連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変える

明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介している連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、ドイツワイン街道南部、プファルツ地方の歴史ある街ノイシュタットに位置する和食レストラン「IRORI」でソムリエとしてご活躍のキャスティン・バウアーさんに注目!

和食ブームに沸くドイツで、パートナーであるシェフのマックスさんと提供する特別な料理は見事、ミシュラン1つ星を獲得。そしてこの10月、レストランはふたりの生まれ故郷の近く、クニッテルスハイムに移転。11月には日本を訪れ、新たな和食の世界を生み出そうと取り組んでいるキャスティンさんにお話しをうかがいました。

キャスティン・バウアーさん
レストラン「IRORI」ソムリエ
(Kerstin Bauer)弁護士事務所のアシスタントなどオフィス勤務と並行して、レストランでサービスの仕事を経験。有名ワイナリーとスクールでソムリエを目指し学ぶ。’12年にマックスさんとパートナーになり、’19年にレストランをオープン。すぐにミシュラン1つ星を獲得するが、コロナ禍によりいったん閉店。その後移転し、再びミシュラン1つ星を獲得している。

【Neustadt】4時間かけて楽しむ和食のコースと親密な時間が魅力のレストラン

レストラン「IRORI」のソムリエ キャスティン・バウアーさん
レストラン「IRORI」のソムリエとしてご活躍のキャスティン・バウアーさん

ドイツワイン街道南部、プファルツ地方の歴史ある街ノイシュタットのレストラン「IRORI」。その名からわかるとおり、和食の店だ。和食ブームに沸くドイツにあって、「IRORI」が異彩を放っている理由は、日本を何度も訪れているシェフのマックスさんと、そのパートナーであるキャスティンさんが提供する特別な料理、そして店に流れる豊かな時間。地元の食材をメインに使い、発酵や乾燥といった和食でおなじみの工程――料理によっては40以上!――を経るなど、独自のアイディアで生み出された料理と、主にドイツ産とフランス産のワインが約500種類。日本酒も充実していて、ミシュラン1つ星をもつ。

「私たちは、レストランを、単に食事をするための場所としてとらえてはいません。日本で『囲炉裏』といえば、人々が集まって暖をとりながら、食べたり飲んだりして交流する場ですよね。ゆっくり腰を落ち着けられる親しみやすい空間であることがいちばんだと思って、店名を『イロリ』としたんです」

営業時間は夜のみ。日曜と祝祭日は少し遅めのランチ営業。10品ほどのコースメニューだけを提供しており、食べ終わるまでにかかる時間は約4時間。特別な食事体験である。

「赤ワインなら、ボトルを開けてから時間が経つにつれ、室温の影響で味が変化していくので、それを食事と共に楽しんでいただくのもおすすめです。ホストである私たちにとっても、お店はゲストの方たちとのコミュニケーションの場。喜びを共有できれば」

そしてこの10月。「IRORI」は、ふたりの生まれ故郷の近くのクニッテルスハイムに移転。新しい場所は小さな木組の家だという。国内外のさまざまな場所でポップアップレストランも開催する予定で、より多くの人が「IRORI」の料理とワインを楽しむことになる。そして11月には、ふたりで日本へ。そこで得られるインスピレーションがきっと、新しい和食の世界を生み出すに違いない。

◇キャスティン・バウアーさんに質問

Q.朝起きていちばんにやることは?
猫がどこにいるか確認します。猫用の窓を開けているので、朝、ちゃんと帰ってきているかな、と。
Q.人から言われてうれしいほめ言葉は?
言葉ではありませんが、お客様の会話などで「今この瞬間を満喫されている」とわかるとうれしく感じます。
Q.急にお休みがとれたらどう過ごす?
寝たいだけ寝る。あるいはパートナーや友人と外出して会話を楽しむ。
Q.仕事以外で新しく始めたいことは?
新しいことではありませんが、森に行き、ハーブを集めながら自然を満喫したい。
Q.10年後の自分は何をやっている?
最終地点として選んだ場所でのレストラン経営を、これまでのコンセプトのまま続けていたい。
Q.自分を動物にたとえると?
猫。

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PHOTO :
Horst Stange
EDIT :
剣持亜弥、喜多容子・木村 晶(Precious)
取材 :
Noriko Spitznagel