身長156cmのインテリアエディターが、実際に見て・触れて・座ってレポートする連載企画。今回は、デンマークの首都・コペンハーゲンで今年6月12日〜14日に行われた「3daysofdesign (スリー デイズ オブ デザイン)」を訪れたエディターによる最新のイベントレポートをお届けします。

「スリー デイズ オブ デザイン」は、毎年4月にミラノで行われる世界最大の家具見本市「ミラノデザインウィーク」に続く重要なデザインイベントとして、年々存在感を増しています。なんといっても魅力的なのは、業界関係者でなくてもどなたでも参加可能ということ! 多くの人が最新のインテリアで多様な過ごし方を楽しまれている様子が印象に残りました。“ヒュッゲ”な時間をつくる北欧家具の魅力にも迫ります。

自分らしい暮らしが見つかる!誰でも参加できるデザインイベント

「スリー デイズ オブ デザイン」の始まりは2013年。コペンハーゲンの港地区でたった4つのデンマークブランドが共同開催したイベントです。それが今やコペンハーゲン中に点在するデザインブランドのショールームやショップ、ギャラリー、歴史的な建造物などさまざまな場所が会場となり、街をあげてのイベントに成長しました。

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左/クラッシックな建物に今年のテーマーカラー、ピンクのキービジュアルが映える街並み。右/風船や道に敷かれたカーペットの効果で迷うことなく会場にたどりつけます。

国際的にも注目度を増し、4月にミラノで行われる「ミラノデザインウィーク」の次は6月のコペンハーゲンという流れができています。今年は6月12日~14日に開催し、400を超える出展者によってさまざまな展示や多くのイベントが開催されました。

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「アイラーセン」ショールーム前の道に置かれたソファでくつろぐ家族連れ。その様子を社長も興味深く見守っていました。

「スリー デイズ オブ デザイン」は誰でも参加できるというのが最大の特徴です。ピンクの空に家具の形をした雲が浮かぶ一見ファンシーな印象のキービジュアルには、「夢見る勇気」というスローガンが描かれています。

そこには、私たちが現在抱えているさまざまな問題、例えば環境破壊や戦争や技術継承者不足などは、誰かの夢を見る勇気をきっかけに解決へと向かう。企業やデザイナーやエンジニア、消費者など多様な立場の人が夢を共有したときにイノベーションは起こる!…という骨太なメッセージが込められています。

いわゆる業界内の流行りや一過性のブームではなく、暮らしは生きている限り誰にでも関係あるもの。ライフスタイルとは、本来、誰にとっても生きている限り自分ごとなのです。

午前中のイベントは、朝食やコーヒー&クロワッサンと共に

イベントの公式開催時間は10時〜18時ですが、各会場のオープン前に参加できる朝のプログラムも毎日開催されていました。7時から始まるランニングやヨガイベント、デザイナーとの朝食会にパネルトーク、職人による実演など多種多様にあり、詳細は公式アプリで確認できます。リラックスした雰囲気で行われたプログラムのなかで特に印象に残った2つをご紹介します。

パジャマパーティの翌朝みたい!人気2ブランドのコラボ寝具の早朝発表会

ホームウェアや寝具を中心としたデンマークの人気ファブリックブランド「テクラ」では、先鋭的な建築家でデザイナーでもあったアイノ・アアルトの生誕 130 周年を祝い、フィンランドの「アルテック」とのコラボレーションによる限定寝具を発表。

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「テクラ」初のベビー寝具は、アイノ・アアルトがデザインを手がけた「アルテック」のベビーベッドがインスピレーション源

両代表のトークイベントは朝日が降り注ぐショールームで朝8時から行われました。パジャマ姿のスタッフが勢揃いした店内はさながらパジャマパーティ明けのようなリラックスした雰囲気で心地よく、その空気感を自宅にも取り入れたくなり、帰国後に早速「テクラ」のアイテムを購入してしまいました。

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左/「アルテック」が2019年に復刻した桜を意味する「キルシカンクッカ」のピローカバー。右/朝食のヨーグルトにはエルダーフラワーが添えられて 

行き交う人の様子が眺められる角度に置かれた名作椅子で開場を待つ朝

1911年創業の歴史あるデンマークブランド「フレデリシア」。10時から始まる職人による実演を見に少し早めに到着すると、ショールーム前の歩道に大理石天板のテーブルとベストセラーの椅子『J39』が置かれ、コーヒー&クロワッサンが用意されていました。

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「フレデリシア」のショールーム前のトートバッグにはパンフレットが入っていて、クロワッサンを頬張りながら予習できます。

壁にかけられたトートバッグの中から出したパンフレットを壁に持たれて読んでいると、スペインの照明ブランド「サンタ&コール」のプレスの女性が「食べ終わったら案内してあげる!」と話しかけてきました。

促されるままクロワッサンを食べるために『J39』に座ると、通勤で歩く人やイベントに合わせて歩いてくる人などの様子がよく見える角度に置かれていることに気がつきました。心地よい時間を支えてくれたオーセンティックな『J39』は、石畳の上でがたつかない位置を探すために動かす際も軽いのにしっかりしていて、作りのよさを改めて体感しました。

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左/時間によって異なる椅子の仕上げのデモンストレーションが行われていた「フレデリシア」。写真は『オックスチェア』の張り工程。右/ブランドを代表する名作『スパニッシュチェア』の革の上には「サンタ&コール」の和紙の照明が。

4つのシチュエーションで体感!“ヒュッゲ”な時間を演出する家具の実力

“ヒュッゲ”とは物質で満たされるのではなく、親しい人とのふれあいやリラックスした時間で満たされることを大切にしたデンマークの考え方です。

家庭的で快適な空間や、友人や家族と過ごす幸福な時間、季節の移ろいを感じる美しい瞬間などを指し、身近な日常の中に存在する幸せな感覚を象徴するデンマークの言葉でもあります。日本語でいうところの「ほっこり」などと似ているでしょうか。

そのような時間を過ごすために必要な機能を満たした家具を見つけるには、まずは“ヒュッゲ”を体感することです。今回、4つのシチュエーションで“ヒュッゲ”を感じた家具をご紹介します。

■1:コーヒーを飲むときは、固めのソファが安心!

コーヒーカップを持ったままソファに座るとき、柔らかいクッションだと沈みんでこぼれる心配があります。固めのかけ心地で荷物が置ける平らな座面、できればテーブルのような役割をしてくれる広めのアームやサイドテーブルがあると便利ですよね。

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左/「アイラーセン」の組み合わせ式ソファ。高さの異なる座面や高さの揃った天板と座面なども好みの空間を演出できるポイントに。右/「フレンズ ファウンダーズ」のベンチ。和紙の照明も数多く発表されていました。

■2:荷物を整理するには、広めベンチが便利

多くの人がいる中で荷物を広げるのは少し心もとないですよね。そんなときに便利だったのが平らな座面で低めのベンチやオットマンです。周囲の視線から少し外れるところでささっと整理して、そのままちょっと休憩することができるのもいいなと思いました。

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「ヴィトラ」の新作『アナグラム ソファ』。コットン、ビロード、エコファーの素材感と生花のカラーリングも素敵でした。

■3:ユニークなデザインの一人がけラウンジチェアでまったり

最近のトレンドは、置くだけで存在感のある彫刻的なデザインだったり、キャラクタライズされた大きめのラウンジチェア。なかでもキャスター付きのものが思いのほか便利だということは、座ってみないとわからないことでした。座ったままちょこちょこ動いてテーブルにカップが置ける! 新しい暮らしのアイデアが生まれました。

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左/ハンモック式のかけ心地がいい「デュクス」のキャスター付きラウンジチェア。右/空間に映える「グビ」の『クロワッサン ラウンジチェア』は想像以上に大きくて床座のような感覚でした。

■4:屋外でゴクゴク飲むと一層美味しく感じる!

北欧の短い夏を存分に楽しむために、アウトドア家具のラインナップがとても充実しているのも印象に残りました。多くのショールームでは乾いたのどを潤すさまざまな冷たい飲み物が用意されていて、湿気が少ない気候のなか、ショールームに入る前にアウトドアダイニングでゴクゴク飲むと格別な美味しさが! また、グラスを置くときに家具のディテールの美しさにはっと息を飲む瞬間が何度もありました。

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経年していないチーク材が軽やかな「カール・ハンセン&サン」の『AH』アウトドアシリーズ。

デンマークブランド「グビ」の展示に見たミラノとコペンハーゲンの違い

毎年どのような展示をするか楽しみにしているデンマークブランドの「グビ」を例に、「ミラノデザインウィーク」と「スリー デイズ オブ デザイン」の空気感の違いを感覚的にご紹介します。

ミラノでは宮殿やプールを貸し切って、大掛かりなラグジュアリーな世界観の展示で話題を集めていました。ところが、コペンハーゲンでは短い夏を謳歌するためのアウトドア家具の展示も自然体。自社の前の港沿いにカジュアルな雰囲気で設置されていました。

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左/2018年の「ミラノデザインウィーク」では宮殿が展示会場に。右/昨年はプールを貸し切り。
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今年のコペンハーゲンでの展示。シェードで作った日陰をあえて避け、サングラス着用のうえ日向で過ごす人が多いのも興味深い(笑)。

座ると道を行き交う人の姿やコンテナが運ばれるさま、遊覧船が行き交う様子など、その場所らしさを楽しめる角度にさりげなく配置されて、多くの人がゆったりとくつろいでいました。ショータイム的なミラノと、普段の暮らしの延長線上のようなコペンハーゲン、その違いは歴然です。

コペンハーゲンは徒歩でも廻れるコンパクトさも魅力。シェアサイクルやキックボード、メトロと水上バスに乗れる交通系ICを使えばスピーディにどこへでも一人で簡単に行くことができます。時差のおかげで早起きは難しくないですし、日没が遅いため21時過ぎても明るく、女性一人で歩いていても安全なのでかなりゆったりと楽しむことができます。


今回は、コペンハーゲンで開催されたデザインイベントについてお届けしました。北欧デザインの魅力は、使う人が主役であること。「スリー デイズ オブ デザイン」でも、主役である人が楽しめるよう、職人が天然素材を手仕事で丁寧に仕上げた家具を使って、さまざまな提案がされていました。

来年の会期は、2025年6月4日~6日とのこと。デンマークのメーカーやデザイナーたちが家具を通じて提案する、ゆったりとした時間の過ごし方の心地よさ、“ヒュッゲ”を体感してみませんか?

「3daysofdesign」公式サイト

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この記事の執筆者
イデーに5年間(1997年~2002年)所属し、定番家具の開発や「東京デザイナーズブロック2001」の実行委員長、ロンドン・ミラノ・NYで発表されたブランド「SPUTNIK」の立ち上げに関わる。 2012年より「Design life with kids interior workshop」主宰。モンテッソーリ教育の視点を取り入れた、自身デザインの、“時計の読めない子が読みたくなる”アナログ時計『fun pun clock(ふんぷんクロック)』が、グッドデザイン賞2017を受賞。現在は、フリーランスのデザイナー・インテリアエディターとして「豊かな暮らし」について、プロダクトやコーディネート、ライティングを通して情報発信をしている。
公式サイト:YOKODOBASHI.COM