極端な話、メールだけで完結する仕事もある昨今。だからこそ形式的になりすぎず、こちらの意向や思いを、どうメールで的確に伝えるかが、大切になってきています。
そこで、雑誌『Precious』9月号の特集【Precious世代の「美しい」メール術】では、丁寧だけど親しみもある、今の時代にふさわしい「美しい」メールについて、考えてみました。
今回は、ビジネスコミュニケーション関連の著述・講演活動を行っている、中川路亜紀さんに、気持ちが伝わるメール表現をシーン別にご提案いただきました。
オンラインだからこそ、気持ちや温度が伝わるように…。簡潔でいて相手の心に響く言葉や表現が、人間関係を豊かにします。
丁寧だけど、堅苦しすぎない|シーン別に考える気持ちが伝わるメール表現
ビジネスメールとして、よく送ることがある3つのシチュエーションを取り上げ、注意したいことや言い回しの工夫を考えてみました。
感謝|丁寧すぎると嘘っぽく感じ取られることも。等身大の表現を
プロジェクト終了といったビジネス度の高い報告から、会食、贈り物のお礼まで。感謝のメールは、基本的にポジティブな内容なので、多少くだけた言い回しでも許されるシーンです。相手のどういった行為に感謝しているか、そのときならではの“具体的な内容”を盛り込みながら、率直な思いを伝えることが大事。丁寧さを意識しすぎると、堅い印象になり、かえって嘘っぽく感じられることがあるので、気をつけたいところです。
また気持ちが先走り、「とても」や「大変」といった強調言葉を使いたくなりますが、乱立させると不自然に大げさなメールに。「ありがとうございます」も、何度も使用せず、「感謝しております」といったほかの表現も取り入れると、全体がすっきりして、より気持ちが深く伝わりそうです。文頭の「お世話になっております」などを割愛し、感謝の言葉から始めるとインパクトが強くなるので、試すのもいいかもしれません。
【 例えばこんなフレーズ 】
●「今回の企画の成功も、〇〇さんのご協力なしでは叶いませんでした。感謝の気持ちでいっぱいです」
●「自分ではうまく整理できなかったのですが、〇〇さんのアドバイスのおかげで、考えが大変クリアになりました」
●「昨夜は素敵な席を設けていただき、ありがとうございました。お料理がどれもおいしく、特に子羊のグリルが柔らかくて、思い出に残るひと皿でした。またお話のなかで〇〇さんの意外な一面を知ることもでき、いっそう親しみを感じてしまいました」
●「素敵なお菓子を送っていただき、ありがとうございました。社内のみんなも大喜びで、おいしくいただいております」
依頼|自分の熱意と相手のメリットを明確、かつ端的に伝えて
目上の相手や、条件が厳しいなど、依頼のメールは緊張しますし、気も遣うもの。難度が高いほど、つい恐縮してしまいそうですが、なぜこの仕事を“あなたに”お願いしたいのか、その根拠を明確にし、自信をもって伝えたほうが、相手の心に深く響きます。仕事を完遂した際にも「引き受けてよかった」と、感じてもらえそうです。
ただし、文面は端的に。序盤で長々と理由を書き連ね、なかなか本題に入らないのは「美しい」メールではないでしょう。多忙な相手を気遣い、必要な情報を簡潔にやりとりすることが、お互いの信頼度を深め合うことへとつながります。例えば、最初に依頼内容のボリュームやスケジュールがはっきりしていれば、検討もしやすいはず。相手が必要とするであろう情報を先に知らせることは、メールのやりとりの回数を少なくし、今後のスムーズな仕事運びも想像してもらえますし、本来は難しい依頼でも、うまくいく可能性が。
【 例えばこんなフレーズ 】
●「このようなお願いをしてもよいかと迷いましたが、一度ご相談させていただくことで道が開けることがあるかもと、意を決してメールをいたしました」
●「この機会に社員にもしっかりと学ばせたく、〇〇様にご助力いただけますと、大変心強いです」
●「私どもも、なんとかこの企画を成功させたく、〇〇さんにお力添えいただけましたら、チームの士気も上がると思っております」
●「〇〇様の言葉に、私自身、とても励まされました。ご多忙なスケジュールのなかでは、厳しいかと存じますが、何とぞよろしくお願いいたします」
労り(お見舞い、お悔やみ)|相手に深入りせず、負担にならないよう寄り添う内容に
Precious世代ともなると、病気、家族の介護、身内の不幸といった心を痛める出来事を知る機会も多いもの。災害に見舞われたといった知らせを聞くこともあるかもしれません。相手を労りたいと思ったとき、メールの内容は、とにかくその人に寄り添うことが最優先です。特に最初に送るメールには、よけいなことを加えず、相手が返信しなくてもいいように、簡潔にまとめることが大切。デリケートなシーンなので、事情が深刻であるほど形式的な文章で十分ですし、気のきいた言葉を無理に添えようとせず、ときには言葉すら失ってもいいのでは。「あまりのことに、言葉もありません」と素直に書くだけで、相手の負担にならず、思いは伝わるはずです。
まさに一緒に仕事をしている時期ならば、こちら側の心配は無用であることを、最後に添えて。大変な状況にある相手の気持ちを、少しだけ軽くすることができるかもしれません。
【 例えばこんなフレーズ 】
●「〇〇とお聞きし、ショックを受けております。心よりお見舞い申し上げます」
●「〇〇さんのご落胆を思うと、お見舞いの言葉も見つかりません」
●「あまりのことに、お慰めする言葉もありません」
●「おつらいこととは思いますが、どうぞ無理をされませんよう」
●「何かお手伝いできることがありましたら、いつでもおっしゃってください」
●「事情について承知しました。こちらのことは心配なさらずに、すべてお任せください」
●「どうかお力落としのなきよう、お祈り申し上げます」
●「ご事情をうかがい、驚きました。どうぞお大事にされてください」
〈Precious読者アンケートからほかにもこんなメールエピソードが寄せられました〉
■:私が携わり、その後、手を離した仕事の経過を、取り引き先からお知らせいただいたことがありました。忙しいなか、本来知らせる必要はないのに、丁寧にメールしてくださった心遣いがうれしかったです。(T美さん・公認心理師)
■:異動が決まった先輩から、私のよいところが書かれたお礼メールを頂戴した際は、感激でした。(Mさん・新聞社勤務)
■:私の人生の節目ごとにいただく、大先輩からのメール。「恩返しはいらないので、健やかにいてくださればうれしいです」など、美しい表現と私を思いやる心温かな言葉をいただくたび、初心に戻ります。(Nさん・ネイルサロン経営)
■:追伸として、近況を知らせてもらえるとうれしく感じます。直接ビジネスとは関係ないけれど、最近出かけた場所の風景の感想などが書かれていると、情景が浮かんで、相手への親しみがわきます。(Kさん・公務員)
■:常連のお客様から、「頑張りすぎてはいけませんよ、あなたには元気で店頭に立ってもらわなくてはならないのですから」とDMをいただいたことがあり、そのときは感謝と感激で、胸がいっぱいになりました。(Yさん・洋菓子店経営)
■:急病で休んだ際に「こちらのことは何も気にしないで」と、チームリーダーからショートメールがきたとき。このひと言があるかないかで、気持ちが全然違うと実感しました。(T子さん・金融会社勤務)
※掲載商品の価格は、すべて税込みです。
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- PHOTO :
- 宗髙聡子
- STYLIST :
- 望月律子(KIND)
- NAIL :
- 中島綾香(uka)
- MODEL :
- 三田村 澪
- EDIT :
- 湯口かおり、福本絵里香(Precious)