新しい働き方を象徴するトップキャリアのしなやかな「リーダー論」
金融からゲノム研究まで、さまざまな業界で活躍する “ニューリーダー” にアプローチ。組織のトップとして何を意識し、どう実行しているのか、その思考と行動に迫ります。
【New Leaders】『ぶれない軸と共感力と。そのふたつを備えることで常に進化するリーダーに』 「アマン東京」総支配人、アマン日本・韓国地区常務取締役 八木朋子さん
「東京オリンピックまでに総支配人になって、日本に戻ってくる」。そう宣言した八木さんは、着実にキャリアを積んだのち、’17年「アマン東京」の総支配人に就任した、有言実行の人。
「とはいえホテルマネージャーとして入社した翌年のことで、辞令は突然でした。いずれトップに就くと決めていたので『よし、やろう』と決意したものの、明確なリーダー像を描く余裕はなく、一日一日現場で積み上げていったというのが正直なところです」
ハウスキーピングのマネージャーとしてキャリアをスタートさせている八木さんは、「現場第一」がモットー。ミーティングだけで終わらせず、足を運んで声を聞くことや、部門長のデスク周りに座り、さりげなく悩みを引き出すことも。その親しみやすさと心配りに感嘆するスタッフも多い。細やかな気配りの一方、“ぶれない軸” も備えているのが最大の武器。その手腕はコロナ禍下で遺憾なく発揮された。
「解雇はいっさいせず、社員とその家族を守ることを優先したのはもちろん、ブランドストーリーが揺らぐような妥協案にはすべてNOを出しました。私のジャッジで組織全体が動くので、上がぶれると下はもっと揺らぐことになる。現場から上がってきたからこそ、それがよくわかるんです」
八木さんは自分の思考を「ハイブリッド」だと称する。プロセスよりゴールを重視するが、ディテールもよく見ているのだそう。
「一見地味なことを積み上げないと高みには到達できない。スキップする方法はあるかもしれないけど、それだと “トップオブトップ” にはなれないんです。働き方や暮らし方の選択肢が増えた今、正解は『ない』のではなく『常に進化している』のだと思う。だからこそ他者の声を聞いて、私の判断と丁寧に束ねる。共感と決断、そのバランスに秀でたリーダーでありたいですね」
◇スタッフからひと言!
「ホテルが最も厳しかったコロナの時期に判断がぶれなかったのは本当に尊敬します。日本のトップが日本人であることの意味を感じさせる人でもあります。肝が据わっている一方、愛犬・タコちゃんの話をするときは親バカ全開。アイドルや美容の話などで盛り上がることも。その柔らかい雰囲気と常務取締役という重責とのギャップが魅力的なのです」(ディレクター・早田美奈子さん)
◇ニューリーダーへの共通質問
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- PHOTO :
- 望月みちか(人物)
- EDIT&WRITING :
- 本庄真穂、剣持亜弥、喜多容子(Precious)