日本列島が沸騰したかのような猛暑が続き、ただ普通に生活しているだけでも心身がじわじわと蝕まれる2024年夏。そのたまった疲れを解放して、天国気分を味わいたい人におすすめなのは温泉旅行です。温泉ジャーナリストの植竹深雪さんは、夏こそ温泉に行くべき理由について以下のように力説します。
「一口に温泉といっても、源泉によって湯温は千差万別。冬のイメージが強い温泉ですが、熱々の湯ばかりではありません。人間の体温に近いぬる湯や、水風呂のようにひんやりする冷鉱泉はまさに夏向けですし、あるいは、避暑地にあるラグジュアリーな湯宿は、灼熱の下界とは隔絶された涼やかな非日常感を体験できるという点で、やはり夏におすすめです」(植竹さん)
そこで植竹さんに、温泉の質やロケーション的に、夏の疲れを癒すのにぴったりな宿をピックアップしてもらいました。今回ご紹介するのは、大分・九重にある「寒の地獄旅館」です。
公式サイト
「極寒の地獄」と「ぬくぬく天国」を往復する入浴法にハマる人続出!
街の喧騒から離れた九重連山の麓に佇む「寒の地獄旅館」。まさに秘湯の一軒宿と呼ぶにふさわしいこちらの宿で、昭和3年の創業以来、数多の湯治客を癒し、魅了し続けてきたのが、宿名にもなっている“寒の地獄”冷泉です。
「今年の記録的な猛暑においては、むしろ地獄どころか、ここは天国といえそうです。“寒の地獄”とは、14度ほどの冷泉。私自身、毎年暑い季節が巡ってくるたびに冷泉が恋しくなり、日帰りも含めて何度もリピートしています。こちらの宿では、冷泉と暖房室を行ったり来たりする独特の入浴スタイルが推奨されており、これが夏の疲れを癒すのにもぴったりなんです」(植竹さん)
「まず、冷泉は混浴で、水着着用で入浴します。14度というと、屋外プールよりもさらに水温が低いレベル。おそるおそる入ってみると、ひんやりを超えた極寒温泉がインパクト大です。まるで氷水に浸かっているかのようで、私の体感温度としては0度といったところでしょうか。
ただの冷水ではなく、硫黄成分の影響なのか、はじめの1~2分は皮膚を刺すような刺激があり、痛いと感じるほど。じっと我慢していると、不思議と刺激が気にならなくなってきますが、それからしばらくするとまた急激な寒気に襲われます」(植竹さん)
「そこで、『もう我慢の限界!』となったタイミングで冷泉を脱出し、体は拭かずに暖房室へ。暖房室に入った瞬間は、まるで真冬の外出先から帰宅したような天国気分で、こごえた体がほどけるような感覚がたまりません。ここでは、冷泉に浸かった倍くらいの時間をかけて体を温めつつ、肌に付着した冷泉の成分を自然乾燥させて体内に取り込みます」(植竹さん)
「天国のような暖房室で体の芯まで温まったら、また地獄の冷泉にトライ。こうして、冷と暖を往復する修行のような入浴方法は、免疫力が上がるなどの効果が医学的にも認められているとのことです。
個人的には、冷泉がはじめは衝撃的でしたが、慣れてくるにつれて夏バテぎみの体に喝を入れることができたのか、すっきりと疲労が浄化された感覚に。何よりも地獄と天国の無限ループは『寒の地獄旅館』ならではで、独特の爽快感と開放感にすっかりやみつきになりました。この夏、不思議とハマる唯一無二の体験にぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか」(植竹さん)
秘湯情緒漂う一軒宿で温冷交互浴や家族風呂も満喫する
「冷泉以外に、こちらの宿では男女別の内湯に家族風呂が2か所。内湯では加温したポカポカ浴槽、ぬるめの浴槽、そして源泉のひんやり浴槽があり、温冷交互浴にも癒されます。温冷交互浴とは、温かいお湯と冷たい水に交互に入浴することで血流が促進され、体内の老廃物が効率よく除去されて疲労回復効果が得られるという入浴方法で、こちらも夏バテ対策におすすめです」(植竹さん)
「2つの家族風呂はどちらもこぢんまりした浴槽で湯が新鮮。内湯ですが大きな窓越しに、深緑に目を和ませながら湯浴みができます。『寒の地獄旅館』は山の麓の一軒宿なのですが、家族風呂から眺める景色は秘湯感があり、その雰囲気をもあいまってリフレッシュすることができました」(植竹さん)
以上、「寒の地獄旅館」をご紹介しました。地獄の冷泉と天国の暖房室を往復する独特の入浴方法で、夏バテした体に喝を入れたい人は次の旅先候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。
問い合わせ先
- 寒の地獄旅館
- 住所/大分県玖珠郡九重町田野257
客室数/全11室
料金/朝夕2食付き1名 ¥16,500(税込)~ - TEL:0973-79-2124
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- WRITING :
- 中田綾美
- EDIT :
- 谷 花生(Precious.jp)