日本列島が沸騰したかのような猛暑が続き、ただ普通に生活しているだけでも心身がじわじわと蝕まれる2024年夏。そのたまった疲れを解放して、天国気分を味わいたい人におすすめなのは温泉旅行です。温泉ジャーナリストの植竹深雪さんは、夏こそ温泉に行くべき理由について以下のように力説します。
「一口に温泉といっても、源泉によって湯温は千差万別。冬のイメージが強い温泉ですが、熱々の湯ばかりではありません。人間の体温に近いぬる湯や、水風呂のようにひんやりする冷鉱泉はまさに夏向けですし、あるいは、避暑地にあるラグジュアリーな湯宿は、灼熱の下界とは隔絶された涼やかな非日常感を体験できるという点で、やはり夏におすすめです」(植竹さん)
そこで植竹さんに、温泉の質やロケーション的に、夏の疲れを癒すのにぴったりな宿をピックアップしてもらいました。今回ご紹介するのは、長野県にある「田沢温泉 ますや旅館」です。
公式サイト
文豪も愛した老舗宿で真綿のような極上ゆる湯に癒される!
東京駅から長野新幹線で1時間20分。JR上田駅から車で30分ほどにある「田沢温泉 ますや旅館」。創業は明治元年(1868年)。文豪・島崎藤村が無名時代に逗留し、名作『千曲川のスケッチ』にも登場する屈指の老舗旅館です。本館、東館、新館の三棟からなる風格漂う宿泊棟は国の有形文化財に登録されています。
「こちらの宿では、大浴場と家族風呂があり、私のイチ押しは家族風呂。というのも、家族風呂は、ますや旅館の独自源泉で、ここでしか入れない尊い湯なんです。大浴場も家族風呂もどちらもぬる湯のアルカリ性硫黄泉で、湯の性質が大きく変わるわけではありません。ただ、入り比べてみると、個人的には家族風呂のほうが成分が濃厚で肌にしみこむように感じられるなど、ぐっとくるものがありました」(植竹さん)
「チェックイン後、レトロな階段を下って、わくわくしながら本館地下の家族風呂へ。浴槽に浸かると36度の体温ほどの極上ぬる湯との出会いに感無量です。まるで真綿に包まれたかのように全身の凝りがほぐれ、ほっと癒されます」(植竹さん)
「内湯と露天風呂とを備えた大浴場は、家族風呂とはまた違った趣があります。こちらも柔らかいぬる湯がすばらしく、ずっと浸かっていたくなるような心地よさです。頭を空っぽにして身を委ねているだけで、体がほどけて夏の疲れが癒されていくような感覚が得られました」(植竹さん)
レトロな佇まいに感動!登録有形文化財の建築美に魅せられる
客室は東館、新館、本館に全20室。なかでも人気なのは、東館3階にある島崎藤村ゆかりの「藤村の間」。文豪が宿泊した当時の木製建具や調度品をほぼそのまま保存しており、文化財として非常に価値の高い客室です。
「私が泊まったのは、藤村の間ではなく、新館3階の和室。眺望自慢で、こちらも素敵なお部屋です。部屋を囲む回廊からは緑に萌える山々を遠くまで見渡せ、和の風情と自然の豊かさに心がなごみます」(植竹さん)
「何と言っても、登録有形文化財に泊まれること自体、とても貴重な体験で、客室にいても館内を移動していても、建築美に惚れ惚れ…。東館、新館、本館の三棟を通路でつなぎあわせていることもあって、ちょっと迷路なような造りになっているのも趣き深いものがあります。
館内からの眺めも抒情的で、日暮れ後、廊下を歩きながらふと視線を外に向けると、柔らかなあかりが灯された建物が夕闇に浮かび上がり、そのノスタルジックな佇まいに思わず足を止めて見入ってしまいました」(植竹さん)
以上、「田沢温泉 ますや旅館」をご紹介しました。登録有形文化財の宿に滞在し、極上のぬる湯に癒されたい人は次の旅先候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。
問い合わせ先
- 田沢温泉 ますや旅館
- 住所/長野県小県郡青木村田沢温泉2686
客室数/全11室
料金/朝夕2食付き1名 ¥18,000(税込)~ - TEL:0268-49-2001 ※ご予約はネットのみ。お電話での予約は不可。
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- WRITING :
- 中田綾美
- EDIT :
- 谷 花生(Precious.jp)