身長156cmのインテリアエディターが、おすすめのアイテムを実際に体験しながらレポートする本連載。今回は、1953年創業のデンマークを代表する老舗家具メーカー「PPモブラー(PP Mobler)」から、新しい仕上げの「タニックティントブラック」が加わった名品チェア『pp130』をピックアップします。

墨汁のように染み込んだ黒に真鍮の金具が光り、格別の端正さと華やかさでインテリアをより一層ドラマティックに彩ります。

トレンドの「ジャパンディ」を感じる!黒をまとった名作デザイン

別名「サークルチェア」として知られる『pp130』は、インテリアデザイン界の巨匠・ハンス J. ウェグナーがデザインした、置くだけで絵になるインテリアをつくってくれる普及の名作です。名前は知らなくとも、見たことがある方も多いのではないでしょうか? 

ゆったりとしたかけ心地でありながら、空間を遮ることなく軽やかで透明感があり、実は動かしやすく実用的だというのも大きな魅力です。

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【ブランド】PPモブラー  【商品名】pp130(サークルチェア) 【写真仕様の価格】¥1,910700 【サイズ】幅1120 ×奥行940 ×高さ970 ×座面高420mm(mm) 【材質】フレーム:オーク(タニックティントブラック仕上げ) 張地:布、本革 クリップ:真鍮 フラッグロープ:ブラック

新仕様が出ると聞いていても立ってもいられず見に行ったときの第一印象は、「サークルチェアもジャパンディになれるのね!」(笑)。この連載で何度も出てくる「ジャパンディ」は、海外から見た日本の禅的要素と北欧の機能主義的なミニマルデザインが融合しているスタイルの総称で、世界中で人気のインテリアスタイルの一つです。

伝統的な「鉄媒染」の手法が名品に新たな魅力をプラス

新仕様のタニックティントブラック仕上げは、伝統的な木材の加工法「鉄媒染(てつばいせん)」から着想を得て開発されたもの。北欧家具で一番よく使われている木材、オークに含まれているタンニンと鉄分による自然な化学反応によって、木目を際立たせつつ、深みのあるベルベットのような黒色を実現しています。

これはお歯黒や着物の草木染め、古民家の黒っぽい木など日本の伝統的な染めの技術でもあります。墨汁を染み込ませたようなナチュラルでマットな質感は、奥行きが感じられながらも重たくない印象で新鮮!

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同じ黒でも照明に用いられているスチールのブラックペイントとは異なり、温かみが感じられる色合い。

好きな場所で包み込んでもらえる秘密基地のような椅子

「サークルチェア」のかけ心地は、ちょっと特別です。囲われているからか、秘密基地にいるような体感があります。お気に入りの本やクッション、非常食などを一緒に持ち込んで過ごしたくなる、巣穴のようなワクワクした気持ちが込み上げてきます。

いろいろな着座姿勢が取れるので、そのときの感情にしっくりくる座り方を見つけられるはず。そんな、絶対的な安全地帯を家の中につくれるという不思議な感覚は、ぜひみなさんにも味わってもらいたい! 愛され続ける唯一無二の魅力は、見ただけでは絶対にわからないと改めて感じました。

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大きな空間なのにお尻や首の着地ポイントがぴったり!
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この日の私には、ゆったりとしたあぐらの姿勢がしっくりきました。

キャスターが付いているので、フレームの下のほうをしっかりと掴んで持ち上げれば自由自在に好きな場所に動かせます。リビングの中央に向ける日もあれば、窓の外に向けて一人時間を楽しむ…気分に応じて位置や向きを変えられる実用性は見逃せません。

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かなり簡単に一人で軽く移動できました。
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左/ネックピローは外してお手入れ可能。右/キャスターとロープの留め具はお揃いの真鍮でピリリと効いています。

巨匠、ウェグナーが生涯をかけて追求したデザイン

『pp130』こと「サークルチェア」は、世界で最もたくさんの椅子をデザインしたデザイナー、ハンス J. ウェグナーが生涯をかけて取り組んだプロジェクトの一つと言われるデザイン。リングをベースにしたラウンジチェアを作るという基本的なアイデアを40年以上も熟考を重ねて追求し、ウェグナーが72歳のときにようやく完成しました。

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円形のフレームが座っている人を縁取るような形状。

このプロジェクトは「PPモブラー」の工房にとっても大きな挑戦でした。当時、限界だと思われていた技術の可能性を押し広げたことで、1986年に初めて発表されて以来、「PPモブラー」の代名詞的な椅子となりました。


今回は、漆黒の仕上げにより新しい魅力をまとった名作椅子『pp130』をご紹介しました。ぜひショールームでその美しさとかけ心地を実際に味わってみてください!

※掲載商品の価格は、すべて税込みです。

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この記事の執筆者
イデーに5年間(1997年~2002年)所属し、定番家具の開発や「東京デザイナーズブロック2001」の実行委員長、ロンドン・ミラノ・NYで発表されたブランド「SPUTNIK」の立ち上げに関わる。 2012年より「Design life with kids interior workshop」主宰。モンテッソーリ教育の視点を取り入れた、自身デザインの、“時計の読めない子が読みたくなる”アナログ時計『fun pun clock(ふんぷんクロック)』が、グッドデザイン賞2017を受賞。現在は、フリーランスのデザイナー・インテリアエディターとして「豊かな暮らし」について、プロダクトやコーディネート、ライティングを通して情報発信をしている。
公式サイト:YOKODOBASHI.COM