を交わします。現状の問題点を共有し、原因の分析、解決策などを議論して結論を導き出さなければなりません。自由討論型ディスカッションと比較すると、参加者には論理的な思考や、解決を可能にする具体的なアイディアや発想などが求められます。
・フェルミ推定型ディスカッション:本来は調査が必要な数値に関し、論理的に考えて概算を行うスタイル。フェルミ推定とは未知の問題を論理的に解決する手法のこと。名前は「原子力の父」として知られるノーベル賞物理学者、エンリコ・フェルミの名前に由来します。
【「ディベート」とは?基礎知識】
■意味
ディベートとは、定められたルールに従い、対抗する2組(あるいはそれ以上)が肯定側と否定側に立って討論すること。自分の意見に関係なく、肯定・否定グループに分かれ、相手側もしくはジャッジと呼ばれる第三者に対して、所属グループの意見を通すために論理的に説得を行います。
■目的
ビジネスでのディベートは、重要な個人のスキルである、論理的思考や判断力、相手に適格に伝える力を磨くことを目的とします。一方、学校教育などで採用される「協議ディベート」は、社会に出てからのディベートの訓練のために行われるものといっていいでしょう。ゲームとして楽しみながら議論をすることで、実社会での議論力を向上させます。
■種類
・論証重視型ディベート(ポリシーディベート):アカデミック(教育)ディベートのひとつで、十分な準備期間を経て、証拠資料などを提示して論証していくもの。アメリカの大学で多く行われていて、日本の大学の英語ディベートや日本語ディベート、中・高校生のディベート大会でも主流です。
・即興性重視型ディベート(パーラメンタリーディベート):ディベートが行われる直前に論題を示し、即興的に行うディベートのこと。イギリスや英連邦諸国で多く行われていて、近年は日本でも大学生の英語ディベートで採用されています。
【「ビジネスでの使い方」がわかる「例文」6選】
まずは「ディスカッション」の使い方を、ビジネスシーンに限定した例文で見てみましょう。
■:「積極的なディスカッションが交わされた、有意義な会合だった」
■:「よいデスカッションをするには、テーマについての明確な定義を事前に告知し、各々が思考する時間をもって準備して臨み、当日の時間配分を誤らないことが不可欠だ」
■:「日本人はディスカッションが苦手だと言われてきたが、ここ数年の新人を見ているとディスカッション慣れしていることがうかがえる」
次に、「ディべート」の使い方を例文で見てみます。
■:「よい結論を導き出すためとはいえ、相手を負かさなければならないディベートは苦手です」
■:「高校時代にディベート甲子園へ出場したことがきっかけで、論理的思考が身につきました」
■:「ゲーム感覚でディベートを楽しめたおかげで、チームの一員としての自分の得手不得手に気づくことができた」
【「ディスカッション」の「類語」「関連語」】
「ディスカッション」は自由に意見を戦わせて結論を導き出すこと、「ディベート」は対立する意見で相手を負かすことという違いがありました。意見やアイディアを出し合って結論付けたり解決するのは、ビジネスにとって大変重要なファクターですね。ほかにも“話し合うこと”を意味する類語や、関連語があるのでチェックしておきましょう。
■類語
・ミーティング ・討論 ・会合 ・会議 ・打ち合わせ ・衆議
■関連語
・ブレスト:ブレインストーミングの略。新しい考えや問題の解決策などを見出すために、複数の参加者が自由にアイデアを出し合う会議のこと。
・パネルディスカッション:異なる意見をもつ複数人が聴衆の前で議論を交わしたのち、聴衆に議論へ参加を求める形式のもの。
・フォーラム:フォーラムディスカッションの略で、公開討論会のこと。原義は古代ローマの公の集会用の広場のこと。
・シンポジウム:ひとつの問題についてふたり以上の講演者が違った立場から意見を述べ、さらに聴衆や司会者の質問に答えるもの。
・ティーチイン:もともとは学生の時事問題に関する学内討論会のこと。現代では広く討論集会一般をさします。
【英語で「ディスカッション」はどう表現する?】
そもそも「ディスカッション」は英語ですからおかしなタイトルだと感じたでしょうか? どういう[discussion]なのか、例を見て英文での使い方もマスターしてください。
・a hot discussion(活発なディスカッション)
・a barren discussion(無駄なディスカッション)
・have a discussion on the subject “〇〇”(“〇〇”についてディスカッションする)
***
「ディスカッション」も「ディベート」も、はっきり意見を言ったり相手を論破したりすることでした。相手を立て、調和を好む日本人気質が苦手とするところだと言われますが、これは教育方法にも由来するという見解も。相手の意見を論理的に批判し、論破することに価値を見出す西洋の“ソクラテス式教育”と、アジアで主流の唯一絶対の存在から学んで対立を避ける“儒教式教育”の違いなのだそう。いずれにしても自分の意見やアイディアは、はっきり正しい日本語で伝えたいものです。
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)/『現代ビジネス用語事典』(日本文芸社)/『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) :