不幸に直面した人に対して「ご愁傷さまです」は、大人として常識のフレーズですね。「ご愁傷さま」は相手を気遣うお悔やみの言葉ですが、言われたらなんと返していますか? 自信なく「恐れ入ります」や「ありがとうございます」などと、もごもごと返答しているのでは? 今回は「ご愁傷さま」について、正しく。感じのよい返答フレーズや、実は「ご愁傷さま」がふさわしくないシーン、メールや手紙などでのやり取りなどを解説します。

【目次】

「ご愁傷さま」の言い換えフレーズ、いくつ知っていますか?
「ご愁傷さま」の言い換えフレーズ、いくつ知っていますか?

「ご愁傷さま」の「読み方」「意味」「使い方」】  

■読み方

念のため確認しましょう。「ご愁傷さま」は「ごしゅうしょうさま」と読みます。

■意味

「ご愁傷さま」は、葬儀などで身内を失った人に対してかけるお悔やみの言葉です。「愁傷」は、嘆き悲しむことや相手を気の毒に思うことを表す名詞。また、その悲しみをいいます。「愁」は「憂い」「憂える」という意味、「傷」はつらい気持ちを意味するので、「ご愁傷さま」は心の傷を気遣い、相手を気の毒に思うことを示します。

■使い方

「ご愁傷さま」は家族など身内をなくした人に、対面で気持ちを伝える際に使用するフレーズです。接頭語の「ご」と接尾語の「さま」を付けて最上級の敬語表現にしているので、取り引き先や上司など目上の人にも、親戚や友人など近しい人にも使えます。ただし、会葬時など直接声をかけられる場合に限定して使うほうが良いようです。

■嘆きや悲しみではない「ご愁傷さま」もあります

『精選版 日本国語大辞典』に「ご愁傷さま」は、「1.葬儀のときの挨拶の語」と「2.相手の期待が外れたことなどを軽く皮肉って言うのに用いる。お気の毒さま」とあります。実際、仲間内でからかいながら慰めるようなシーンで「ご愁傷さま」と使うこともありますね。明るく皮肉を言ってもそのニュアンスが伝わる相手ならOKな表現です。


「ご愁傷さま」の使い方がわかる「話し言葉例文」3選

「ご愁傷さま」は悲しみに暮れる場面で使用するフレーズなので、使い方には最大限の気遣いが必要です。基本的には「このたびはご愁傷さまです」や「このたびは誠にご愁傷さまでございます」でよいでしょう。「ご愁傷さま」だけでは素っ気ないと感じることもあるので、親しい間柄でも敬語表現がマストです。もうひと言ふた言、声を掛けられるようなら、こんな風に言ってみてはいかがでしょう。

■1:「このたびはご愁傷さまです。〇〇さん(名前や関係名称など)ご逝去の悲報に、私も胸がふさがる思いです」

■2:「〇〇さんご逝去の悲報に触れ、心よりお悔やみ申し上げます。誠にご愁傷さまです」

■3:「このたびはご愁傷さまでございます。お悲しみや寂しさはいかばかりかとお察しいたします。どうぞお体おいといください」

お悔やみを述べるだけでなく、さらに相手を気遣って「お体ご自愛ください」と言いたくなる人はいませんか? 「自愛」は健康状態に気を付けることを言う名詞なので、「お体ご自愛ください」は「体」が重複してしまいます。例文3の場合のように「お体おいといください」や「ご自愛ください」が正しい表現です。


【メールや手紙での「お悔やみ例文」3選】

会うことが叶わずメールや手紙でお悔やみを述べる場合、あるいは時間がたってから訃報に触れた場合は、「ご愁傷さま」ではなく他のお悔やみフレーズを用います。

なお、メールやLINEなどでのお悔やみは、普段からそれらで連絡を取り合う間柄であったり、メールやLINEで訃報を知らせてくれた相手にならOKです。報せを受けたら、できるだけ早く伝えることを心がけて。ただし、年配や目上の方、関係性が薄く、それ程に親しくない相手には、メールやLINEでの連絡は控えたほうがいいでしょう。

■1:「ご服喪中のお知らせを拝受いたしました。ご母堂さまがご逝去されたとのこと、心からお悔やみ申し上げます。ご葬儀に伺うことが叶いませんので、このような形で失礼いたします。ご返信は不要でございます」

■2:「〇〇様のご逝去に際し、謹んでお悔やみ申し上げます。突然のことでなんと申し上げてよいか言葉もございません。ご返信のお気遣いは不要ですが、何かお手伝いできることがありましたらいつでもご連絡くださいませ」

■3:「ご逝去の報に接し、心から哀悼の意を捧げます。書状で恐縮ですが、ご母堂様のご冥福をお祈り申し上げますと供にお花を別送いたしました。どうぞご霊前にお供えください」

例文1で使用したように、母親は「母堂(ぼどう)」で「ご母堂さま」に、父親の場合は「尊父(そんぷ)」で「ご尊父さま」になります。また、例文3のように香典や供花を送った場合にはその旨も明記して。四十九日を過ぎたら「ご霊前」ではなく「ご仏前」としましょう。


【「ご愁傷さま」の「類語・言い換え」表現】

上記の例文でも使用していますがが、「ご愁傷さま」の言い換え表現を再確認しましょう。

■お悔やみ申し上げます

■ご冥福をお祈りします

■哀悼の意を表します

■残念でなりません

■お力落としのことと存じます

■心中お察し申し上げます


「ご愁傷さまです」と言われたらなんと返答する?

葬儀で「ご愁傷さまです」と言われたら、どう返答したらよいでしょうか。そのの立場になったときに困らないよう、言葉の心構えをしておきたいものです。

■恐れ入ります

■痛み入ります

■ご丁寧に、ありがとうございます

■お心遣い力になります、ありがとうございます


「英語」ではどう表現する?

「愁傷」は[grief]や[deep sorrow]で表せます。どちらも深い悲しみや心の痛みを表します。「お父上が亡くなられ、ご愁傷さまです」とお悔やみを伝えるなら、下記の例文を参考にしてください。

・I'm very sorry about your father's death.

・You have my deepest sympathy on your father's death.


【「ご愁傷さま」使用の注意点まとめ

・対面で直接伝える際に使う

・相手が親しい間柄でも敬語で

・メールやLINE、手紙などの場合は使用しない(「お悔やみ申し上げます」などに言い換える)

***

社会人としてのマナーや大人としての品位が露呈するのが、弔事での対応や立ち居振る舞いです。関係性によって言葉はふさわしいものを選んでOKですが、第一声は敬語を使いたいもの。相手が目上の方ならなおさらです。また、死因や経緯を聞き出すのもマナー違反。当人から話があった場合のみ、じっくり耳を傾けるよう心掛けましょう。

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この記事の執筆者
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